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網戸越しに秋

4週間以上も好きな人にふれられていない指先が、熱を持ってじんじんと痺れるような感じがする。

最近の頭のなかはいつも鉛をつめこまれたかのようにぎゅうぎゅうで、それはからっぽに比べたら喜ばしい状態ではあるのだけれど、ずっと続くとなかなかにしんどくて、だから半ば強制的に、一時的にからっぽにしたい。
すなわちそれは、好きな人とふれあいたいということ。わたしのなかには、人肌のぬくもりでしか埋められないものが確かにあるということだ。

こんな生活ももうすぐ終わる。終わらせるための準備を着々と始めている。
しかしそう思うと、東京の街への漠然とした未練や、諸々の煩雑な手続きへの億劫さが邪魔をして、手放しに喜べないのもまた事実なのだった。

なんだか感傷的な気持ちになったので、トイレに立ったついでに窓を開けて外を眺めた。
昼間はまだ汗ばむくらい暑いのに、夜中はすっかり肌寒い。雨上がりの澄んだ空気と控えめに響く虫の声、明かりをたたえた人家の窓が切なさに拍車をかける。この部屋で迎える二度目の秋が、もうすぐそこまでやって来ている。

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