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アネモネ

一、新しい始まり


ずっと関係が続くと思っているときは特別感情を出すでもない。
突然終わりがきて、あるいは別れがきて始めて口々に感情を吐露する。
そんな自分の、人間の都合の良さに情けない気持ちになることがある。

かと言って、普段からいつか来るかもしれないし来ないかもしれない終わりを思ってあたふたしていても仕方がない。

春が近づくこの時期、こんなことを思ったりする。

そしてやはり、惜しむ気持ちを持ちつつも、将来の再会の感動を心待ちにすることが自然にできるような、そんなドライともウェットとも言えない関係値がわたしにとって最も心地よい。

◇◇◇

二、輝く瞬間は短く尊い


アネモネの開花期間は短い。
あるいは、蝉の一生は短い。と言ってもいい。

我々は時に、時間の短さ、儚さに心が動く。

人の一生はアネモネや蝉のそれとは比較にならないほど長い。なんなら長くなってきている。

だがその大部分の時間、開花していないのだと思う。
輝いている時間は短く、往々にして一瞬だったりする。
卒業式、結婚式、大きな舞台。

蝉たちにも、少しは同情していただきたい。
我々人間は、なるほど過ごす人生時間は君たちに比して長過ぎるくらい長い。だがそのうちほとんどの期間、地上にいながら土の中で生活しているようなものなのだから。

分母が大きくて分子が小さいのだ。

いつも全力でなんて生きていられないのだ。

◇◇◇

三、内面の美


嘆いてばかりもいられない。
最後は明るいテーマで。

人の一生は長く、そのうち輝いている瞬間はほんのわずか。その儚さに感情を動かしている。
そして出会いと別れを毎年繰り返し、そのたびに感情を動かしている。

こんなのはほんの一例に過ぎず、われわれは日々起きることに対しさまざまな感情を抱く。
その多様さたるや。

感情が、感性がなかったら。と思うと途方もない気持ちになる。
もちろん私がこうして表現者としての活動をしているから、余計にそう思うところはある。

だが言ってしまえば誰しもが表現者であり、例えば何気ない飲み会の席でも、みんなあんなにもありありと感情をぶちまけているではないか。

個々のユニークな個性やタレント性、そこから生まれる自己表現、創作というものがたまらなく好きだ。
言うなれば、"内面の美"。
たぶん一生、そういうのに心躍らせて生きていくのだと思う。

人間として、それぞれに感情を、感性を持って生きることができることに幸せを感じる。

◇◇◇

さて、新しい始まり、輝く瞬間の短さ、内面の美という3つのテーマでつらつらと語らせてもらった。
お気づきの通り、これらは「アネモネ」(キンポウゲ科アネモネ属)の特徴として知られ、しばしば人の生活に準えて比喩的に用いられるテーマだ。

私はこれだけ豊かなテーマ性を持つアネモネという植物が好きだ。声に出した時の響きも良い。

ア ・ ネ ・ モ ・ ネ

やはり声に出して言いたくなる。

アネモネの持つテーマ性に最初に目をつけた人、それらを曲や詩に起こす人へのリスペクトもある。
私はこんな雑文でしか表現することができないが、今回、普段生きていて思うことについて、敢えて「アネモネ」をテーマにして少し語ってみたいと思い、筆を取った。

少しでも何かを感じ取ってもらえたなら、そんなに嬉しいことはない。

では、また。

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