ディナー付きの劇場に連れて行ってもらって、残念な気持ちになった

劇場に今日連れて行ってもらった。私は比較的演劇が好きなのに、見終わったあとは、申し訳ない気持ち、残念な気持ちになったので、なぜそういう気持ちになったのかを書きたいと思う。

GOPというパフォーマーだけのサーカス

シルクドソレイユに近いようなパフォーマーだけのサーカスだった。私はもう10年ほど前にシルクドソレイユに行って、思いの外普通のエンターテイメントだった(というのは、友達は音楽がいい、舞台装置がきれい、すごい、みたいなことを言っていたので)という感想を持ったが、今回はそれのさらに上だった。

今回は彼氏の両親が懇意で私を連れて行ってくれた。彼らはGOPの上客と言えるくらいわりとしょっちゅうこの劇場に通っている。

この劇場はドイツ各地にあって、よく広告を出しており私も前から知っていた。行きたいとは実は思っていなかった。私は演劇、とくに現代的なもの実験的なものパフォーマンスは好んで見る。ややキャッチーで大衆的な香りがすでにしていたGOPは、これは違うな、と思っていた。

悪趣味なブルジョワ感

実際見て見て、面白いのは面白いし、すごいのだが、演出の寒さと技のいかにもな感じで見せられるのはあまりいい気分にならなかった。とくに拍手が巻き起こる技は正直あまり美しくなかった(フィギュアスケートに関しても同じことを思っている)。すごいのと美しいのはもちろんちがう。どうも冷ややかな目で見てしまう。

それでもそれぞれの演者に拍手が巻き起こらないような、比較的静かな動きのしなやかさには目を見張った。そういうものの方が見ていて気持ちが良かった。

なによりも舞台美術は残念だった。盛り上がるためだけにつけられたディスプレイなどの装置は、逆に寒い気分にさせる。

劇場の顧客満足度、あるいはお買い得感

それでも演者はほとんど休みなく客を飽きさせないように腐心していて、まさに顧客満足度の高い劇だったと思った。お金を払って、大体この劇で見れるだろうと思っている以上に色々やってくる、見飽きないように常に舞台で何か起き、休憩時間なのにも関わらず小芝居があり、情報量の多い社会に生きる観客に非常にカスタマイズされている。

観客が見たいと思っているものを見せ、快適さを徹底させる。
実際会場はほとんどいつも満席らしく、当然そうだろうと思う。

しかし同時にドイツ人の普通の人の感性の乏しさというか、精度の低さ(技は精度が高かったが)には少し落胆してしまった。詰め込まれまくったエンターテイメントは例えるなら、それほど美味しくもないが料理が次々と出てきて、さまざまな特典が付いて来て、割引券なんかももらえて、お土産もこれでもかと持たせてくれる、パック旅行のようだ。

旅の楽しみをお買い得感とサービスのよさに全部持って行かれている。

なぜ残念な気持ちになったのか

演出として時々おもしろかったところも一部あるが、総じて安くない劇場(それにディナーまで付けてくれた)に懇意で連れて来てくれたことから、素直に楽しめなかった自分に残念な気持ちになった。

日本と比べ、ドイツには劇場が結構たくさんあるし、比較的演劇に対する関心が高い。高校では芸術科目の選択として演劇の授業があるようだし、そう考えれば、上もあれば下もあるのは当然だ。

ただそれまでドイツに留学しているなかで、多少なりとも文化的高さに対しての憧れがあった。(いい演劇にもたくさん出会ってきた。)それが崩れたことも、この残念な気持ちの理由の一つなのかもしれない。

日本語でドイツの美術に関して読んでいると、あたかもアートリテラシーの高い観客がほとんどというように報道されがちだ。しかし、彼らは日本でも特別なようにドイツでもやっぱりある程度特別な存在なのだ。日本でチームラボに人だかりをみせるように、人が集まるのはドイツでもどちらかといえばGOPなのだ。

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