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 小学校受験の考査では、絵画や製作はもちろん、紐結びやお箸掴み、風呂敷畳みなど、手先を使った課題が出されます。なぜ手先を使った課題が出されるのでしょうか?

 幼児に限らず、手先を使うことが脳の発育、活性化に有効なことは誰もが知るところです。また、自分で名札を付ける、なわとびを結ぶ、洋服を風呂敷でくるむ、バラバラなものをクリップで留めたり、輪ゴムでまとめたりといったことは、生きていく上で必要なことであり、「生きる力」そのものなのです。幼稚園、保育園から小学生の一歩は、「自分のことは自分でする」自立への大きな一歩。生活習慣が身についているかどうかは小学校側としては評価項目として必要なものと言えるでしょう。

 前回の記事の「常識問題の対策」の中でも書きましたが、小学校受験において「生活体験」は何よりも大切なものです。「考査でどのようなことをみているのか?」に対し、「年齢相応の生活習慣、社会性が身についているかどうか」ということをあげる学校が多くあります。巧緻性は生活体験の中で身についていくものでもあり、巧緻性が高いお子様は日常生活の中でも、実際に自分で手を動かし、試行錯誤しながら物事に取り組む、粘り強さも身に付けています。こう考えると、巧緻性の考査は器用、不器用ということではなく、お子様の考える力や生活体験の豊かさも見えてくると言え、学校側としては考査内でお子様の力だけではく、保護者がどのように子育てを向き合ってきたか、日々、どのような生活をしているのかまで見える大変有効な考査なのです。

 巧緻性の授業の中で私が子どもたちへよく伝えていること。それは、
「最初からうまくできなくたっていい。失敗したっていい。どうやったらできるか、いろいろ試してみましょう」
「やり方は一つではない。どうやったら自分がやりやすいのか、試してみましょう」
「雑にやっていたらいつまでたってもきれいにはできない。最初は時間がかかってもいいから丁寧にやりましょう。いつかきっと早くきれいにれきるようになりますよ」
ということ。

 私は鉛筆もお箸も右手で持ちますが、色を塗るときは左手を使ったり、少し左利きの要素もあるのかなと思っています。なので、紐結びなど、教室で教える紐の向きと自分の向きが違うことがしばしば。その時はとことん練習して一般的にやりやすいと言われる方法を教えるのですが、非常に難しいものです。このように巧緻性で扱われる課題には、それぞれの人のやりやすさは違います。だからこそ、お子様自身が自分のやりやすい方法を見つけることが大切なのです。もちろん、お箸使いのように正しい持ち方が決まっているものは、やりやすいか否かに関わらず、正しい方法を身に付ける必要がありますので、その見極めは必要ですが…お子様が試行錯誤している間はやさしく見守ってあげる、そんな心の余裕が大切です。

 巧緻性はすぐに身に着くものではありません。日々の生活の中で少しずつ取り入れていけるとよいですね。


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