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小木曽由佳/ユング心理学。博士(教育学)。臨床心理士,公認心理師。著書『ユングとジェイ…

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小木曽由佳/ユング心理学。博士(教育学)。臨床心理士,公認心理師。著書『ユングとジェイムズ』(創元社, 2014),訳書 M. ユーネマン『黒板絵──シュタイナー・メソッド』(イザラ書房, 2022年),N. ノディングズ『人生の意味を問う教室』(春風社,2020)ほか。

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  • 魂のこよみ

    Anthroposophischer Seelenkalenderは,ドイツの神秘思想家ルドルフ・シュタイナー(Steiner, Rudolf)が1912年に発表した詩篇形式のカレンダーです。外なる自然と人間の内なる生活とが季節のサイクルの中で呼応し合う様が,週に1篇,1年で全52篇の詩にうたわれています。 日本では,高橋巌先生のちくま文庫版(2004年), 秦理絵子先生のイザラ書房版(2003年)という優れた翻訳がありますが,日々の生活リズムの中で,シュタイナー思想を改めて自分の言葉で汲み上げてみたいと思い,このたび新訳を試みています。シュタイナー学校設立から100年を数える2019年。本来は復活祭から始まる暦ではありますが,この節目の年の始まりから訳出に取り組むことにしました。

最近の記事

【R. シュタイナー『魂のこよみ』】8月第4週

それは静かな凪のようで 波や渦やに比べたら 流れが緩慢にも思える しかし ひたひたと 確実に 何かが満ちていく 自分たることの意味が  遠からず 必ず溢れ出す 変化は常に カタストロフィーとして生じるのに違いない ※Rudolf Steiner, Anthroposophischer Seelenkalender:52 Wochensprüche Rudolf Steiner Verlag, Dornach(Schweiz) 1912-1913/2016

    • 【R. シュタイナー『魂のこよみ』】7月第5週

      肌に感じた 白い熱 瞼を貫いた 明るい光 鼻腔を抜けた 青くさい香り 舌を転がった 丸い甘み 鼓膜に響いた 鈍いわななき  世界に向けて開いた 五感の扉から 私は全身で  その広がりを受け止めた 魂の奥まで 鮮やかに浸透した 世界の輝きは 内的な仄暗い夜に きっと私を照らす はじめから私の中にあった  懐かしい灯火として ※Rudolf Steiner, Anthroposophischer Seelenkalender:52 Wochensprüche Rudol

      • 【R. シュタイナー『魂のこよみ』】7月第3週

        忘我の光の海にたゆたっていた 私という区別はどこかに置き去って ただ気持ちよく目を瞑り 輝く水面を 大の字になって当て処なく しかしふと感じる 生まれてきた意味を 私が わざわざ私として ここにある訳を ※Rudolf Steiner, Anthroposophischer Seelenkalender:52 Wochensprüche Rudolf Steiner Verlag, Dornach(Schweiz) 1912-1913/2016

        • 【R. シュタイナー『魂のこよみ』】7月第4週

          世界の鮮やかさに気を取られ つい忘れてしまう 答えは 他ならぬ私の中にあり 有無を言わさぬ確かさを持って つねに輝きを放っていたことを 外の白熱に目が眩んだ日も 内なる光に目を背けた夜も それだけが持つ 唯一の輝き 私が私であることを証す 明らかなる根拠 このかけがえのない恩寵を 抱きしめて生きなければならない ※Rudolf Steiner, Anthroposophischer Seelenkalender:52 Wochensprüche Rudolf Ste

        【R. シュタイナー『魂のこよみ』】8月第4週

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        • 魂のこよみ
          45本

        記事

          【R. シュタイナー『魂のこよみ』】7月第2週

          白く輝く光に全身をゆだね 世界に融解した私は あなたとイコールの 未分の境地で いつしか 私なるものの苦味を忘れていた 思考は 朝に消えてしまう夢のように 形を成しては解けていく イメージの戯れ 掴もうにも像を結ばず あるいは その結ばなさが心地よかったのかもしれない そこへふと 舌の奥に感じる ほろ苦さが 微睡む私を揺さぶる 書庫の奥の奥で 長いこと顧みられず 埃をかぶった分厚い書物── 身に覚えのない像が 脳裏に浮かんで離れない ※Rudolf Stein

          【R. シュタイナー『魂のこよみ』】7月第2週

          【R. シュタイナー『魂のこよみ』】7月第1週

          恍惚の高みで  耳の奥に 鈍く響く音がする 何かが私に知らせている   温かい熱気に  無限大まで広がった私は 鳥の羽のように 自由に舞い上がった私は きっと目覚めなくてはならない その広がりと自由さが どこかに 深く裏打ちされた 必然の現れであることに ※Rudolf Steiner, Anthroposophischer Seelenkalender:52 Wochensprüche Rudolf Steiner Verlag, Dornach(Schweiz)

          【R. シュタイナー『魂のこよみ』】7月第1週

          【R. シュタイナー『魂のこよみ』】6月第4週/夏至

          私の中の太陽よ 闇の支配する夜も 分厚い雲の奥で 白く燃え続けた 熱い光よ この世界の 眩い輝きは 紛れもなく  お前そのもの 雲はいつしか消え去り あんなに憧れた 高い空で 私は世界の懐に 安心して全身を委ねる もう大丈夫 怖いものはない ただ ひたすら  光の中で ※Rudolf Steiner, Anthroposophischer Seelenkalender:52 Wochensprüche Rudolf Steiner Verlag, Dornach(S

          【R. シュタイナー『魂のこよみ』】6月第4週/夏至

          【R. シュタイナー『魂のこよみ』】6月第3週

          「世界は美しい」 太陽の白い光に 照らされて 事物は それぞれの輝度を増す 番を待ち兼ね こぼれだす花びら 領分を越え 縦横に繁茂する草木 光に貫かれた生命の渦巻きに 思わず引き込まれ その美しさに心動く時 私は 消えてなくなる 光は私をも貫いて 世界と私は 等しく輝くから ああ 「私も美しい」 ※Rudolf Steiner, Anthroposophischer Seelenkalender:52 Wochensprüche Rudolf Steiner

          【R. シュタイナー『魂のこよみ』】6月第3週

          【R. シュタイナー『魂のこよみ』】6月第2週

          思いきり 上に手を伸ばした 昇りゆく太陽に おいていかれないように 気づけば むっとする土の匂いは はるか下にあって 私は 強い光の中にいる 光が私を抱いているのか 私が光を放っているのか ともあれ もう意味をなさない これが私だと思っていたものは あまりに小さく あまりに大きく 鼓膜がかすかに膨らんで 震える 無限の彼方へ  ※Rudolf Steiner, Anthroposophischer Seelenkalender:52 Wochensprüche R

          【R. シュタイナー『魂のこよみ』】6月第2週

          【R. シュタイナー『魂のこよみ』】6月第1週

          木の葉を透き通してくる 白い光のシャワーに 境界が溶けていくようだ 眩しさに 2秒も目を開けていられない 風に揺れる花も 道端に落ちた松ぼっくりも 赤く佇む郵便ポストも すれ違う犬も 私も 目を細め  初夏の熱に 温められて うっとりと 溶けていく 光のシーツに飛び込んで 白い温もりに ほおずり 全身を包まれて 満たされていく 今は ただ ※Rudolf Steiner, Anthroposophischer Seelenkalender:52 Wochenspr

          【R. シュタイナー『魂のこよみ』】6月第1週

          【R. シュタイナー『魂のこよみ』】5月第4週

          草木が萌える 下から湧き上がる 無限の奔流 むせ返るような 生命の匂い 輝く緑と一緒になって昇り 真っ白な光に 身を委ねる この瞬間 あらゆる疑いが消え去る 無我 夢中 白い光の中で ※Rudolf Steiner, Anthroposophischer Seelenkalender:52 Wochensprüche Rudolf Steiner Verlag, Dornach(Schweiz) 1912-1913/2016

          【R. シュタイナー『魂のこよみ』】5月第4週

          【R. シュタイナー『魂のこよみ』】5月第3週

          天を駆け上がり 太陽に近づきすぎたイカロスは たしかに恐れ知らずで  傲慢だったかもしれない でも 太陽があんなに輝いていたら 背中に大きな翼があったら 誰だって 飛んでいきたくなる 羽ばたきの音 フワッと軽く どこまでも舞い上がる 温かく 熱く 上気する頬 目が眩む 真っ白な恍惚 ──ああ,予感よ。 遥か先を見通して 向こうみずな私の手をとり 導いてほしい 切なくも大胆なる やむにやまれぬ この飛翔を ※Rudolf Steiner, Anthroposo

          【R. シュタイナー『魂のこよみ』】5月第3週

          【R. シュタイナー『魂のこよみ』】5月第2週

          地の割れ目から あふれんばかりに咲く野の花に 奇妙に惹かれることがある どうしてそんなに無邪気に 自分の色はこれだと 主張できるんだろう 世界が外へとほころび出して 生き生きと 笑み 広がるとき それは無時間の中では実現しない 鮮やかな生の横溢 無力であるのに 何より力強い 確固とした生の湧出 花と咲き広がる 世界の脈動が 私の心臓と リズミカルに 響き合う ※Rudolf Steiner, Anthroposophischer Seelenkalender:52

          【R. シュタイナー『魂のこよみ』】5月第2週

          【R. シュタイナー『魂のこよみ』】5月第1週

          皮膚を透き通す 確かな光に誘われて 今 明るみに出ていく 人知れぬ 胸の中で 私だけが愛して 大事に 温めていたものたちが てらいなく   惜しみなく とめどなく でも,私にもわからなかった こんなに温かな色が 私の中にあったなんて こんなにたくさんの蕾が 世界に開いていくなんて ※Rudolf Steiner, Anthroposophischer Seelenkalender:52 Wochensprüche Rudolf Steiner Verlag, Do

          【R. シュタイナー『魂のこよみ』】5月第1週

          【R. シュタイナー『魂のこよみ』】4月第4週

          光の洪水! 木々の緑はいっそう輝いて, 私の細胞の隅々までを 透明にする。 渇いていたんだろうか。 いくらでもいい,染み込むままに 思わず目を閉じても 瞼を透き通す 光は 明るく 温かく  まどろんでいた感覚が 柔らかく伸びをして 上へ横へと広がり やっと 思い出させる 私と世界とがひとつであったことを。 ※Rudolf Steiner, Anthroposophischer Seelenkalender:52 Wochensprüche Rudolf Steine

          【R. シュタイナー『魂のこよみ』】4月第4週

          【R. シュタイナー『魂のこよみ』】4月第3週

          新緑の眩さに,私は目を細める。 胸に手を当てると, いつもよりも早いような心臓の鼓動に 上へ上へと伸びゆこうとする,迸る力を感じる。 ああ,輝きだす世界よ。 私は 私の大地から高く高く離れて, あなたの中に飛び込みたい。 逞しい生命の息吹に抱かれて, どこまでも広くを見渡したい。 懐の深い大地は, 静かに根を広げさせ,豊かな力を注ぎ続けてくれるから, だから 私は 安心してそんなことが言えるのだ。 ※Rudolf Steiner, Anthroposophischer

          【R. シュタイナー『魂のこよみ』】4月第3週