柚木有生

短編小説、他に小説やアニメなどの感想、エッセイを書きます。特に創作では殻を割るような作…

柚木有生

短編小説、他に小説やアニメなどの感想、エッセイを書きます。特に創作では殻を割るような作品に試みたいと思っております。

最近の記事

ユーフォ3期感想(1)と「部長としての久美子」

【はじめに】 本ブログはアニメ『響けユーフォニアム3』を視聴し、話数の順番ごとに書いた感想を寄せ集めた文章になります。 なのでそれ以降のネタバレはありません。 これから本作を見られる方や既に見た方にその都度共感してもらったり、また考えの相違点などを考察の基にしていただければ嬉しいなと思い書きました。 また、内容より「部長としての久美子」に対する言及が多く見られます。 基本は現在までに放送されている、1~4話までの感想となります。 【1話】 続編の初めとして素敵

    • 「時光代理人 」1期前半~過去の存在~

      【はじめに】 本ブログはアニメ『時光代理人 -LINK CLICK-』を視聴し、各回を見終えた順番どおりに書いた感想を寄せ集めた文章になります。 なのでそれ以降のネタバレはありません。 考察や理路整然としたまとまりは特にありませんが、これから本作を見られる方が抱いた感想をその都度共感してもらったり、また考えの相違点などを考察の基にしていただければ嬉しいなと思い書きました。 今回は前編で、1~6話までの感想となります。 【1期1話】 ふたりの設定が存分に生かされ、

      • 平野綾さんのLIVEに13年越しに行けた話。と、思い出語り。

        【ライブ当日 開演前】 17時に開演するライブは、16時30分が開場時間となっていた。私は遅刻を避けたい人間だが、イベントにはできるだけ直前に行きたい人間でもあった。考えた末、会場には15時過ぎに到着した。結果として小一時間、半端な待ち時間ができてしまった私は、会場の周りをふらふらと散歩することにした。行きは名古屋駅から伏見の会場「NAGOYA JAMMIN’」まで歩いたため、帰りは電車で戻ろうと決めていた。まずは伏見駅の下見をし、高畑行きの切符を先に購入しておいた。次に

        • 2023年に読んだ本(雑記帳)

          【はじめに】 今年は例年に比べて個人的な変化が少ない年だった。暇だった訳ではないが、感覚的には去年の延長だったように思う。昨年の出来事を並べ、どっちが2023年でしょーか?などというクイズ番組があったら予選敗退は免れない。唯一あった変化といえばビニール傘をめちゃくちゃ盗まれたくらいだろう。三本目あたりから、天気予報が雨マークの時、出かける際にビニール傘と別の傘を二本持ち歩いていた。用事を済ませ傘置き場へ戻ると、やはりビニール傘だけが盗まれており、その瞬間の軽い落胆を味わう

        ユーフォ3期感想(1)と「部長としての久美子」

          『BanG Dream! It’s MyGO!!!!!』”長崎そよ”と”豊川祥子”について

          『BanG Dream! It’s MyGO!!!!!』を視聴しました。 明け方からお昼にかけてほぼ一気に見れたのはそれほどに惹かれるものがあったからだと思います。せっかくなのでなにか感想を、と書き始めたいま、その要因の多くは”長崎そよ(左端)”と”豊川祥子(右から二番目)”に関わるものなのではないかと考えています。 そのため、本ブログでは彼女らの心情の推察、及び私的な感情を大いに含んだ感想をだらだらと記述していきます。 以下、本編の内容に触れる記載がありますので読む際に

          『BanG Dream! It’s MyGO!!!!!』”長崎そよ”と”豊川祥子”について

          短編小説【二十歳のアボカド】

           これはアボカドじゃない。どう考えても固すぎる。しかも苦いし、なんだこれ。あ、アボガドか。  たしかに包丁をいれたとき、妙な感触はあった。種を軸に切り込みを一回転入れてからひねると、このまえは綺麗に二つに分かれたのに、今回は種ごと真っ二つになった。実が固いから強く切り込みを入れすぎたってことか。  ――さて、どうしたものか。  スプーンでひと掬い分くりぬいたアボカドは、まな板の上で無残に横たわっている。捨てるのは勿体ない。かといって食べる気にもならない。第一、まずい。  よし

          短編小説【二十歳のアボカド】

          短編小説【歩道橋のかさぶた】

           週末に、香織《かおり》はひとりで夜道を歩いていた。  家から大通りに出る道の途中には、一台の自動販売機が置かれている。煌々と明かりを放ち、その可動音は静かな住宅街に響いていた。ここにしか売っていないメロンソーダを飲みながら、夜に散歩をするのが香織の日課だ。  といっても時刻は午後二十二時を回っている。あまり長い時間は出歩けない。  明日には始業式だ。また学校が始まると思うとどうにも気分が落ち込む。高校ももう最終学年だというのに、小中学校と変わらず楽しくないなんて、なんだか裏

          短編小説【歩道橋のかさぶた】

          エッセイ【15kgダイエットした話】

          2021年の今頃、わたしは67kgでした。 小学生からずっと平均より重い体重で過ごしていたのもあり、別段どうしても痩せようと考えてはいなかったです。ただ、痩せられれば嬉しいな、とぼんやり思っていました。 しかしその程度の心意気で努力が継続できるはずもなく、結果として数々のダイエットに挑んでは短期間で諦める、を繰り返していました。 そんなわたしもいまは52kg~50kgのあいだをうろうろとしています。 ここからは、わたしがどう痩せたか、その心当たりをいくつか書いていきま

          エッセイ【15kgダイエットした話】

          コナン映画「黒鉄の魚影」感想~それぞれの動機~

          映画を観に行くときは、徒歩かバスに乗ると決まっている。今日は雨が降っていたのでバスにした。二日酔いのせいで寝起きが悪く、バス酔いもした。去年の夏以来だという映画館に着いたとき、私はもう映画を見る気分ではなかった。 それから十分もしないうちに映画は始まった。 鑑賞後、バス酔いなどなかったかのように清々しい気持ちで、私はスマホのメモ帳に文字を打ち込んだ。 『今年のコナン映画、最高すぎる』と。 長い前置きですみません。このブログは4月14日に公開された映画【名探偵コナン黒鉄

          コナン映画「黒鉄の魚影」感想~それぞれの動機~

          "氷菓"《日常の謎と魅力》について

          「気になる」から、物語は始まった。 「気になる」から、本稿を書いていた。 【はじめに】 最近、『氷菓』を再読しました。理由は色々とあります。著者である米澤穂信の別作品が面白かったから、京アニの別作品を視聴していたら思い出したから、図書館で地元の作家として本が並んでいたから。不思議な話ですが、そのどれかが欠けていても、いやすべてがなくても私はこのブログをいつか書いていると思います。 それは、ずっと氷菓に対してくすぶっていた感覚が存在していたからです。氷菓を初めて知ったのは

          "氷菓"《日常の謎と魅力》について

          エッセイ【卵の殻はもう割れない】

           高低差のある音が同じリズムで鳴り響いていた。  放課後の昇降口。ランドセルをせおった生徒が一斉に音の出所へ顔を向ける。僕もそのうちのひとりだ。防犯ブザーを鳴らしていたのは、転校生の伊坂真奈美だった。  伊坂真奈美は、三年生の夏あたりに転校してきた。おぼろげな記憶ではあるが、リコーダーを吹く彼女の姿を見た気がするのでおそらく間違いないだろう。  転校といえば初顔合わせの挨拶を思い浮かべるが、伊坂のそれは僕の記憶にない。伊坂との一番古い記憶は、席が隣どうしになったときのものだ

          エッセイ【卵の殻はもう割れない】

          アニメ「WHITE ALBUM2」全話《恋という葛藤》について

          【はじめに】 本稿は、アニメ『WHITE ALBUM2』についてわたしの内側に募った感情、巡った思考を感想や考察を含めひたすらに雑記した文章のかたまりとなります。 ※以下、本編の内容にふれる記載があるため、読む際には注意してください。 【WHITE ALBUM2とは】 そもそもWHITE ALBUM2とは、株式会社アクアプラスの18禁PCソフトブランド「Leaf」によって作成された恋愛アドベンチャーゲームです。2010年に発売され、2013年にはアニメ化しました。

          アニメ「WHITE ALBUM2」全話《恋という葛藤》について

          2022年に読んだ本(雑記帳)

          【はじめに】 今年の一月に、「年末には好みだった本ブログ書きたいな」と思っていたことを、つい先程思い出した。もしかしたらブログを書く理由を求めて、記憶を創作した可能性もある。 どちらにせよ書くのだから問題はない。問題があるのはわたしだけだろう。 2022年は、世の中にも、わたしにしても、大きな出来事が幾つもあった。そうした中で、文字を読み別の場所へと没入を深められるのは大変ありがたい時間だった。大半は精神的負荷をそのまま現実へ持ち込みはしたが、それでも起こりうる出来事を

          2022年に読んだ本(雑記帳)

          短編小説【影踏みと、なつみれん】

           外に干した洗濯物がハンガーと共に揺れている。その奥で夕日に染まる空を、椅子に座って眺めていた。  夕暮れ時の空はオレンジ色よりも薄紅色に近い。前にアカリが、「白い雲まで無理やり赤色を含まされて可哀想」と言っていた。あの時はまた変なことを、と思ったが、今ならその気持ちも分からなくはない。  そんな会話をしたのも確かこんな夏の夕暮れだった。懐かしい。記憶を振り返っていると、窓から流れ込んだ風が頬を撫でた。ちょっと生ぬるい。今度は鐘が鳴った。十七時を知らせる鐘だった。  その音を

          短編小説【影踏みと、なつみれん】

          【まちがいのなかに俺ガイル。 俺ガイル 1巻(考察・感想)】

          【前文】2021年5月~2022年3月にかけて俺ガイルの鑑賞会に参加させていただきました。初めは鑑賞中も緊張しっぱなしでしたが、終盤に差しかかるにつれて、事前に考察めいたまとめを作成していない後悔を要所でするほどには僕にとって有意義な時間だったと思います。(そして普通に楽しかったです) 途中で作ろうとした感想ブログを「これキツイかも」と簡単に諦めたのも勿体なかったなと今は思います。文章の参考にと図書館で借りた本に手を伸ばし、たまたま近くにあったゴーヤで炒め物を作り、なぜか冷

          【まちがいのなかに俺ガイル。 俺ガイル 1巻(考察・感想)】

          エッセイ【長い長い物影】

           数年前、駅前の居酒屋通りを歩いていたら、見覚えのあるお店を見つけた。焼き鳥のチェーン店。成人を迎えて一年もたたない間によく通い、それきりだった。  日が沈みかけた薄暗い時間に散歩をするのは、その頃から好きだった。知らない人の話し声をBGMに、居酒屋の生暖かい灯りを見にわざわざ外へ足を運ぶようになったのも、その頃だったと思う。でも、あのお店の通りだけは久しぶりだった。  焼き鳥屋で最後に注文したのは長芋の鉄板焼だった。とろとろして薄味で、あまり好きじゃ無かった。これは一体何

          エッセイ【長い長い物影】