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土地の水と空気、土の循環を取り戻す。『土中環境』を整える装備(暫定版)の紹介

今回は、2022年初夏時点の、私なりに揃えた『土中環境』を整えるための装備について紹介していきたいと思います。

『土中環境』とは?

土中環境』とは、国内外で造園・土木設計施工、また、環境再生を行ってきた高田宏臣さんの取り組みがきっかけとなって広まりつつある用語です。

高田さんが環境の健康を左右する土中の環境を意識し始めたのは、30代に入って以降。

当時、裏山を背負った住宅開発の際、急斜面の崖を削り、コンクリートを詰め込み、擁壁を築いて無事に工事を終了させたことがきっかけだったそうです。

工事終了後、自然環境が安定していた山がみるみる荒れていき、2年ほど経ったある日、擁壁の上の樹齢100年ほどのケヤキの大木が根こそぎ倒れたという連絡が入りました。

それは、土木建設工事による水脈の遮断と、それに伴う水と空気の停滞による環境変化による、土中環境の変化の現れでした。

大木の根が張り付いていただろう、岩盤が水脈の停滞によって乾き、岩盤の亀裂に伸ばしていた無数の細かな根が枯れてしまい、大木はその急激な環境変化に対応できずに倒れてしまったのでした。

このように、環境の営みは本来、無限の要因が絡み合って微妙な平衡状態を保つことで成り立つものです。

2011年の震災以降、高田さんは全国の被災地を巡り環境再生に取り組む中で、高田さん自身が体験したような土中環境のバランスが崩れたことによる被害の拡大状況と、他方、土地の豊かさを保ちながら持続的に環境を安定させようとしてきた、日本古来の叡智と造作を目の当たりにされてきました。

その忘れられた共生のまなざし、古の技をご自身の土木・造園技術に取り入れ、ワークショップの開催や各地の環境再生の際に取り上げれられる用語が、『土中環境』です。

『土中環境』を知った背景

私の記事をいつも読んでくださっている方はご存知のように、私は三重県伊賀市の実家の田んぼを継いだ、兼業米農家です🌾

そんな私が、どのようにして『土中環境』というキーワードに出会ったかといえば、『いのちの循環』の感覚を大切にしながら、畑や村づくりを行う経営の実践家のお二人とのご縁からでした。

私自身も、既存の農業が抱えている構造的な課題について、実家の田んぼを継いでからずっと考え続けてきました。

環境負荷という観点で言えば、私たちが普段口にしているお米は、ほとんどが水田で育てられます。

土中の酸素不足になる水田では、硫化水素といった有毒ガス、また、メタンという温室効果ガスが生成されます。

現在、稲作は農業由来の温室効果ガスの排出量の少なくとも10%を占め、世界全体のメタン排出量の9〜19%を占めています。水を張った田は、分解有機物を餌にするメタン生成菌にとって理想的な環境です。

p101『DRAWDOWNドローダウン― 地球温暖化を逆転させる100の方法』

このような背景もあり、私は上述の『循環』仲間とともに屋久島や、

高田さんのフィールドである千葉県まで学びの旅に赴き、

最近では環境再生医・矢野智徳さんの取り組みを映画『杜人』で拝見し、

そこで学んだ技術、哲学をそれぞれの現場で実践しようと取り組んでいます。

『土中環境』を整える装備(暫定版)

さて、ここからは2022年6月現在、私が森に入る際に使っている装備について紹介していきたいと思います。

なお、以下の装備は前述の学びの場に参加する中で、実践者の方々の様子を見て学んだ物たちとなるので、『土中環境』を整えたり、環境再生のためにはこれらしか使ってはダメ!ということはありません。

現状、私自身はこれらが一番しっくりくる、という感覚で使用しています。

まず、完成図の後ろ姿がこのような姿になります。

腰の両脇には各種の道具を吊り下げてある。

頭にはタオルを巻き、長靴を履いています。
また、腰にはナイロンベルトを巻き、そのナイロンベルトから『土中環境』を整えるための各種道具を吊り下げています。

では、この腰回りの道具がどのようになっているのでしょうか。

腰に巻く前の道具たち。鎌は手持ちです。

このように、赤色を挿し色にしたコーディネートとなっています。

赤いナイロンベルトに道具やケースを通し、それを服の上から腰に巻きつけて装備しています。

ここからは、どのような道具を吊り下げているのかの紹介に移ろうと思います。

ワークマンで購入したナイロンベルト

まずは、ナイロンベルト。なんの変哲もない普通のベルトです。ただ、色は鮮やかな赤色にすることにしました。手元の手袋等も赤黒が多かったので、せっかくなら色を揃えようと思ったのです。

マイナスドライバーは40cmほどの長く太いものを使用

続いては、マイナスドライバーです。

マイナスドライバーは、空気や水の循環が滞っている土地に対して、グリグリとねじ込んで使うものです。

ドライバーでグリグリとねじ込み、その後に落ち葉や小枝を空けた穴に突っ込むことで、空気や水が土中に入ります。さらに、やがてその穴の中で落ち葉や小枝が朽ちていくと、そこに微生物たちが棲み安くなり、その後の循環を助けやすくなります。

イカ型レーキ。普段、あまり目にしない道具かもしれないですね

続いては、イカ型レーキです。こちらは、山などの斜面に対して直角に振り下ろして段差を作ったり、荒く土をほぐしたりする際に使います。

祖父の大工道具であった金槌は、土中環境整備道具にジョブチェンジしました。

続いては、金槌です。祖父は大工だったのですが、その大工道具を土中環境整備等に再利用することにしました。

用途としては、先のマイナスドライバーのお尻を叩いてドライバーが土に刺さりやすくしたり、ちょっとした農機具の修理に使ったりします。

先日は、柄から外れてしまった鍬の刃を叩いて修復するのに活躍してくれました。

高儀製のツールホルダー

続いては、これまで紹介したマイナスドライバー、イカ型レーキ、金槌を腰に吊るすためのツールホルダーです。このタイプはちょっと探してみても高儀製のものしか見つからず、しかし、かなり重宝しています。

折込鋸も赤と黒を基調とした色合いを選択しました。

次は、折込鋸です。こちらは、藪の中を散策する際に太めの竹や蔓を切ることに重宝します。普段は折り込んで収納しておき、さらに腰に吊るした収納ケースに入れています。

剪定バサミ。こちらも赤と黒を基調としたデザイン。お気に入りです。

次は、剪定バサミです。こちらは、細めの笹を切ることに重宝します。

また、ドライバーで土に穴を開けるワークを前述しましたが、この剪定バサミと笹があれば、土に笹を刺さるだけ刺し、剪定バサミで地上部の笹を切る。笹を土に刺し、地上部の笹をハサミで切る。を繰り返すことで、土に水や空気を行き渡りやすくすることもできます。

何より、コンパクトで持ち運びやすいのが良い。

鎌です。使い込まれて年季が入ってきています。

続いては、草刈り鎌です。実は、これが一番よく使う道具かもしれません。山や藪に入って人が手入れを行う際は、大抵草が生い茂っているものです。その草をこの鎌で薙いでいきます。

鎌を使った草刈りのコツもあります。それは、風が草木を揺らして薙ぐように、水平に手首のスナップを利かせながら薙ぐこと。

こうすることで、草木は「あぁ、風に刈られたということは、ここまでしか伸びちゃいけないんだな」と学習し、それ以上の高さになりにくくなっていきます。

「風の草刈り」と呼べそうな自然由来の技術です。

さあ、これで私が現在活用している道具の紹介は終わりました。

これらを改めて装備すると、このようになります。

右側。ツールホルダーに吊るされた長物を使う時の様子です。
左側。剪定バサミと折込鋸はケースに収納されている。

以上、2022年6月現在の『土中環境』を整える装備(暫定版)紹介でした。

今後も、学びと実践を重ねていく中で新たな装備が加わるかもしれません。次なる新たな装備との出会いも楽しみです🌱


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