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【映画】「愛がなんだ」みっともなくて痛くて見てられない。でも、そういうとこにいたい。

仕事中でも真夜中でも、マモちゃんに呼ばれたらどこにいたって飛んで行く。ごはんも作るし掃除もするし、部屋に泊まることもある。でも彼は私のことを「山田さん」と呼ぶ。彼は私の恋人じゃない。

どこもどのシーンも精一杯とか愛されたいとかちょっとでいいからこっち向いてが空回ってて痛々しくてむしろ裏目に出てて「そういうとこや…」ってのがすごい分かって、見てられない。でも、そういうとこにいたいとも思う。恋の悩みを愚痴りながら友達とあーだこーだ言い合って、帰り道に1人でビール飲んで、好きな人のひと言で天国にも地獄にも行ける。春の夜、年越し、雨宿り、動物園、花火、どんな日常も好きな人がいるだけで特別な思い出になっていく。

劇中でテルコとナカハラがそれぞれに口にする「幸せになりたい」が、切ない。叶わない奇跡を夢見るように思わず出る言葉。幸せを遠ざけているのは自分なのに。線香花火のシーンで「最後まで残った人が幸せになーる!」ってセリフが出た時は、あぁ、言っちゃった…と思った。もう何でもいいから願掛けして祈り倒して奇跡的に叶っちゃってほしいぐらい、幸せが、遠い。

誰ひとりしっかりしてなくて刹那的でズルくてしょうもなくて、何をするにもキマらない登場人物達がものすごくリアル。こんなこと、そこら中にいっぱいあるんだろうなぁ。他人のことならよくわかるのに。

恋は日によって大きさを変えるし、掴んだと思ったらすり抜けて、あるのかどうかもわからないし、簡単になかったことになるぐらい不確かなのに、こんなにも人を夢中にさせる。中毒性があってやめられない。やめたくない。

主人公が最後に言うセリフの破壊力。いくら好きでもそんな風に思ったことのない私はまだ浅いのか。触れるのが愛?一緒にいるのが愛?そんなの通り越して混ざってしまうのが愛?大切で大好きで狂おしい感情を大雑把にまとめて世の中は「愛」ってことにしてるけど、いろんなものがドロドロに混じったこの気持ちはきっとそんな1文字で片付くようなキレイなもんじゃない。ほんと、「愛がなんだ」だ。ひとつひとつのシーンを噛み締めながらもう1回観たい。苦しいけど、それでも。

上映を待っていたら、ふらっと立ち寄ったという今泉監督が登場されるサプライズが。

映画館で観てよかった。


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