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4歳で名前を失った少女は「砂浜に咲く薔薇」になった


サヘル・ローズさんをご存知ですか?

女優、タレントとして
様々な番組や映画、舞台などで活躍されている方です。

わたしは何かの番組で
初めてサヘルさんを見たとき、
「きれいな人だなあ」
と見とれました。 

流暢に日本語を話す方で、どこかで
「幼い時に大変な経験をして日本にきた」
ということはうっすら聞いたことがあったのですが、
ラジオ番組に出演していたサヘルさんのお話で
明るいお人柄の陰に壮絶な人生があったことを
知りました。

サヘルさんは4歳の時、
イラン・イラク戦争で家族を失い、
正確な生まれ育った場所も、
生年月日も、本当の名前さえも
わからなくなってしまいました。
そんな彼女に
「サヘル・ローズ(砂浜に咲く薔薇)」
と名付けたのは、
養母となってくれた女性、
フローラ・ジャスミンでした。

その名前には
「通常は花の咲かない砂浜(サヘル)に
咲く薔薇(ローズ)のように
どんな場所でも強く行きて欲しい」
という思いが込めらていたのだとか。

サヘルさんが初めて彼女に出会った時の第一声が
「お母さん」。 

それまでどんな人にも
そんなことを言ったことがなかったのに、
「わたしのお母さんになって」
と自分から言ったのだそうです。
7歳の時、養母と養子縁組をした10月21日が
彼女の誕生日の日付になったのです。

そして、その日はサヘルさんが
「一人の国民として認知された日」
でもありました。

血の繋がりはないけれど
心から愛してくれる女性と出会って親子になれた、
第二の人生のスタートだったのです。

「彼女(養母)と出会っていなかったら、
私は鏡を見るのが嫌いだったと思います。

孤児院で鏡を見ても、自分の顔のどこが
生みの親に似ているんだろう?
と思っていました。

施設で親を知らない子にとっては、
いろんなことがトラウマになっていくんです」

幼くして家族を失ったサヘルさんは、両親の顔も記憶から消えてしまっていて、、鏡を見ても、一体自分のどこがお父さんに、どこがお母さんに似ているのかもわからないのです。

サヘルさんは明るく話すのですが、
わたしには想像もつかない世界があることを知りました。

そんなサヘルさんが養母に引き取られ、
「誰かの瞳に自分が写っている安心感」
を感じたのだそうです。

それは、誰かの瞳に映った瞬間に
自分が存在している、
生きているということを感じることができたから。

でも、当時のイランは女性が一人で
子育てをできるような状況ではありませんでした。

そこで、養母の知人がいた日本に
やってくることになったのです。

でも、諸事情で
その知人のところにいられなくなり、
2週間ほどは路上生活をしていたことも
あったそうです。

お腹がすいてスーパーに行き、
パンの耳が半額になって買える時は良いのですが
それが買えない時は、
試食コーナーを回るとフルコースになった、
と言います。

「ひと口ふた口でも、
噛み締めて食べると堪能できる。
その日しかないと思って生きてた時は濃厚だった。」 

そんなある日、母娘は
試食係の女性に呼び止められます。

サヘルさんは
「買わずに試食だけ食べているから、怒られる」
と思ったのですが、
その女性は「持ってきな」
と紙袋を渡してくれました。

その袋には、彼女が家から持ってきてくれたらしい
ありったけの食べ物が入っていたのです。

「その方は私たちが路上生活をしているとは
思っていなかかったかもしれないけど、
お節介をしてくれたんです。

今は人がお節介しなくなったけど、
29年年前はお世話をしあっていた。 

そういう日本の方に面倒を見てもらえたおかげで
今もこうして日本にいる。 
恩人がたくさんいる。」

そのあとも、生活するのが精一杯でしたが
大学に行きたかったサヘルさんは
様々なアルバイトをし、
ある日エキストラの仕事を始めます。

その後、稼ぐために
オーディションを受けに行っても
イラン出身のサヘルさんは
当時の「外国人枠」(白人・金髪)ではない外見のため
落ち続けます。  

それでも何役でもいいからと頼み込み、
6年間はひたすら死体だけやっていたとか。 

「死に方も殺された方も、
私めちゃめちゃうまいです。」

そして、ようやく回ってきたセリフのある役は、
テロリストの役。 

「テロリストの役だと中東の顔を求められる」
という現実に出会った時、サヘルさんは 

「この国でイランという言葉は
どうしてこうネガティブなんだろう? 
中東ってとても素敵で、世界遺産もある。
イランだって親日家もいるのに」

と疑問に思ったのだそうです。

サヘルさんのお話、
続きはまた次回に。

今回も最後まで読んでいただき、
ありがとうございました。

*昨夜は十三夜。
お月様がとても綺麗に見えました🌕



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