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「自律神経」の驚異的な力〜『なぜ、「これ」は健康にいいのか?(小林弘幸)』〜

「緊張しない方法」を探し続けて

もともと、自分は緊張しやすい人間だった。
それもあってか、
「プレッシャーのかかる場面でも実力を発揮するためにはどうすれば良いのだろう」
ということを、いつもなんとなく考えていた。

昔からスポーツが好きで、テレビで中継を見る機会も多かった。
そして、以前から、
「多くの選手が重要な局面(たとえばサッカーのフリーキックや、バスケのフリースローなど)で、判を押したように同じ動作をするなあ」
と思っていた。
意識して見ていると、競技の種類に関わらず、まるで示し合わせたかのように、多くのスポーツ選手たちが、同じ動作をしているのだ。

それは、「息を"フーっ”と細く長く吐く」ことだ。

ずっと「なぜだろう?」と疑問に思っていたが、どうやらその動作は、人体のメカニズムにとてもよく合致しているということがわかってきた。

「自律神経」とは

人体には「自律神経」というシステムが備わっている。
そして、自律神経は、副交感神経と交感神経という、相反する性質を持つ2つに大別される。

ものすごく大ざっぱに言うと・・、
交感神経は、緊張&活動に大きく関わっていて、
副交感神経は、リラックス&弛緩に大きく関わっている。
本来はこの2つのバランスが重要なのだが、ストレス過多の現代人は、圧倒的に交感神経優位の状況にあるのだそう。
つまり、副交感神経を活性化させることが重要になる。

そして、副交感神経を活性化させる最も簡単かつ効果的な方法は、「息を細く長く吐くこと」だそう。

上述のスポーツ選手たちも、意識的か無意識なのかはともかく、
「息を細く長く吐くことによって、自律神経のバランスが整い、良いパフォーマンスに繋がる」
ということを体感しているのではないだろうか。

そしてこれは当然ながら、スポーツだけではなく、仕事など日常にも活用できる。
実際に自分も、プレゼンなどでは全く緊張しなくなり、褒めて頂けることが多くなった。

人体とは本当に不思議で、かつよくできているのだなあ、と感じる。
本書を読むことで、このメカニズムを科学的に理解することができた。

読書メモ

(※個人的なメモのため、一字一句が本文と同じではありません)

結果を常に要求されるトップアスリートや芸能人の多くは、既に自律神経の重要性に気付き、そのコントロールに真摯に取り組み始めている。

交感神経活動レベルが異常に高く、副交感神経活動レベルが極めて低い時に、人は病気になりやすい。この状態が持続すると、体のあちこちに不調が現れ、病気になってしまう。

自律神経のバランスを意識的に整えることで、あなたのすべてが変わります。それも、すべて良い方向に変わります。そのポイントは「ゆっくり」です。「ゆっくり」を意識し、ゆっくり呼吸し、ゆっくり動き、ゆっくり生きる。そうすると、下がり気味の副交感神経活動レベルが上がり、自律神経のバランスが整い始めるのです。自律神経をコントロールするということ、それはまさに、人生をコントロールすることと同じです。

男性は30歳を過ぎたあたり、女性は40歳を過ぎたあたりで副交感神経のレベルが急降下する。

郷ひろみの若さは「副交感神経を上げる日々の努力」の賜物。

筋肉の力を結果に結びつけるためには、筋肉を動かす神経や、筋肉に栄養を供給している血管などを適切な状態にコントロールすることが必要です。そして、そうしたコントロールを可能にするのが、実は自律神経の力なのです。

何もしなければ、私たちの自律神経の力は10年でおよそ15%ずつ低下する。つまり、自律神経を意識的にコントロールするということをしなければ、人生の質は10年でおよそ15%ずつ低下していくということなのです。

自律神経で最も大切なのは、交感神経と副交感神経のバランスですが、このバランスは、主に副交感神経が上下することで取られています。

めまぐるしく上下する副交感神経をできるだけ高い状態で維持することが、心身の健康を保ち、身体の潜在能力を引き出すカギとなります。もっと具体的に言えば、普段から副交感神経を上げる事を意識的に行うことが、潜在能力を最大限に引き出す方法であるとともに、心身のバランスを整える「最高の健康法」になるということです。

どんなジャンルであれ、一流と言われる人たちが実年齢より若く見えるのは、彼らの自律神経のバランスがいいからではないか。私はそう確信しています。

夏は副交感神経が優位になりやすく、冬は交感神経が優位になりやすい。

副交感神経が優位になるとリンパ球が増える。リンパ球は減少するとウイルスや細菌への抵抗力を下げてしまうので、風邪やインフルエンザなど感染症を発症しやすくなる。

ジョギングは運動量が大きいため、どうしても呼吸が速く浅くなり、副交感神経のレベルを下げてしまいます。

末梢の血流は、呼吸が止まった瞬間に低下してしまう。

血流が低下するということは、末梢の細胞や神経に酸素や栄養が行き渡らなくなるということです。私たちの体は約60兆個の細胞の集合体ですが、その一つ一つの細胞がきちんと機能を果たすためには酸素と栄養が必要不可欠です。そして、それらを細胞に運んでくれているのが血流です。血流が完全に止まってしまえば、細胞は死んでしまいます。

きちんと横隔膜を上下させて「深い呼吸」を行う。深い呼吸が、行えれば、副交感神経は低下しない。

「最も影響を受けたのはタイガーの姿勢の美しさでした。スイングの時も歩く時も背筋がピンと伸びていて、ぜひ見習いたいと思います」(石川遼)

タイガーウッズは背筋が伸びた状態で腰骨からゆっくりと前に出すような歩き方をしています。この「背筋を伸ばしてゆっくりと歩く」というのが、自律神経のバランスを安定させる最高の歩き方なのです。まず「背筋を伸ばす」のがいいのは、気道が開くからです。気道が開くと呼吸をした時に肺に入ってくる酸素の量が増えます。私たちの体というのはとても敏感で、入ってくる酸素の量が減ると、大切な脳に優先的に酸素を送るために全身の末梢血管を収縮させます。つまり、末梢へ流れる血流を制限することで、脳に送る血液の量を増やすのです。逆に入ってくる酸素の量が増えると、末梢の血管は拡張します。末梢の血管が拡張すると、隅々の細胞にまで血流とともに酸素と栄養が行き渡るので全身の動きが良くなります。

胸を張って前を見るか、うつむいて下を見るかだけでも、気道の広さによって入ってくる酸素の量は激変します。そして体に入ってくる酸素の量が変わると、一瞬で体中の末梢血管の状態が変化します。私たちの体というのは、それほど繊細なものなのです。

呼吸が自律神経と関係するのは、血管を収縮・拡張させるのが自律神経だからです。基本的に、交感神経が優位になると血管は収縮し、副交感神経が優位になると血管は拡張します。そのため、体が酸素不足を感じると、末梢の血管を収縮させるために交感神経優位の状態になり、酸素の量が増えると、反対に副交感神経優位の状態にして血管を拡張させるのです。

呼吸が浅くなったことによる「交感神経優位の状態」では、副交感神経が低下してしまうので、実力が発揮できない状態になってしまうのです。タイガーウッズの歩き方が自律神経のバランスを安定させるのは、「深い呼吸」が維持されることによって、副交感神経が高いレベルで維持されるからなのです。

タイガーはスコアが良くても悪くても、いいショットの後もミスをした後でも、どんな時でも、胸を張ってゆっくりと歩きます。人は普通、焦ると動きがせかせかと速くなります。その結果、焦れば焦るほど呼吸が浅くなって副交感神経が低下し、本来の力が発揮できなくなってしまうのです。焦るとミスが増えるのは、この「せかせかした動き」が副交感神経を低下させ、自律神経のバランスを崩してしまうからなのです。

深くゆっくりした呼吸が、自律神経のバランスを整える最良の方法。

キム・ヨナは、浅田が外界を遮断したのとは逆に、観客やチームメート、周囲の人間に笑顔を見せ、自分の味方にしていくというゾーンの入り方をしています。

ほんの一瞬ですが、「立ち止まって指を鳴らすポーズ」の時に笑顔をつくることで、その瞬間に呼吸が深くなり、それと同時に低下していた副交感神経をググッと上昇させることができる。

私自身、自律神経のバランスを整えるようになってから、昔と変わらず長時間仕事をしているにもかかわらず、ベストコンディションを保つことができています。生活の中に自律神経のバランスを整える習慣を取り入れることで、心身は見違えるほど良いコンディションを保つことができます。

「副交感神経を高い状態に保つこと」が健康な人生を生きることにつながり、自分の能力を最大限発揮できるように導いてくれる。

交感神経が働くと体は活動的になるのですが、1か所だけ逆に活動が沈静化する場所があります。それは「胃腸」、つまり消化器官の動きだけは低下するのです。胃腸の動きが活発になるのは副交感神経が働いている時です。

パニック障害や強迫神経症も、交感神経の過剰優位が継続的に生じることが発症と深く関わっていることが分かってきています。他にも、うつ病やそう病などメンタルの病気のほとんどが、自律神経の乱れと深く関わっています。

あまり細菌がないのに、交感神経が過剰に優位になることで顆粒球が増えすぎてしまうと、健康維持に必要な常在菌まで殺してしまい、かえって免疫力を下げることになってしまいます。反対に、副交感神経が優位になると、リンパ球が増えるので、基本的には抗原に対する反応が早くなり、ウイルスに感染しにくくなるので、免疫力は上がります。

脳が働くには大量のブドウ糖と酸素を必要としますが、脳に十分な栄養と酸素を運んできてくれるのは血流です。脳がその能力を十分に発揮するためには「血流がいい」ことが必要不可欠な条件なのです。

筋肉は全て毛細血管で覆われ、毛細血管を通して栄養が供給されています。毛細血管は細いので、その影響は太い血管以上に大きく、血行が悪くなると筋肉はすぐに硬直してしまいます。

交感神経が過剰に優位な人は糖尿病になりやすい。

成人の血管を全て繋ぐと、その長さは約10万キロメートルにも及ぶと言われています。これは赤道を2周半もできる長さです。そして、自律神経は、その膨大な長さの血管全てに沿って走っているのです。

副交感神経が上がると病状が良くなる最大の理由は、血管が弛緩して広がり、血流が改善されることで隅々の細胞まで血液が行き渡るからです。諸悪の根源は、血管の過剰な収縮による血流の悪化なのです。

血流が滞っていると自然治癒能力も働くことができません。

血流が悪化すると「血液の質」そのものも低下してしまうのです。自律神経のバランスが悪い人の血液は、十分な酸素を運ぶことのできない質の悪いものになってしまっています。

自律神経のバランスが悪い状態で筋トレをすると、筋肉を増強するどころか、かえって痛めてしまう危険もあります。

筋肉のコントロールをしているのは自律神経なので、自律神経のバランスが悪い状態で筋トレを行うと、筋肉を増強するどころか、かえって傷めてしまう危険もあります。

腸の蠕動運動をコントロールしているのが自律神経。自律神経のバランスがいい人は腸の状態が良く、自律神経のバランスが悪い人は腸の状態も悪い。同じく、腸の状態のいい人は自律神経のバランスが整いやすく、腸の状態の悪い人は自律神経のバランスも整いにくい。

ビフィズス菌など腸内の善玉菌を増やすのに役立つ乳酸菌を多く摂ると、腸内細菌の状態が善玉菌の多い良い状態に変化していきます。腸内細菌のコントロールができると、運動や食事の効果が上がるのはもちろん、自律神経のバランスを整える力もアップします。

血液の質を決める腸内細菌のバランスと、その血液を全身に巡らせる血流をコントロールしている自律神経のバランス。この2つのバランスを同時に整えることが、病気を治し、健康を維持する最良の方法なのです。

「余裕」を持った行動をしているかどうかが、自律神経のバランスに大きな影響を及ぼす。

人間は、時間を気にしたり焦ったりするだけで交感神経が刺激されるので呼吸が浅くなります。そして呼吸が浅くなれば、血流が悪くなり、身体的なパフォーマンスが低下するのはもちろん、脳の活性も低下し、思考力、判断力、発想力なども低下します。

私自身、外出する場合、常に30分の余裕を持った行動を心がけています。

なぜ朝は能力が高いのか。その理由を一言で言うと、自律神経のバランスがいいからです。

睡眠不足は自律神経のバランスを著しく低下させます。普段どんなに自律神経のバランスのいい人でも、徹夜してしまうと翌朝は副交感神経がほとんど上がってきません。やはり6~7時間程度の睡眠は必要でしょう。

朝の高い能力を活かせるか活かせないかは、前日の夜に「翌朝すべきこと」をきちんと決めているかいないかで決まります。すべきことが決まっていないのに、ただむやみに4時や5時に起きても無駄です。

朝の自律神経の状態は、その日全体に対して大きく影響します。一旦安定さを欠いた自律神経は、厄介なことになかなか戻りが利きません。不安定なままスタートしてしまうと、一日中不安定な状態が続いてしまいます。

徹夜など、本来なら副交感神経が優位になる時間帯に交感神経を刺激することばかりしてしまうと、副交感神経が上がるタイミングを失ったまま交感神経が上がる朝の時間帯に突入してしまうため、何をしても副交感神経が上がらない状態になってしまうのです。

アルコールは体にとっては一種の興奮剤なので交感神経を刺激し、副交感神経を低下させます。深酒をすると体内に長くアルコールが残ることになるので、その間ずっと交感神経が刺激され続け、血管の収縮も長時間続くことになります。さらにこの間、アルコールが体内で分解・解毒される過程で水分が使われるので、体は脱水が進みます。脱水は、のどが渇く程度の自覚症状しかないので侮りがちですが、実は血管にダメージを与えるとても危険な状態です。血管の収縮が続くだけでも血流はかなり悪くなりますが、そこに脱水が加わると、血液の濃度が濃くなるので血流はさらに悪くなります。このドロドロの血液が収縮して細くなった血管を通る時、血管の内皮を傷つけるのです。

お酒を飲み過ぎた時の頭痛の原因は、脳の血流不足です。また、気持ち悪くなり吐いてしまうことがありますが、これは消化器の動きを司る副交感神経が極端に低下することによって、腸が麻痺し動かなくなるので逆流してしまうのです。どちらも飲酒時に同量の水を飲むことで防止できます。

深酒をした翌朝の疲労感の原因も脱水です。体は脱水を起こすと、細胞がそれぞれの持つ水分をこれ以上減らさないようにするため血管との連絡口を閉じてしまいます。こうして細胞が守りの状態に入ると、末梢の血管は水分が不足し血流が極端に悪くなります。体はこうした危機的状況になると、大切な部分、具体的には心臓と脳への血流を確保するため、交感神経が優位になって末梢の血管を収縮させます。この結果生じる末梢の血流不足が疲労感の原因です。

「水を飲む」という行為は、私たちの体にとても大きな影響力を持つ大切な行為。私は朝起きてすぐと、食事の前にコップ1杯の水を飲むことを習慣にしています。→胃結腸反射が起こり、消化吸収の質が格段に上がる。

胃腸は副交感神経の支配下にある臓器なので、それらを動かすことによって副交感神経を刺激することができます。朝は、日内変動によって、副交感神経優位から交感神経優位へ切り替わる時間帯です。ということは、副交感神経が低下しやすい時間帯だともいえます。そうした時間帯に適度に副交感神経を刺激することで、副交感神経の下がり過ぎを防ぎ、自律神経のバランスを整えることができるのです。

良い状態の血液を全身に送り出すのは腸です。そして、腸でよい血液を送り出すのに最も大切なのは血流です。この大切な腸の血流の良し悪しを決めるのが、腸の蠕動運動です。

腸内環境が悪くなると、腸内の悪玉菌が増え、腸の消化吸収能力はさらに悪くなります。こうした汚れた腸からは汚れた血液しか作れません。だから、腸が悪いと全身の調子が悪くなるのです。また、食べ物の消化吸収が悪い状態では、薬の効きも悪くなります。

消化吸収が良くなれば腸内環境も良くなります。そして、腸内環境が良くなると腸の動きがよりスムーズになるので、副交感神経も上がりやすくなります。こうして副交感神経のレベルが上がると血流が良くなり、きれいな血液が全身をスムーズに循環することになります。つまり、腸内環境が悪いと体は全てが悪くなる負のスパイラルに陥り、反対に腸内環境が良くなると全身の調子が良くなる正のスパイラルが回り始めるということです。

汚れた血液は、肝臓から心臓へ運ばれて全身へ行き渡り、脂質代謝を悪化させることで内臓脂肪としてたまっていきます。つまり、摂取カロリーが同じでも、腸内環境が悪いとそれだけ太りやすくなるということです。消化吸収が悪いと、脂肪は蓄えられるのに全身の細胞は十分な栄養が行き渡らない低栄養状態になってしまうので、疲れやすくなったり、新陳代謝が悪くなったりします。さらに、腸内環境が悪いと自律神経のバランスが崩れやすくなるので精神的にもイライラして怒りっぽくなります。こんな状態では、肉体的にも精神的にもパフォーマンスを出すことはできません。

1日1回しか食事をしないということは、1日1回しか腸に刺激を与えないということなので、腸の働きが悪くなってしまう。

食後に眠くならない食べ方のポイントは2つ。1つは「食前に300~500cc程度の水を飲む」こと。もう一つは「腹八分目の量を、よく噛んでできるだけゆっくり時間をかけてとる」ことです。

食事をすることで交感神経は一気に高まりますが、食後に消化器官が動き出すことで一気に副交感神経優位に急転換します。実は食後の眠気はこの急転換が原因なのです。

栄養の吸収力は、食事の量ではなく腸管のコンディションで決まる。

脳の回転を良くするためにも、腹八分目の量をゆっくり食べることを心がける。

太っている人はよく汗をかきますが、実はこれも自律神経の活性が低下していることが原因と考えられます。自律神経全体が低下してしまうと、身体の組織が水分をうまく吸収できなくなるので体の外に水分が出てしまいます。これが肥満した人たちの異常なほど多い汗の正体なのです。汗をかきやすい人は自律神経の活性が落ちてしまっていると思ってまず間違いないでしょう。

「夕食後の最低30分の散歩」が理想的な運動。デスクワークの人が退社時に感じている肉体疲労はうっ血によるものなので、夜にウォーキング程度の軽い運動をすると、血流が良くなるのでかえって疲れがとれる。全身の抹消血流が良くなることにより、特に肩凝りには劇的と言ってもいいほどの効果があります。

呼吸には体の状態を一瞬にして変える力がある。

深呼吸をすると心が落ち着くのは、末梢の血流量が増加するからです。心に余裕があったり安心している時、人の呼吸はゆっくり深くなりますが、緊張すると無意識のうちに浅く速い呼吸に変わります。

ゆっくりとした深い呼吸は副交感神経を刺激するので、血管が開き、末梢まで血流が良くなります。そして、血流が良くなると筋肉が弛緩するので体はリラックスします。これが緊張した時に深呼吸をすると心が落ち着く最大の理由です。

高くなったテンションを抑えたい時、最も良いのは筋肉をコントロールすることなのですが、筋肉をコントロールしているのは血流で、血流をコントロールするのは自律神経です。そして、現段階で自律神経を確実にコントロールできるのは何かというと「呼吸」なのです。

呼吸が体に及ぼす影響はとても大きく、本当に一瞬にして体の状態を変えてしまいます。本当に一瞬でも深い呼吸をすることで、私たちの体は変わります。

フリーズ状態では、体はもちろん頭も働きません。なぜなら、呼吸が浅く速くなって交感神経の割合が異常に高くなってしまうため、身体も頭も血流が悪くなり、低酸素状態に陥ってしまうからです。

大会のあいだ彼はパターの練習のみ行い、あとは自律神経、特に副交感神経を上げるトレーニングに集中していた(2010年10月キャノンオープン優勝・横田真一プロ)。

一瞬でパフォーマンスを上げる「ゆっくり深い呼吸」→「一で吸って、二で吐く」。ゆっくり一数える長さで息を吸い、その倍の時間をかけて息を吐く。

ああしなければいけない、こうしなければいけないと意識した瞬間に自律神経のバランスは崩れてしまう。

一流の外科医は決して呼吸を止めません。彼らは呼吸を止めるのではなく、呼吸のリズムに合わせて指先を動かします。

私が大会当日に横田選手に伝えたことはたった二つ、緊張した時に「空を見上げてください」「周りの草木を眺めてその匂いを嗅いでください」というものでした。

緊張した時や焦った時、つまり交感神経が過剰に優位になることで自律神経のバランスが崩れている時は「ゆっくり深い呼吸」が有効です。

呼吸で交感神経、副交感神経を刺激するポイントは、腹式か胸式かではありません。最重要ポイントは「息を吐く時のスピード」です。

息を吐く時間が長ければ長いほど静脈に流れる血流が増え、副交感神経が刺激されるという仕組みになっている。

副交感神経が優位になる夜は、理性より情動が優先されやすくなるので、ついつい恥ずかしいことを書いてしまう危険性が高い。

朝は、交感神経が優位になるとはいえ、夜の余波で副交感神経も比較的高いレベルにあるので、脳が最も活性化する時間帯なのです。こうした時間帯に最も適しているのは、物事を深く考えたり、発想力を必要とする仕事をすることです。この貴重な時間を、脳をほとんど使わないメールチェックに使ってしまうのは、あまりにもったいないことです。

語学の勉強には朝はとても適しています。なぜなら朝は自律神経のバランスがいいので、耳の調子も良く、英語のヒアリング能力が格段にアップするからです。

緊張した時、よく「肩の力を抜いて」と言いますが、実は肩の力を抜くより効果的なことがあります。それは「手を開くこと」です。手を強く握ると副交感神経が低下し、緊張がさらに強くなってしまいます。

ちょっとした動作で副交感神経を上げる方法、それは「笑い」です。大笑いをする必要はなく、ほんの少し微笑むだけでも効果はあります。心からの笑顔はもちろんのこと、例え作り笑顔であっても、口角を上げれば副交感神経は上がることがわかっています。

「笑い」によって、免疫力に対して重要な働きを持つNK細胞が活性化するということも証明されています。

笑顔と反対に、緊張を高め、副交感神経を下げてしまう表情が「しかめっ面」です。

2009年の全英オープンを59歳で準優勝したトム・ワトソンは、ツアーのあいだじゅう、どんな時もニコニコしながらゴルフをプレーしていました。彼の目を見張る活躍は、笑顔が副交感神経を高く維持した結果と言っていいでしょう。

「あっ、口角が下がっている」と思ったら、意識的に口角を上げるようにしてください。口角を上げれば緊張が解け、副交感神経が上がります。副交感神経が上がれば、全身がリラックスし、心にも余裕が生まれます。

表情が変われば自律神経のバランスが変わり、自律神経のバランスが上がれば血行や免疫力が変化する。

「その人に会うと元気になる人」というのは、その人の笑顔があなた自身を笑顔にすることによって、あなたの副交感神経が上がり、元気を引き出しているのです。

笑顔が副交感神経を上げ、自律神経のバランスを整える体にいい習慣だとすると、反対に交感神経を過剰に高め、自律神経のバランスを崩してしまう最悪の習慣は「怒り」です。

交感神経が過剰に緊張すると、血管が収縮します。血管が収縮すると血球破壊が生じるので、血液はドロドロになっていきます。つまり、怒れば怒るほど体内では血液がドロドロに汚れていくのです。血液が汚れると末梢血管の血流が悪くなります。

雪下君はどんな時でも、誰に対しても、常に微笑みをたたえていました。首から下が動かないという究極のストレスの中で、これほど完璧に感情をコントロールしている彼は、「不可能を可能にした」奇跡的な人間に見えました。

微笑みとゆっくりした口調こそが、あの極限状態の中で普通ならあり得ない「余裕」を彼にもたらし、感情のコントロールを可能にしているのではないかと思い、早速真似をしてみました。忙しくてイラついた時などに「あっ、いけない、いけない、ゆっくり、にっこり」と意識することが増えていきました。こうして笑顔でゆっくり話すことが身についてくると、物事がスムーズに進んでいくようになったのには正直驚きました。

イラついている時や、焦っている時ほど「ゆっくり」運転すると、結果的に早く目的地に着くことができる。

雪下君は、苦しい闘病生活の中で、自分の体に残された数少ない自分の意志でコントロールできる動き、つまり「顔の表情」と「話し方」を変えていくことで、心と体をコントロールする術をつかみ取ったのだと思います。

自律神経のバランスが崩れてしまうと、冷静さも判断力も低下するので、感情の抑えが利かなくなってしまう。

人は、自分が今どのような状態にあるのか認識できると、その瞬間に交感神経が下がる。

日本人の医師は、勉強ノートのような形で失敗や反省点を書きつづる人が多いのですが、ヨーロッパの医師の多くは、うまくいったことや感動したことも一緒にノートに書いているのだそうです。

心に余裕をもたらす魔法の言葉「アフターユー」。日本人のほとんどが交感神経過剰緊張型ですが、もし、潜在能力の高い日本人が、この「アフターユー」の精神を身に付けることができたら、日本は間違いなく大きく変わると思います。

普段から自分の自律神経を整え、自らの力で周囲の人を幸せにしてあげられるようになることが必要です。あなたが自律神経のバランスを整える努力をすることは、あなただけでなく、あなたの大切な人をも幸せにすることだということを、ぜひ覚えておいてください。

自律神経をコントロールできれば、人生もコントロールできる。

不安とは、交感神経だけが高ぶって副交感神経が一切働いていないという、自律神経のバランスが極めて乱れた状態です。これは反対に言えば、自律神経がバランスを失うということが、すなわち平常心を失うということを意味します。

有事の時に本当に必要な「備え」とは、まさしく平常心そのもの。

ゆっくりと深呼吸すれば、副交感神経が上がり、心臓の拍動が落ち着いてきます。すると血流が良くなり、脳の活動が高まって的確な判断ができるようになります。

まとめ

パフォーマンスを最大限に発揮するために、こんなにシンプルで強力なメソッドが他にあるだろうか。
正直、自分も最初は半信半疑だったが、実践してみてその効果に驚いた。
これは人生を変える一冊です。


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