見出し画像

大きな買い物を認知症の親に説明する

ドラム式乾燥機付き洗濯機を購入することになった。
本当はそれくらい買ってあげる余裕が私にあればいいんだけど、親には貯金もあることだし、母親も「自分たちの家電は自分たちで買うよ」と言ってくれているので、購入の手続きだけを私がすることになった。

ここで私の実家には一つ大きな問題がある。
父が認知症なのだ。

以前、スプリングのだめになったベッドを買い替える時、説明するのが本当に大変だった。いや、説明すること自体はそれほど難しくない。私が父に説明し、父も「そろそろ古いよな。買っていいよ。お金はお父さんが払う」と言う。
ところがこの「買ってよし」の承諾から先が本当に大変。

どこで買ったのかで20分
誰が持ってくるのか、何人で来るのかで20分
どうやって持ってくるのかで20分
古いベッドは持って行ってくれるという説明に20分
エレベータに乗るのか
車はどこに駐車するのか
などなど。それぞれ20分くらいかかる。
なぜ、そんなにかかるかというと、理解が難しいからではなく、認知症のせいで記憶力がないので、同じ話を何回も何回もする必要があるから。
終わったかな?と思うと、最初に戻るのだ。
メモをしながら話すので、父にも、視覚的に話がぐるぐるしていることは分かる。分かるけど、戻るのだ。

このベッドの件でへとへとになってしまった私と妹は、洗濯機については、事前に父には話をしないことに決めた。
最悪、私たちはいい。我慢して付き合って説明を繰り返せばいい。ただ、母には説明も難しいし、負担だし、心配だしと、ろくなことがない。心配しすぎた父が、自分が足を怪我をしていることを忘れて、洗濯機のところまで歩いていったりしたら、母には父を元の位置に戻せない。

事後報告でいい。買ったよと話をして、その時もらえるなら代金をもらおうと思っていた。

でも、私は心のどこかで、すごく馬鹿正直になっていて、父に事前に相談することなく大きな家電を買うことを、夢に見るほど気にしていた。

そうこうしているうちに、いよいよ来週、洗濯機が到着することになった。

そんな折、私が帰省している日の夕飯で、家電の扱いの話になった。私の母は、家電の扱いがていねいなので、長持ちするという話。洗濯のあとは毎回、洗濯槽を拭き、洗剤投入口を取り出して洗う。ゴミ受けも取り外して洗い、日光消毒する。毎回だ。そんなだから、洗濯機ももう20年以上使っているが、調子が悪くならない(笑)
(じゃあ、買い替える必要はないのでは?と思うかもしれないが、父の粗相したシーツを毎回洗って干すことが、要介護2、83歳の母にはつらくなってきたのだ)

「あの洗濯機も、相当古いんじゃないか?」と父が言い出した。
「そろそろ便利なものに買い替えればいいじゃないか」
私は「乾燥機までついているものにしたらいいって思うんだけど」と話したら「そりゃ、便利だな。女性の家事負担の中でも洗濯というのはかなりの重労働らしいからな」と返ってきた。

前にも書いたが、父は私の前だと、脳がクリアになる時がある。この時もそんな感じ。母は「お父さん、買ってもいいの?」と聞き、父は承諾した。

多分、これからいろいろ聞かれるだろう。説明も大変だろう。でも、私はこの手順でいいのだと思った。自分の中で、納得した順番なのだ。

やっぱり、事後報告はだめなのだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?