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ラマユルに暮らす女の子【インド旅行記13】

こんにちは!yukiです。

インド旅行記も、
いよいよ佳境となりました。

次回が最終回となります。

がんばって駆け(書け)抜けます!

今回は、
秘境のような集落の様子と、
そこで出会った女の子のお話です。

楽しんでいただけますように!



荒涼とした道のり


ピロンピロン、と
スマホのアラームが鳴りました。

埋まっていた毛布から顔を出すと、
しんと冷たい空気が肌にふれてきます。

外はまだ暗い、夜明け前。

音が吸われてるような静寂を感じ、
もしや、と思って外を見ます。

「うわ、やっぱ雪か!」

かなりの勢いで雪が降っていました。

荷物をまとめ外に出て、
降りつづける雪の中を、
ざっくざっくとバス乗り場へ向かいます。

「バス、動いてるかな…」

今日は、
ラダックの中心地・レーから、
車で100km少々行ったところにある
ラマユルという村を目指します。

バス乗り場で尋ねたところ、
“予定どおり出発する”とのこと。

良かった。


薄明の中、
バスが動き始めました。

外国人は僕だけ。

レーの街を出てしばらく走ると、
雪はすっかり降り止んで、
積もった形跡もなくなりました。

ひたすら、
岩と砂の荒涼とした大地。


途中、CGのような色の
インダス川が姿を現しました。

鉱物が水に混ざることで
反射する光線が変わり、
不思議な色に見えるのでしょう。

インダス川はチベットから始まり、
ラダックを通ってパキスタンへ。
最後にはアラビア海に流れ込むのです。

モエンジョ=ダーロに代表される、
古代インダス文明が築かれたのも、
この命の川の賜物なんですね。

ラマユルで暮らす女の子


やがてバスは、
曲がりくねった山道を登り、
やがて集落が現れました。

岩山の上にそびえる建物。

ラマユルに到着したのでした。


バスを降りたところには
1軒の商店があり、
若い女の子が出てきました。

茶色く染めた髪に、
若者らしいダウンベスト。

にこやかであると同時に、
力強さも感じるような表情。

少し掠れたアルトの声で
話しかけられます。

「ハロー。
 今晩、泊まるところ決めてる?
 私の家で民泊やってるんだけど、
 泊まっていかない?」

冬季のラマユルでは、
宿泊施設は軒並み休業しており、
民泊が主な宿泊手段なのです。

「うん、良かったら、
 部屋見せてもらえる?」

「分かったわ、
 ちょっと待ってね。」

彼女は店のシャッターを
ガラガラと下ろして鍵をかけ、
「ついてきて」と言って歩きはじめました。



「私はヤンザス。あなたは?」

「僕はyukiだよ。よろしく。」

ヤンザスの家は3階建てで、
2階が居住空間になっていました。

そのうち数部屋を、
民泊用に貸しているそう。

部屋は清潔にされていて、
電気ヒーターもあります。

「3食付きで、
 600ルピー(約1000円)よ。
 どうする?」

「うん、泊まらせてください!」

荷物を置いてほっと一息。

さっそくヒーター
スイッチを押しましたが、
あれ、つかない笑

コンコン、とノックする音が響き、
がちゃっとドアを開けて
ヤンザスが入ってきました。

「お茶持ってきたわ、どうぞ。」

「わ、ありがとう!
 ところで、ヒーター付かないんだけど、
 使い方が違うのかな?」

「ううん、昼間は電気が来なくて。
 向こうの部屋にストーブがあるわ、
 良かったら来ない?」

連れて行ってくれたのは、
ダイニングキッチン的な部屋でした。

ストーブに薪をくべ、
火をつけます。

パチパチと炎が揺れ、
部屋が暖まっていく。

「ご家族は、
 いま出かけてるの?」

「父と母はデリーで働いてるの。
 あとで小さい妹が帰ってくるわ。」

「えっ、じゃあ妹さんと2人暮らし?」

「うん。妹は3人いるんだけど、
 あとの2人は親戚の家に住んでるの。」

「じゃあ、家事も民泊も商店も、
 君が1人でやってるってこと?
 すごすぎだね…!」

「ありがとう、
 でも大したことないのよ!」

「てか、ヤンザスって何歳?」

「私は18歳。あなたは?」

う、、年下じゃんっ…!

厳しい自然のなかに住み、
家を守り、家畜を世話し、
商売しながら妹を育て…

本当に尊敬します。

のどかな集落


しばらくおしゃべりした後、
思い出したようにヤンザスが言います。

「あ、お昼食べるよね?
 ちょっと待ってて。」

パパッと手早く、
ご飯とダル(レンズ豆のスープ)を
作ってくれました。

・・・美味しい!

これまでのインドでは
あり得なかった薄味。

スパイスを全然使っておらず、
口に合いすぎる。

「おかわりもあるよ」

と言うので、
たくさんいただいてしまいました。

「美味しかったー、ありがとう!」

「良かったわ!
 ここではどう過ごすの?」

「今日はゴンパ(僧院)を見学に行って、
 明日はワンラ村まで歩こうと思ってるよ。」


家を出て、ラマユルを歩きます。

家畜は、放し飼いが多いみたい笑


村の家は、どこも同じような見た目。


村で出会う方々は、
「ジュレー」
と笑顔で声をかけてくれます。

人があたたかいと、
とても居心地良く感じますね。



そのうえ、この素晴らしい景色!

崖の上にあるのは、
ラマユル・ゴンパという僧院です。

ゴンパまで登って行くと、

「やあ、どこから来たんだい?」

ベンチで休憩する青年とご老人に
声をかけられました。

2人とも、
この近くに住んでるのだそう。

生活は厳しいでしょうが、
いつでもここでくつろげるのは
素敵なことですね!

村をぶらぶらと歩き回り、
夕暮れどきにヤンザスの家に帰ります。

30代くらいのフランス人夫婦
別部屋に泊まることになっていました。

夕食は、チベット餃子のモモと、スープ。
やっぱり、とても口に合う。

フランス人の2人と
お話ししながらいただき、
ヤンザスにお礼をいいます。

夜、またコンコンと扉が鳴り、

「寒くない?
 もっと毛布いる?」

と聞きにきてくれました。

朝方は冷えそうなのでお願いし、
2枚持ってきてくれます。

部屋を出るとき、
ヤンザスは日本語で、

「おやすみ。」

と言ってにっこりしました。

「日本語知ってるんだね!」

「日本人もときどき来るのよ。
 おやすみ。」


あたたかい気持ちで、
心地よく眠りにつきました。

急遽ラマユルを去る


翌朝、目が覚めると、
窓から白い光が差し込んでいます。

もしかして…

やっぱりまた

すでに10cmほど積もり、
勢いよく降り続いています。

部屋から廊下に出ると、
台所からヤンザスが顔を覗かせ、
また日本語で

「おはよう。」

とほほ笑みました。

フランス人の2人は起きていないので、
先に朝食をいただきます。

チャパティのようなもの、
オムレツ、ミルクティー。

「かなり雪ふってるね。」

「そうね。
 今日、ワンラ行くの…?」

「行けると思う?」

「ううん、無理だと思う。」

「だよねー。
 じゃあのんびり過ごすよ。」


もう1泊するつもりで、
部屋で写真データの整理をしていると、
ドアがノックされました。

ヤンザスかな?と思いましたが、
入ってきたのはフランス人の女性。

「あなた、今日もここに
 泊まろうと思ってるの?」

「うん、そのつもりです。」

「今、すごく雪が降ってるじゃない?
 レーへの道が閉鎖されるかもしれないって。
 1週間くらい動けなくなる可能性もあるわ。
 私たち、レーに戻る車をチャーターしたから、
 良かったらシェアしていかない?
 もうすぐ出発するわ。」

「まじですか」

居心地のいいラマユルに、
もう1〜2泊したかったのです。

日程の余裕もある。

しかしこの時は、
情報の真偽を確かめもせず、
女性の言葉に動かされました。

「ありがとう、
 僕も一緒に乗せてください。
 すぐ荷物をまとめます」

“後悔するかもな”という予感。
モヤモヤしながら荷物をまとめます。

「ヤンザス、雪がひどいから、
 彼らと一緒にレーに戻ろうと思う。
 今日も泊まるって言ったのにごめん」

「いいのよ。
 帰り、気をつけてね。」

家を出て、
雪の上を歩いていきます。

ハイウェイに停まっている
ジープに荷物を積み込みました。

振り向くと、
少し離れたところから、
ヤンザスと村の親子が
見送ってくれています

思わず、
ちゃんとお礼を言わなきゃと、
そちらへ走っていました。

「なにか忘れ物?」
と驚いた顔のヤンザス。

「君のおかげで、
 素敵な時間を過ごせたよ。
 ほんとありがとう!」

驚いた顔が、
笑顔に変わっていきます。

「ありがとう、良い旅を。」

握手を交わし、
背を向けて駆け出したとき、
ふと思いついて振り返ります。

「写真、撮るね!」

1枚、シャッターを切りました。


車窓に映る真っ白な村が、
どんどん後ろへ流れていきます。

あたたかく心に刻まれた、
ラマユル滞在となったのでした。




最後まで読んでいただき、
ありがとうございました。

それでは今日も良い1日を!


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