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小説

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記事一覧

【小説】春先の大阪

不思議なことである。 時たま、どこか遠いところへ行きたくなる。行く先はどこでもいい。 今…

yuu.
3年前
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【小説】眠れぬ夜のカップ麺

その日のお客は、品もあって気前もいい、関西弁の団体客だった。 「こいつなあ、いつまで経っ…

yuu.
3年前
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【小説】ロザリオ

(特定の宗教に関するデリケートな内容を含んでいるため注意してください。) 12歳の私に、休…

yuu.
4年前
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【小説】2010年代って。

スマホの到来、 画一化された、全体主義的なアイドルサイボーグ、 You Tubeで観る世界、 ツイ…

yuu.
4年前
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【小説】真夜中の中華食堂で

がらがらというシャッターの音。「空車」の字を赤く光らせ走るタクシー。 猫が身震いをする。 …

yuu.
4年前
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【渋谷小説】ビット・バレー

渋谷。 どこを、いつまで工事しているのか不可解な点で、サグラダファミリアと似たその駅を出…

yuu.
4年前
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【小説】悲しい色やね

瀬戸内の小さな漁師町、寂れた、といってもいいくらいの、場末のスナックの、ぼんやりとした照明に包まれた店内。 黒い大理石のテーブルに頬杖をついて、私は父のカラオケを聴いていた。 父は、歌が上手い。 教員同士のカラオケ大会ではいつも優勝し、どこからどう見てもしょうもないような賞品を、上機嫌でもらって帰ってきていた。 教え子の結婚式に呼ばれても、教師らしい、何か人生の深みのようなものがあるスピーチをするでもなく、ただ毎回のように長渕剛の「乾杯」をリクエストされていたらしい。 父は

【小説】上京、春夏秋冬。

春。 上京して初めて借りたその部屋が、嫌いだった。 大学と、最寄の東急線の駅は目と鼻の先に…

yuu.
4年前
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【小説】五反田のクラブ、そのあとで

窓から差すオレンジの光は、マグカップから立ち上るコーヒーの湯気と溶け合って、古書だらけの…

yuu.
4年前
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【小説】五反田のクラブで

その、場末のクラブで働き始めてから、1年半は優に経っていた。 歯に矯正器具を付けていること…

yuu.
4年前
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【小説】瀬戸内海のルポのようなもの

じゅわり、と大きなオレンジ色の果実を、フルーツナイフで半分に切ったような太陽がわたしを照…

yuu.
4年前
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【小説】ロスの黄昏と、沖縄の青空と。

彼女は大学時代、いちばんの親友だった。 周囲に気後れしていた上京したての頃。 フランス語の…

yuu.
4年前
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【小説】阪急六甲駅のおもいで

東京に住み始めて、もう5年が経つ。 電車の乗り換えに苦労することもなくなって、 雑踏で厄介…

yuu.
4年前
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