私は絶対にはみだすので、ならべないでください。
「前にー、ならえっ!」
灼熱の太陽に照らされて、白い背中と自分の腕だけが視界に入る。
「前の人以外見えないように並びなさい!」
はみ出す生徒はダメな子。
管理しやすく並べられた私は、目の前に並ぶ子の体操服の背中と自分の腕以外を視界から排除する。
ダメな子と思われないように。扱いづらいと思われないように。いい子の私は、必死で列からはみ出さぬよう並んだ。
だけど、きれいな一直線の一部になろうとすればするほど、私の頭は揺れ、体がグラつく。
昔から並べられて比べられるのが苦手だった。
綺麗に並ぼうとすればするほど、自分のいびつさが分かってしまうから。
大人になれば分かることだけど、いびつなことは悪いことじゃない。得意なことは伸ばせばいいし、苦手なことにはうまく折り合いをつけるだけだ。
苦手なことを、他の人と同じレベルでできるようにしなきゃいけないなんてことは無い。
克服したほうが楽に生きられるなら克服すればいいし、そもそも苦手なままで困らないなら放っておいていい。それに、克服するにしたって、みんな同じルートを辿ればうまく行くなんてことはなくて、誰かが良いというたった1つのやり方にそろえる必要なんてないのだ。
昔から、並べられるのがきらいだった。体操服で、スクール水着で、制服で。人との違いが際立ってしまうから。
みんなと同じになれないから、それがなんだか悪いことのような感覚が大きくなっていく。
大人になれば分かることだけど、違いは違い、それだけでしかない。違うから良いわけでも違うから悪いわけでもない。どう使うかで強みになるか弱みになるかが変わるだけだ。
綺麗に列に並ぶも、並ぶことを拒否するも、本当は選択していい。
だから、私は絶対にはみだすので、ならべないでください。
おいしいごはんたべる…ぅ……。