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なぜ早めに進路や就職先を決められたのか?興味やスタンスがポイント。【進路が決められない人向け】

今回のnoteでは、進路未決定研究の中から

「決定者はどうして決められたのか」(早めに決められた理由)

若松養亮『大学生におけるキャリア選択の遅延 そのメカニズムと支援』(風間書房, 2012)にて考察されている内容を中心に紹介します。

本noteの結論(先んじて)

実は決定者も未決定者も、それほど異なる意思決定の方略や発想を持っておらず、以下の2つの可能性が考えられています。

可能性1)強く惹かれる選択肢にたまたま出会った
可能性2)スタンスの違い

どんな人に読んで欲しいか?

「早い段階で決められた人とそうでない人の違いを知りたい・・・!」

という方には参考になる情報かと思います。

今回まとめてみた感想としては「やっぱり興味って大事なんだなぁ」と感じています。現状把握できている事を書いているため、研究の進捗などによって今後記事等のアップデートが進むかと思いますがご了承ください。

それではどうぞ!


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そもそも決定者の定義とは?

研究においても”多義的”とされているワードですが、今回は著書内での定義を紹介させていただきます。

想定している現有の進路の選択肢のなかで「この進路なら目指すと決めてもう迷わないし、具体的に詰めるつもりがない」と言えるものがある人

(他にまだ迷っている選択肢があるかどうかは不問とされています)

POINT)決定者も未決定者も変わらない部分は3つ

それでは「決定者はどうして決められたのか?」に入る前に、調査によって双方にあまり差異がないとされたポイントを紹介しておきます。それは

①意思決定の方略
②発想
③能力や実現可能性の困難さに悩まされる程度

です。

【①について】
1960年代末〜80年前後にかけて「どうして決められたかを考えるために、双方の違いを明らかにしたい!」という視点の元に活発に行われていた、未決定者と決定者を比較する研究が元になっています。

ちなみに・・・それらの研究は80年代で途絶えました。

10年以上研究された中で、差異が見られたのは一部のパーソナリティ変数にとどまり、結論として『"実質的に両群の差異はない(Holland & Holland, 1977; Slaney, 1988)"』という分析がなされたためです。

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【②について】
発想という観点においても、前回のnoteにて未決定者は「インサイド・アウト的な発想」を持っていると紹介しましたが、実は決定者においても「適職信仰」(きっと天職に出会えるはずだと考える傾向 , 安達(2004))をむしろ強く表明していることが指摘されています。

そういった点においても、未決定者と決定者が同様の発想をもっているとされています。

「じゃあ決められた人たちは何が違うの・・・?」という疑問が湧いてきます。その点に関して著者である若松氏は、調査により以下のような可能性を2つ考察しているので紹介していきます。

可能性1)強く惹かれる選択肢に"たまたま"出会った

例えば

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が当てはまります。

上記は、情報収集・外的活動などの探索行動によって見いだした選択肢ではありません。また、多くの他の選択肢と合理的に比較検討を行った結果としてではなく、「その選択肢に強く惹かれたから」ということで決定している可能性です。

これらは入学時点で目標となる進路に比較的早くから出会えていたために、ある種の困難さに悩まされる程度が、未決定者より相対的に低い可能性があります。(もちろん入学以降でこのような職業に出会った場合も同様です)

著書内での大学生を対象にした調査の回答にて、決定者は

・「選択方法に関する迷い」について悩まされる程度が、未決定者に比べてかなり低い
・「最初にいいと思ってからそれほど悩むことなく決められた」人が5割を超えている

という結果が出ていて、悩み迷った末での決定でない人が大勢を占めると見れます。

ただ、反面抱いている「不安や不満」を凌駕するほど惹かれての決定になるため、"その選択肢に興味を強く惹かれている"ということが決定に至るポイントになってきます。

しかしこれだけだと「結局興味が重要なのか・・・自分で探すしかないじゃん・・・」と思ってしまいますね。
そんな中でもう1つ決定者の特徴として、ヒントになるものがあります。

それが進路決定を「最適なもの」 ではなく「満足できるもの」と考えるスタンスです。

可能性2)(未決定者との)スタンスの違い

現実問題「能力や実現可能性の問題は悩んでいても答えが出るものではないから」として、それらに囚われすぎないことも意思決定のためには必要と言えます。

未決定者のスタンスとしては、例えば以下のような不確実性を受け入れていくスタンスが考察されています。

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①積極的不確実性(positive uncertainty)/Gellat(1989)

将来の不確実性をありのままに受け入れて前向きに捉えることで、新たな意思決定を行っていく考え方


②プランド・ハップンスタンス理論/Mitchell, Levin, & Krumboltz(1999)

「偶然」がキャリア形成に大きな影響を与えているため、「偶然の出来事」を積極的かつ意識的に活用していこうとするキャリア理論

つまりは、未来が流動的であることを前提に、目標というものを近づくものとしてだけでなく、 創造するものとして捉え、そのために新規な経験に積極的に挑むことを望ましいとする考え方が近年見られているようです。

注意点)上記のようなスタンスを取れるのも「強く興味を惹かれた職業であること」がポイントになります。「それを乗り越えることも含めてやりがいである」と思えることが、難題に挑む動機に繋がるからです。


まとめ

いかがでしたでしょうか。

未決定でいる要因にも決定者になる要因にも「興味」「強く惹かれた」というワードが出てくるため、やっぱり重要なのか・・・!と編集部同様、感じられた方もいるのではないかと思います。

では興味を惹かれる職業がない人はどうしたら良いのか?

次の#04(最終)では長らくお待たせしてしまった感もありますが、ついに「決めるためにはどうしたらいいか」というHowの部分について書きます。

・「興味・好み」を現実的な選択肢と対応をつけさせること
・現実的な選択肢の"相場"を知ること
・意思決定のペースメイク
・自己内省的な探索だけで自己分析を進めようとしない
・代理的経験

今までの内容より実践的な内容になるかと思います。

最終回もよろしくお願いしますー!

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