見出し画像

「学習環境デザイン論」からワークショップデザインを考える


学びの場作りとしてワークショップデザイン論を捉えた場合、上位概念としての「学習環境デザイン論」の枠組みは大変参考になります。

学習環境デザインとは何か

学習環境デザインとは、学習者を「能動的に学ぶ存在」として捉えながら、学習環境を「活動」「空間」「共同体」「人工物」という4つの要素に分解し、それぞれを結びつけながらデザインしていく考え方です。安斎が大学院で師事していた山内祐平先生が専門とする学問領域です。

活動:どんな目標、タスク、ルール、プログラムを通して学ぶか
空間:どんな建築空間、家具レイアウトで学ぶか
共同体:どんな人たちとどんな関係性で学ぶか
人工物:どんな道具、教材、素材を活用して学ぶか

ワークショップのデザインは、以下の記事でも考察した通り、プログラムデザインもファシリテーションも、何をどんな順序でやるのか、経験のデザインに相当するので、「学習環境デザイン論」のうち「活動のデザイン」寄りに位置づいている考え方です。

他方で、ワークショップを成功させる上では、空間・共同体・人工物のデザインも欠かせません。活動のデザインを中心としながらも、どんな参加者が(共同体)、どこで(空間)、何を使って(人工物)その活動に取り組むのか、有機的に学習環境を構成する必要があります。

学習環境を活かしたワークショップデザイン

ケースによっては、学習環境の活動以外の要素に力点を置いたり、活動と別の要素を効果的に組み合わせることで、単なるプログラムの工夫だけでは生み出せないワークショップの核となる魅力や文脈をつくることができます。

たとえば、以下の「子どもの身体を踊る」ワークショップでは、子どもと役割を交代して「抱っこ」されてみる活動や、子どもの身体の動きを真似してトレースする活動など、大人と子どもが入り混じって参加するからこそ活動の面白さが生まれる構造になっていて、学習環境のうち「共同体」と「活動」の組み合わせをうまく活かした事例といえるでしょう。

あるいは、ミミクリデザインが共同開発したPLAYFOOL Workshopは、目玉のシールや、ピンク色のフィルタや粘土など、遊び心と非日常性を最大限に発揮するためのツールキットによって、ワークショッププログラムのポテンシャルが引き出されています。学習環境のうち「人工物」と「活動」の組み合わせをうまく活かした事例といえるでしょう。

プログラムデザインとファシリテーションによる「活動のデザイン」に習熟することは必要不可欠ですが、同時に「学習環境デザイン論」の枠組みを持ち、活動を活かすために「空間」「共同体」「人工物」も含めて環境全体を効果的に活用できるようになると、ワークショップデザインの幅が広がるでしょう。






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?