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インド映画『K.G.F Chapter 1,2』《ಕೆ.ಜಿ.ಎಫ್》

出演:ヤシュ、シュリーニディ・シェッティ、ラヴィーナー・タンダン、アナント・ナーグ、サンジャイ・ダットほか
監督:ブラシャーント・ニール
インド上映:chapter1 2018年12月 chapter2 2022,年4月
尺:chapter1 155分 chapter2 166分

Chapter 1あらすじ
1951年、スーリヤワルダンはコーラーラ近郊で金鉱(KGF)を発見。全てを一族で管理して巨万の富を築くいっぽうで、労働者は外部から遮断され奴隷のように働かされていた。同じ年にスラム街でひとりの少年が生まれる。少年は唯一の身内であった母を10歳のときに亡くし、生き残るためにマフィアの下で働き始める。ロッキーと名乗った少年は、マフィアの世界でのし上がっていく。やがて最強のマフィアとなったロッキーは、ボスからKGFの支配者であるスーリヤワルダンの息子を暗殺するよう指令を受けるのだが…。

画像・あらすじ出典:日本公式HP

観るときに注意が必要!

すっかり『RRR』で沼にハマってしまい、Chapter2がインド国内で『RRR』を超えたという本作ももちろん目をつけ観に行きました。
とにかくアクションがすごかった。ありえない吹き飛ばし方とかはインドらしいけど、『RRR』以降ハマってチャランの過去作観ていた立場からするとやはりインド映画がクオリティ上がってるのかなと感じました。過去の作品群よりアクションシーンも自然だし、最近のハリウッド作品よりも良いのでは?と思いました。
見出しにも書きましたが本作を観る前に注意したほうが良いポイントが2つあります。

1.カット割りが多い

アクションシーン含め、カット割りがかなり多いです。そして暗いシーンでのアクションかつカット割り多いともはや雰囲気を楽しむレベルになります。自分はカット割り多いの平気な方なのですがそれでも「多すぎやろ」と思うレベルでした。アクションシーンで細かくカット割りされるとカッコよいのですが、画面に酔いやすいかたは防御策取ったほうが良いです。

2.冒頭の人物関係が分からなくなる

冒頭の方でK.G.F(コーラーラー金鉱)を巡る説明が一気にされます。その説明の中での登場人物多いです。冒頭で情報量多くてパンクします。
まぁ、それでついていけなくても諦めることなかれ!ロッキー(ヤシュ)が成り上がっていく話なので細かくわからなくてもなんとかなります!というのは半分冗談で、しっかり背景理解して観賞したいという方は公式にある相関図がめちゃくちゃ役に立ちます。パンフレットにも同じ相関図があります!
あと、私は時間軸がいったりきたりするの平気だし頭の中で整理できる方なのですが、それが苦手という人も公式の相関図で予習しておくと良いと思います。

インドでは大ヒットでも日本では『RRR』は超えないのではないか?

インドは多言語にわたり、『RRR』はテルグ語、本作はカンナダ語になります。このテルグ語とカンナダ語はルーツが同じなため文字も似ていますし言葉も似ていそう。本作の劇中歌でも「ディーラ」って言ってました!
自分としてはちょっと現代版&ダークヒーロー版バーフバリという印象を受けました。ではインド国内TOP3の『バーフバリ2〜王の凱旋〜』『K.G.F: Chapter 2』『RRR』を観たうえでどれが一番日本人受けするかというと恐らく『RRR』ではないでしょうか?そう感じる理由は下記の通りです。
あ、大前提で3作品とも面白かったです。そこは誤解なきようお願いいたします。

DOSTI要素がない

本作はロッキーがのし上がっていく物語。作中でも語られていますが彼は群れずに一人で嵐を巻き起こすのです。子供や庶民からは慕われていますが、対等な立場のパートナーはおらず、ある意味孤独。
でも日本人って友情とか、さらにそれを超えるブロマンス、好きじゃないですか?ジャンプの要素にも「友情」ありますよね?『琅琊榜』や『陳情令』がウケたのもブロマンス要素ですよね?韓国ドラマやバラエティもブロマンス要素満載ですよね?って考えると日本では『RRR』の方が有利なんじゃないかなと思うわけです。

ロッキーはダークヒーロー

ロッキーは父親に見捨てられた母子家庭育ち。最愛の母親も苦労して苦労して、ロッキーが幼いうちに亡くなります。その母親の教えがものすごい。自分たちをこんな目に合わせた世界を恨んでいたんでしょうね。ロッキーに支配者になれと言い遺して亡くなります。母は強し!
ロッキーはこの遺言を叶えるため野心いっぱいにのし上がっていくのです。何の後ろ盾もない彼にとって頼れるのは己の拳のみ。そういうのし上がり方だから人を殺しまくっているわけです。しかも決して正義の鉄槌ばかりというわけではない…。
一方で(自分のではなく一般的な)母親に弱かったり、弱者に優しい一面も見せています。それが彼の魅力でもあるのですが、彼という人物の本質が見えにくくなってしまってもいます。でもそこの描かれ方は弱いですし、オジキに諭される場面もあります。「暴力でのし上がった奴を崇めるなんて!」っていう倫理観がある日本人は本作のヒーロー像に違和感を感じるかもしれません。まあでもVシネも日本で人気だったりすることを考えると倫理観は関係ないかしら?

インド映画あるあるの一目惚れ

いくつかインド映画観てきて思ったのが「一目惚れ多すぎ!」です。主人公だったりヒロインだったりが一目惚れして、特に男性側の一目惚れの場合、強引なまでにアプローチしてくるのです。現実だったら引いちゃいます。
本作も例に漏れずそういうロマンスが描かれています。バーフバリ観て主人公のアプローチのしつこさに驚いたのですが、『RRR』でラーム・チャラン沼に落ち、彼の過去作や、ラージャマウリ監督作品を観ましたが、一目惚れ多すぎ!インド映画ではあるあるなんでしょうね。ただその恋愛要素がやや強引で、シャイな日本人は少しひいちゃうかもと思いました。

ロッキーは踊らない

『RRR』は主演二人が踊りの名手ということもあり「Naatu Naatu」のシンクロダンスやエンディングが印象に残りやすかったかと思います。しかし、『K.G.F』ではロッキーはほぼ踊りません!踊るのは周囲の人々やヒロインです。個人的にはボンベイでロッキーをたたえて踊るシーンが好きでした。特に子供!かわいかった〜。
踊らないのですが、劇中歌は耳に残るし、曲の盛り上がりとともにロッキーの内に秘めた何かがメラメラと燃え上がっていくように感じられ「カッケ〜」となります。

ではなぜインドでは『RRR』を超えたのか?それはロッキーが底辺からのし上がっていく物語だからではないでしょうか?インドはいまだ貧富の差があり、それに伴い教育の差もあります。底辺から成り上がっていくのは大変な世界です。そんな現実の中、暴力的な手段という、良くはないけどありえなくはない手段で成功者になっていくロッキーの姿を観て、インドの人々はたちは応援したくなってしまうのではないでしょうか?

「ディーラ、ディーラ」言っている劇中歌です―。



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