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内向型の私が、『内向型を強みにする』を読んで考えたこと

注)こちらの記事は旧ブログに2015年に書いたものになります。

面白い本に出会ってしまいました。今年読んだ良書ベスト5入りは確実の本です。
その本は『内向型を強みにする』(マーティ・O・レイニー著、務台夏子訳)です。

なぜこの本を手に取ったかというと、ここ最近、ああー自分は内向的なんだなと思うことがよくあって、そんな自分の特性に興味が湧いてきたからです。

一人で過ごす時間を増やしたら、パワーがみなぎり幸福感に包まれた

自分が内向的だと思ったきっかけというのは、先月あたりから体調を崩していて、自分は副腎疲労かその一歩、二歩手前ではないかと疑いはじめ、療養のためにとあまり人と会わずに一人静かに過ごす時間を増やしていました。取材もできるだけスカイプでやって、家から出ないようにしました。

栄養バランスの取れた食事をとり、ハーブティーをたくさん飲み、身体をあたため、好きなアロマの匂いを嗅ぎ、インテリアも自分の好みの物を増やし…と、できるだけ居心地のよい過ごし方、空間づくりに努めていたのですが、するとエネルギーがじわじわと充満してきて、精神状態もアップしまくりで、不安や恐れがない幸せな感じになっていったのです。
脳内の状態がNext Levelに到達した」と親友に報告したところ私がヤバいものにハマってしまったのではないかと心配されました。笑

ともかく、こうして一人になることでパワーアップした私は、改めて「ああ、私はすごく内向的なんだな」と思ったわけです。そして、「内向型」という気質に対して俄然興味が湧いてきたというわけです。

『内向型を強みにする』について

前置きはほどほどにして、『内向型を強みにする』について。

この本は、内向型人間に関する研究の第一人者でもある心理療法士のマーティ・O・レイニー氏が、「内向型とはなにか」「内向型が幸せに日々を送るためには、どうしたらよいか」を論理的かつ情緒的に詳しく書いた本です。

情緒的と書いたのは、自身もまた内向型の人間として、小さい頃から周囲との違いに悩み、外向型である夫との違いを感じながら人生を送ってきたという、当事者としての経験、感情が大きく反映されているからです。
だからこそ、内向型の人々が抱えがちな悩みを非常に深く理解していて、私もそんな彼女の優しさがこもった文章に何度も心を動かされました。

レイニー氏は、内向型の顕著な特徴について次のように説明します。「…それはそのエネルギー源である。内向型の人は、アイデア、感情、印象、といった自身のなかの世界からエネルギーを得ている」。私はこの説明に「まさに!」と叫びたくなりました。

そして、第二の特徴として「外部の刺激の感じ方の違い」を挙げ、外向型の人は多くを経験したがるが、内向型の人は経験したことについて多くを知りたがる、と説明します。

「内向型の人は、ただ人のそばにいるだけで刺激過剰となることがある。(中略)なかには人間が大好きな人もいるが、彼らは通常、相手がだれであっても、話をしたあとはその場を離れ、ひと息入れる必要を感じる」

そして、彼女はいいます。「彼らは自分が消耗しないために、世間との付き合いを制限しなければならない。外での時間を設けて、ひとりの時間とのバランスをとる必要もある」と。

 脳内科学を用いた解説

この本の秀逸な点は、気質の違いを脳内科学からも解説している点です。この解説こそ、この本を貴重なものとする部分だと思っています。たとえば、内向型はドーパミンの感受性が高い点、また二つの気質でそれぞれ脳内で使用する経路が異なることなどが説明されます。

さらに、内向型にも左脳型と右脳型があり、この二つでは情報の処理方法、言葉の使い方が異なる点が紹介されています。
ちなみに、私は「言葉や数字に強い」、歴然とした「左脳型内向人間」です。左脳型内向人間は、人前で話すことに大きな緊張を覚えません。なので、私のことをまったく内向型だと思わない人もいると思います。

この本はさらに、日々の暮らしの中で内向型を逆に強みに変える方法、またその気質と折り合いをつける方法を提唱していきます。
特に、パートナーの二人がまったく逆の気質を持っている場合、しばしば休日の過ごし方などで意見が食い違う場面も出てくるのですが、そういうときの対処方法などについても提唱されており、非常に実践的です。

過去の自分について、いろいろ思い当たること

この本を読んで、改めてこれまでの自分のことを考えてみると、なぜあのとき、あの環境にフィットしなかったのか、内向型という気質から説明がいくことも多々あります。

たとえば、東京という街は私は長期的に住むのに合わないと感じていました。
それは、人、音、光、物、すべてがToo Muchで、内向型の私にとっては心休まる場所ではなかったからです。
だから自然が多く、広々としているベルリンの方が住んでいてずっと居心地が良いと感じます。(ベルリンの中でも、たまに観光客に人気の混雑エリアにいくと、とっても疲れます)
日本の家によくある白色の蛍光灯も私は苦手で、欧州で一般的な間接照明やキャンドルなどの穏やかな光が大好きです。

また、疲れやすい私は長時間労働や決まった時間に働くことが苦手でした。それから、グループで旅行に行く際など、決まって最初に寝ていました。小さいときから、周囲には「よく寝る人」と「よくお腹を空かせている人」として有名でした。

孤独に陥ることなく、内向型の人が人間関係を育むには?

エネルギーレベルが低く、大勢の人と長く一緒にいると疲れてしまう私ですが、だからといって「暗い性格」という印象を会う人全員に与えていたわけではなかったと思います。
一つの面白いテーマを発見すると、それに没頭して活動的&おしゃべりになるので、むしろ一部の人には「社交的、積極的」という印象すら与えていたかもしれません。でも、それは単に自分の興味にピンポイントに合致していたからにすぎません。

一方で、やはりこういう気質の持ち主なので、ときに私は周囲の方に対して「冷淡」「ドライ」「近づきにくい」という印象を与えてしまうこともあります。
相手のことが嫌いなわけでもないのに、ただ長時間一緒にいるだけで疲れてしまって、反応が鈍くなったりそっけない態度になることもあります。

ですが、人間が嫌いというわけではありません。ただ、疲れてしまうだけなんです。

では、私のような内向型の人が、周囲の理解を得ながら人間関係を育むにはどうしたらよいか。
それは、最終的には自分でコントロールする、という点が鍵となるのですが、具体的な方法についてもこの本で紹介されていて、それは非常に有用なアドバイスでした。

 内向型に対する理解が深まれば、社会全体のストレスは減る

一時期、日本で「ストレングスファインダー」が流行ったことがありましたが(今もきっとよく知られていますよね?)、気質や資質について優劣をつけるのではなく、一つの「個性」と捉えて、その個性を最大限に発揮できるように自分を他人を理解することができれば、私は社会全体のストレスが大きく減るのではないかと考えます。

それは、パートナーとの関係、子供の教育、すべてに活用することができます。

私はラッキーなことに、子供のころはよく家にこもって一人で本を読んでいたのですが、それを親から咎められることは一切ありませんでした。
母もまた読書が好きだったので、同じ本を一緒に読んでいたこともありました。なので、自分の気質をネガティブに捉えることは一切なかったのですが、「積極さ」が求められる社会において、内向型の人たちが自信を失うことはよくあります。

特にアメリカで従来「外交的なリーダー像」を理想とする風潮が強いように、世間一般的には外交的な方が優位に働くシーンは多くあります。
内向型に対して「暗い」「消極的」といったマイナスイメージが付されることもあります。特に学校、会社といった組織の中ではそういう傾向が強いと感じます。

だからこそ、私は内向型である本人と、そして身近な周囲の人には、この本を読むことなどを通して、内向型に対する理解を深めて、その上でもっとも自分も周囲もハッピーになれる形で生活を送ってほしいと強く思います。

自分の気質に合った仕事、環境を選択する

「内向型」という個性を生かして、生活を送るとは具体的にどういうことを指すのでしょうか?

たとえば、私は一度興味がわくと、人に対する関心がとても強くなりますし、一対一の会話が大好きなので、その気質は今のライターや翻訳という職業にばっちり生かされています。

フリーランスという働き方も、内向型の私にはとても合っているようです。自分のエネルギーレベルに合わせて、働く時間を調整できますし、働く環境も居心地の良いものにしやすい状況にあります。
たとえば、私は日中でも眠くなったら昼寝しますし、自分のエネルギーレベルに合わせて食事や飲み物にも気をつかっています。匂いや音楽、光の環境も。

『Quiet』の著者、スーザン・ケインがウォール街の弁護士からライターへと転身したように、自分の気質に合わせて、無理のないライフスタイルに徐々に移行していくことはすべての人に可能だと思っています。

この本では、自分のエネルギーの浮き沈みをしっかりと理解し、そのペースに合わせて上手に人生を送る「達人」の例も紹介されていて、感銘を受けました。そして、筆者はこのように内向型の読者を励まします。

本書のためにわたしがインタビューした人の多くは、自分が外向型の人ほど大勢の友人は持てないし、たくさん働くこともできないし、多くのことはこなせないという事実に折り合いをつけていた。
しかし彼らは、より深い友情をはぐくみ、より意義深い仕事をし、ささやかで静かで貴重な日々の瞬間を楽しんでいる。
内向型であることの利点を知れば知るほど、自分に限界があるという事実は受け入れやすくなるだろう。
これは、あなたに欠陥があるということではない。限界があること自体は問題ではなく、苦しみをもたらすのは、わたしたちの限界に対するとらえかたのほうなのだ。

(第8章「限界をしれば強くなる」より)

Be master of yourself. 🙂

Cover Photo by Valmir Dzivielevski Junior on Unsplash

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