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「ボールを見る」ではなく

 練習で「ちゃんとボール見ろ」と言われたことがある人は多いと思います。「いや見てるよ」と思うこともあるでしょうが、単に「ボールを見る」だけでは十分ではないと考えています。

 バレーボールの直径は4号球で20cm、5号球で21cmで、平面的に見たときの面積は330平方cm前後です。これは、A5用紙の面積(310平方cm、コロコロコミックなどの雑誌サイズ)よりも大きいことになります。更にボールは球体ですから、インパクトはほとんど点で行われます。A5サイズの紙の指定された一点を触ってくださいと言われて、紙全体を見て正確に触ることができる人はどれだけいるでしょうか。それだけの大きさのボール全体を漠然と見て、正確にインパクトするというのはそれほど難しいことなのです。

 ではどうするか。紙の一点を触るなら、その点を見て触ろうとしますよね。バレーボールでも同じ「インパクトしたい点を見る」ということです。より集中した視点を持つことで、サーブにしてもスパイクにしてもレシーブにしても、ミートがしやすくなります。

 ミートしやすくなる以外のメリットも存在します。スパイクでかぶってしまってふかす人は多いですが、この場合「かぶるからふかす」わけです。「かぶってふかす」というのはボールの下に入りすぎてしまってボールの下をインパクトしてしまう状態です。打ちたいスパイクのコースを決めると自ずとインパクトするべき点が決まります。その点を見るようにすればそもそも「かぶらない」のです。

 サーブでも、初心者でヒットするポイントが後ろに入ってしまう(かぶる)人が多くいます。「ボールを見る」とトスがズレても頭を動かすことで、見える情報に変化がありません。対して、ヒットする点、例えば「ボールの真後ろの点を見る」という意識を付加することで、トスがズレたときに視界の中でその点も一緒にズレます。トスがズレたときに顎の動きでボールを追うことはできても、ボールの真後ろは確実に見づらくなります。

かぶったトスはボールの後ろが見づらい(ボールは見える)
見やすい=プレーしやすい

 指導者から「もっと前にトスを上げろ」と言われても、かぶることとサーブがうまく打てないことの因果関係が理解できない選手には、「どれくらい前にトスを上げるべきか」が分かりません。点を見る意識により、かぶったトスを上げていて「なんか入らない」「なんか力が伝わらない」だった感覚が、「ポイントが後ろに行っちゃって見えない」という修正しやすい認識に変化することで、合理的なミートポイントの気づきを容易にするのです。

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