見出し画像

パリの空の下の様々な人生 「パリのすてきなおじさん」

金井真紀さんの「パリのすてきなおじさん」は2017年に出版されてからあちこちで取り上げられていたので、すでに読まれた方も多いと思います。

わたしは遅ればせながら先日から読み終えました。

金井さんのイラストも素敵で、
タイトルのイメージ通りのおしゃれなおじさんや自分の仕事に誇りを持つ、魅力的なおじさんもたくさん登場します。

でも、多様な国籍の多様な状況の人たちのお話は楽しいものばかりではありません。

難民としてフランスにやってきてフランス国籍を取得した人、自分はフランスに逃れてこられたけれど、母国の家族は亡くしてしまった人。

なんとかフランスに辿りついたけれど、その日その日をどうにか行きている人もいます。

様々な「おじさん」の中で特に忘れられないのは「隠れた子ども」だったロベール・フランクさん。(取材当時87歳)

第二次世界大戦中、フランスでもかなり激しいユダヤ人狩りが行われ、多くの子供たちも犠牲になったそうです。

その中でも、ユダヤ人の子供達をこっそり引き取った人たちがいたおかげで、名前も経歴も変えて生き延びた子供達が終戦時には2万人いたとのこと。

彼らが「隠れた子ども」と呼ばれる人たちで、金井さんが会いに行ったロベールさんもその一人でした。

ロベールさんは兄弟の中でなぜか一人だけフランス国籍を取得していたことも幸いし、その他の幸運や多くの人の助けもあり、生き延びることができました。

ロベールさんのお話はぜひ金井さんの本で詳しく読んでいただきたいと思います。

ただ、
「戦争が終わったとき、すべてのドイツ人が憎かった」
というロベールさんが、ドイツ語がユダヤ人が使うイディッシュ語に似ていることに気が付いたり、様々なドイツ人との出会いもあり、次第にその気持ちに変化が起きたそうです。

「人間には、人を憎む気持ちがある。権力者がそれを奨励する。」
「だけど、人は変わることができる。変わらなければいけない」

ロベールさんのその言葉が、どれだけ過酷な人生から出てきたか。

タイトルと素敵なおじさんの表紙の絵からは良い意味で期待を裏切られたわけですが、出会えてよかった1冊でした。

また、先日、金井さんの「マル農の人」という本も読みました。

かなり本格的な農業の話も出てくるのですが、組織の中で自分の信じることやミッションを追求していく人たちの物語でもあります。

登場する皆さんがそれぞれ個性的で、金井さんがどんどん好奇心を持って取材していく興奮が文章からも伝わってくるようで、農業には全く知識のないわたしでも、楽しく読むことができました。

今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

*あちこちで紫陽花を見かけるようになりました。

昔ながらのものも、目新しい(わたしが知らないだけかもしれませんが)色や形のものも、それぞれに美しいですね。


カフェで書き物をすることが多いので、いただいたサポートはありがたく美味しいお茶代や資料の書籍代に使わせていただきます。応援していただけると大変嬉しいです。