見出し画像

『世界のいま』の理解度テストをやったら、人間よりもチンパンジーの方が成績が良かった。というお話。


はじめに

「低所得国における女子教育」「世界の大半の人の所得」「極度の貧困」「平均寿命
」「未来の子供人口」「人口増加の理由」「自然災害」「人口分布」「子供の予防接種」「女性の教育」「絶滅危惧種」「電気」

これら12の問題を3択で回答していく『ギャップマインダーテスト』というものがあります。

このテストの結果
人類の8割の回答と、チンパンジーの「テキトー」な回答。チンパンジーの方が成績が良かった
ことが判明しました。

どうしてこんなことになったのでしょうか。

子供の予防接種

試しに12問の内の1問を紹介します。

「子供の予防接種」
質問:世界中の1歳児の中でなんらかの病気に対して予防接種を受けている子供はどのくらいいるでしょうか?

A.20%
B.50%
C.80%

平均正解率は13%。1番正解率が高い国はスウェーデンの21%。日本はなんと6%。
チンパンジーは3択を「テキトー」に選んでいるので33.3%です。

正解は『C.80%』です。

「そんな得体のしれない団体の問題なんて信用ならないし、『世界には恵まれない人が沢山いる』事はテレビでもインターネットでもよく見聞きするよ!」
と私が当初思ったように、同じ感想を持った人もいるのでは無いでしょうか。

では「日本ユニセフ協会」のデータはどうなっているでしょうか。

日本ユニセフ協会によると「はしか」や「破傷風」などのワクチン接種率は85%とのこと。

私たちが募金したお金はちゃんと使用されているし、結果が出ている。
もっと協力すればワクチン接種率を90%とか95%とか「100%に近づける」ことが出来そうですね。よかったよかった。

しかし、私たちはチンパンジーよりも知性はあるし、世界のこともわかっているはず。
なんでこのような結果になってしまっているのでしょう。

今から紹介する本にその答えが記されています。

【書評】FACT FULNESS-10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

著者 ハンス・ロスリング
スウェーデン出身。「国境なき医師団」を立ち上げ、世界保健機構、ユニセフなどのアドバイザーを務めた。
金融機関、事業会社、非政府組織などで講演を行なっており、2012年にはタイム誌の「世界で最も影響力の大きな100人」の一人に選ばれた。
2017年2月7日 68歳で他界した。

2019年第1版 第1刷発行

何故わたし達は勘違いしているのか

「10の思い込み」これは人間の持つ「本能」のようなものです。
これらの本能が『人類の8割がチンパンジーに敗れてしまった』原因だと著者は言っています。
以下、その本能と本能を克服する方法を簡単に説明します

分断本能
「世界は分断されている」という思い込み
→『大半の人がどこにいるかを探そう』

ネガティブ本能
「世界はどんどん悪くなっている」という思い込み
→『悪いニュースの方が広まりやすいと覚えておこう』

直線本能
「世界の人口はひたすら増え続ける」という思い込み
→『直線もいつかは曲がることを知ろう』

恐怖本能
危険でないことを、恐ろしいと考えてしまう思い込み
→『リスクを計算しよう』

過大視本能
「目の前の数字がいちばん重要だ」という思い込み
→『数字を比較しよう』

パターン化本能
「一つの例がすべてに当てはまる」という思い込み
→『分類を疑おう』

宿命本能
「すべてはあらかじめ決まっている」という思い込み
→『ゆっくりとした変化でも変化していることを心に留めよう』

単純化本能
「世界はひとつの切り口で理解できる」という思い込み
→『ひとつの知識がすべてに応用できないことを覚えよう』

犯人探し本能
「誰かを責めれば物事は解決する」という思い込み
→『誰かを責めても問題は解決しないと肝に銘じよう』

焦り本能
「いますぐ手を打たないと大変な事になる」という思い込み
→『小さな一歩を重ねよう』

※FACT FULNESS目次、及び325頁より抜粋

この本では、ドラマチックすぎる話を認識する術と、あなたのドラマチックな本能を抑える術を学べる。間違った思い込みをやめ、事実に基づく世界の見方ができれば、チンパンジーに勝てるようになるだろう。
24頁より抜粋

これら10の本能のことをさらに細かく説明すると、文字数がとんでもない事になりそうなの割愛させて頂きます。

印象に残ったフレーズ

この本が世に残る一冊になるだろうと考えられる理由は、この本の教えが「世界の姿」だけではなく「自分の姿」を見せてくれるからです。
知識不足で傲慢な自分、焦って間違った判断をしてしまう自分、他人をステレオタイプにはめてしまう自分、誰かを責めたくなってしまう自分。
そんな自分に気づかせてくれ、少しだけ「待てよ、これは例の本能では?」とブレーキをかける役に立ってくれるのが、ファクトフルネスなのでしょう。
訳者 関美和氏の「訳者あとがき」より抜粋

さいごに

読書難易度「中学生が理解する事が出来るレベル」
読了するまでの期間「隙間時間を利用して約6日」

図書館や本屋さんで本書を見かけたら、是非読んでみてくださいね。

【おまけ】直線本能と少子高齢化

現在の少子高齢化

こんな画像、見覚えがありませんか?
日本の喫緊の課題「少子高齢化」です。

わたしは現在30代なかばです。
『現役世代の負担が増える』『私たちが後期高齢者になった時、果たして年金は受給できるの?』と心配になります。

最近、成田悠輔氏による物騒な発言があったり

「僕はもう唯一の解決策ははっきりしていると思っていて、結局高齢者の集団自決、集団切腹みたいなものではないかと...
成田悠輔氏、物議醸す「高齢者は集団自決」発言は持論だった メタファーと説明も...「老害化」社会防ぐ「最強のクールジャパン政策」と直言|J-CASTニュース

『ホントにこの先の日本は大丈夫なの?』
と心配している人がほとんどでは無いかと思います。私もその一人です。

日本の過去と未来の世代分布

この頃は『年金貰えて当たり前』って感じですね。
2025年。雲行きが怪しくなってきました。この先の日本が心配。
2050年。もうダメだおしまいだ。私たち年金貰えないかも。

こうしてみると『集団〇〇が云々』騒ぐ理由も理解できる気がします。

次は2060年を見てみましょう。

あれ?

直線本能

私の想像では「逆三角形」に近い形になると思ってましたが、「壺」のような形になりましたね。
こうしてみると少しだけ冷静になったような気になります。

確かに「少子高齢化」は喫緊の課題なのは間違いない事で揺るぎのない事実です。

この「壺」のようなグラフを見ていて私が考えたのは

『集団〇〇などと物騒な意見を言う前に「少子化対策をどうするか」「移民の是非を考えてみよう」や「テクノロジーで労働力を補うことはできないか」などの建設的な意見を出す方が大事なのではないか』

と冷静に考える事ができました。

ちなみに「少子化」の原因は「日本が貧しくなったから」以外の答えが本書に記されています。

ハンス・ロスリングさん。沢山の教えをありがとうございました。

おわり

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?