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尾道一人旅。

桜が満開を迎える頃、私は尾道にいた。
今年の春はいつになく肌寒い。朝7時過ぎの新幹線で新神戸駅から福山駅まで行き、そこで30分ほどの乗り継ぎ時間があったのだが、待ち合いスペースの人々は誰も冬服を纏っている。そう、私は服装選びを間違えた。
広島が神戸より寒いとは予想外だった。

何とか寒さに耐え、尾道行きの在来線に乗り込んだ。電車は観光客だろう人々でそれなりに混んでいたが、運良くボックス席の窓側に座ることができた。窓を流れる景色はよく見る田舎の風景である。山間部も通り、山肌には所々薄紅色の模様が見えた。この時期にだけ、桜の木はどこからでも見つけられる。

20分ほどで尾道駅に到着した。乗客は皆降りて行く。到着したのは9時少し前。私は事前に調べていた線路沿いの道を歩き、まずは千光寺へ向かうことにした。

大宝山権現院「千光寺」は標高140m、尾道港を一望する大宝山の中腹にあり、(大同元年・806年)弘法大師の開基で中興は多田満仲公と伝えられています。

千光寺公式サイトより

千光寺は山の中腹に建っている。徒歩でも20分ほどで上がれるが、この後に沢山歩く予定をしていたので上りはロープウェイを利用することにした。
桜の時期ということもあり、ロープウェイは非常に混んでいた。都会の通勤ラッシュ並みである。そんな中、乗務員さんの慣れた解説は山頂駅までの3分間できっかり終わった。

ロープウェイからは街並みや千光寺公園を見渡せる。

山頂駅がある界隈は、千光寺公園と呼ばれる広いエリアである。展望台や美術館、売店やレストランも点在していた。桜の木も沢山植えられていて、正に見ごろを迎えていた。桜を見ながら坂を降りると正面に尾道市立美術館があった。壁には「海からの贈り物展」というポスターが貼ってある。元々美術館が好きだった私は入ってみることにした。

観光地にも関わらず、小さな美術館はとても空いていた。そのおかげでゆっくりと見ることができた。「海からの贈り物」とは、真珠や珊瑚、琥珀、貝などの宝飾品のことである。1800年代に海外で製作されたものが数多く展示され、そのデザインの素晴らしさや精緻な細工に目を奪われた。現代にこのような宝飾を作ろうとしたらいくらかかるのだろう・・・。良いものが見れたことに満足し、次は本来の目的地である千光寺に向かった。

千光寺までは急な坂を降りて行く。所々巨岩があり、それが見どころにもなっている。最も注目されているのは、周囲50m、高さ15mの「玉の岩」。この大きな岩の言い伝えは以下である。

『往古この岩上に如意宝珠あり、夜ごとに異光遥かに海上を照らす、しかるに異国人来たりてこの山に登り、寺僧に向かって、我に金あり、汝これを与えるにより、この大石を我に与えよと、寺僧それに答え、売ることはできぬがこの大石を買いて何にするかとあやしむに、異国人は、この僧が岩上に宝石のあるを知らぬことを確かめ、心中欣び、ひそかにこの大石に登り美玉を奪い去りたり』と。

今でもこの大岩の頂に直径14cm、深さ17cmの穴がありますが、この穴が光を放つ宝玉があった跡だといわれています。この山を大宝山といい、寺を千光寺、港を玉の浦と言い古されたのも、そのゆかりはこの伝説にもとづくものであります。現在は岩の頂に宝玉の代わりに玉が置かれ、夜になると三色に輝きます。

千光寺公式サイトより

その後、本堂、三十三観音堂、毘沙門堂を経て、また坂道を降りて行く。途中、丁寧寺の三重塔と尾道の街並みが見渡せる場所に着いた。

この「高台から風景を見る」ということが好きな人が多いと感じるのだが、それは不思議な感覚であるといつも思う。じっとそこから見える風景をただ見渡す。その風景を見たいが為に険しい道のりを来る、その原動力は何なのだろう。

しばらく風景を見て、次は「猫の細道」と呼ばれる細い路地を下る。何段も階段を下りて行く所々に猫のオブジェを見つけることができる。人が少ない時には野良猫がいることもあるそうだが、ひっきりなしに観光客が通る日はどこかに身を潜めているのだろう。

膝裏が痛くなって来た頃、やっと民家が立ち並ぶエリアまで下りて来た。ここからは尾道本通商店街を散策した。全長1.2kmにおよぶ長い商店街である。そこで尾道らしいお土産を何点か購入した。その商店街を3往復くらいしただろうか。流石に足の疲れが酷くなって来たので駅前に戻ることにした。初めに尾道駅に降り立った時、改札を出て海側で何かイベントのようなものが見えて、沢山人が集まっていた。それを見ようと近づくと「尾道蚤の市」と書いてあった。そこで私はレトロなカメラを購入する。長くなったのでその話はまた次回に。

最後まで読んでくれてありがとう。

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