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6年前の「ワークショップ実践論」を振り返る

先日、嬉しい知らせが届きました。拙著『協創の場のデザイン』(2014年)が、初の増刷となったのだそうです。

この本は2013年の初の共著『ワークショップデザイン論』を出版した矢先に、博士課程に在籍しながら数ヶ月で仕上げなければいけなかった初の単著で、なかなか苦労したことを覚えています。

京都芸術大学の教科書として執筆したもので、ビジネス書として派手に売れることはなかったのですが、実際に手に取られた方には密かにご好評いただいてきました。初著『ワークショップデザイン論』が理論的な教科書だとしたら、この『協創の場のデザイン』はワークショップを課題解決に活かすための実践論で、「理論はいいから、とにかくワークショップを実践したい」かた向けです。

いずれにせよ、このタイミングで増刷するとは思っていなかったので、出版から6年経って増刷のお知らせをいただき、嬉しいような、恥ずかしいような、でもやっぱり嬉しいような、気持ちです。

今まであまりこの本を積極的に「売ろう」とはしていなかったのですが、せっかくコストをかけて増刷していただくからには、少しでも多くの方に読んでいただきたいので、2020年の視点からみた、この本の「読みどころ」をまとめてみます。

1.実践事例が豊富

なんといってもこの本の魅力は、実践事例が豊富なところです。

・KDDI研究所のサービス開発ワークショップの事例
・ミサワホームのユーザー調査ワークショップの事例
・協和発酵キリンの経営計画浸透ワークショップの事例
・空間デザインにこだわった即興演劇ワークショップの事例
・渋谷のカフェコンセプト構想LEGOワークショップの事例
・デザイン思考による課題発見ワークショップの事例
・製菓メーカーのモナカアイスの開発ワークショップの事例
・水都大阪の市民参加型まちづくりワークショップの事例

など、今もなお色褪せない多種多様なワークショップの事例について、フルカラーの図表を用いて解説しています。小難しい理論やフレームワークは最小限にしているので、ワークショップやファシリテーションの具体的なイメージを持ちやすいところが、特に初心者のファシリテーターの方にご好評いただいています。

2.ツクルバとのコラボレーション

この本は全15章なのですが、第3〜6章にかけて、株式会社ツクルバの代表である村上氏中村氏とコラボレーションによるワークショップの事例をじっくり丁寧にご紹介しています。会場設営からアイスブレイクの手順、ツクルバのプレゼンテーション、メイン活動から発表、その後まで..精緻においかけています。

当時からツクルバの勢いは素晴らしかったですが、まだ社員数もそこまで多くなかった頃だと記憶しています。ツクルバはその後凄まじい勢いで成長し、2019年7月には東京証券取引所マザーズ市場に上場を果たしたことは、説明不要かと思います。いま振り返ると、贅沢な企画ですね。みんな20代後半でした。

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3.なぜかサンドウィッチマンが登場

僕はいろんなところで「サンドウィッチマンのコントは、イノベーションのヒントが詰まっている」と半分冗談で公言しているのですが、そのことをきちんと書籍で論じているのは、実はこの本だけです。

さすがに勝手に語るわけにはいかないので、ちゃんとサンドウィッチマンの事務所に許諾を取り、写真素材を提供いただき「公認」の上で書籍に紹介させていただきました。ここだけでもみて欲しいくらいです笑。

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4.ゲストが豪華

書籍の後半では、ワークショップを仕事で活用する著名なゲストの方々のワークショップを取材し、インタビューすることで構成しています。具体的には、山崎亮さん(studio-L代表)、棚橋弘季さん(現ロフトワーク執行役員)、中西紹一さん(プラス・サーキュレーション・ジャパン代表)らにご登場いただき、ワークショップの技をご披露いただいています。豪華。

5.問いのデザインの片鱗

この本の原稿を書いたのは2013年頃でしたが、2020年に出版した新刊『問いのデザイン』の方法論の片鱗が、いたる所に垣間見えて、今読むととても面白いです。たとえば、以下など。

また、自分でもびっくりしたのですが、最終章ではその時の自分なりに、一生懸命「ワークショップをデザインする前の課題の設定」について論じていて、議論の稚拙さに恥ずかしくなりながらも、「この時からなんとなくここが大事だと思っていたんだなぁ」と感慨深くもなりました。

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一応「問い」を使って、解くべき課題を掘り下げようとしていますね笑

いまから6年後、40代に突入した時に「恥ずかしいけど、昔『問いのデザイン』って本を書いてたんですよ...」と紹介できるように、引き続き精進していきたいと思いました!

【idearium】今週のポッドキャスト

共同経営者のミナベとともに、毎週ポッドキャスト(音声メディア)を配信しています。どれも10〜20分程度で気軽に聴いていただけます。今週のオススメの音声はこちら。

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ウェブメディア「CULTIBASE(カルティベース)」では、組織イノベーションの知を耕すためのナレッジを毎日お届けしています。編集長の視点から、今週のオススメの記事、イベント、動画コンテンツなどを紹介します。

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