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壁の色に惹かれる

ドイツでは、今日から再びロックダウンが始まって(といっても春のロックダウンよりは緩やかなもので、フランスのような外出禁止令も出ていないし、営業しているお店も多い)、カフェやレストラン店内での飲食は今月末までできなくなった。

夏ぐらいから、自粛していたカフェ通いを再開していた自分にとって、これはちょっと辛い。でも、ここ数週間でドイツ国内の感染者数は激増しているし、私が住んでいるエリアもまたハイリスクエリアになっていて、ロックダウンを今のタイミングで実行して、クリスマスまでにはなんとか状況を落ち着かせようという努力には十分納得がいく。

カフェの話。

ここ最近、雨や曇りの天気が続いて、日照時間も明らかに短くなってきたベルリンで、気持ちが自然と沈みそうになりがちな中で、ふと無意識に向かってしまうカフェがあった。そのカフェは、一面の壁が明るいピンクに塗られていて、そのピンクの壁を眺められる席に座ってコーヒーを飲み、ラップトップを広げて作業をしたりする時間がとても好きだった。

明るいピンクの壁を見ていると、気分が自然と明るくなっていく。

2年前ぐらいに、ライターの久保田由希さんの「ウォールカラー・インテリアレッスン」を読んで、ご本人からも壁の色を塗る楽しさなどについて伺ううちに、自分のアパートの壁にも色を加えたくなって、ある週末に思い切って慣れない手つきで壁をピンクに塗った。

ピンクというのはちょっとロマンチックすぎやしないか、青や緑の方が落ち着くんじゃないかととも思ったのだけど、ベルリンの暗くて寒い冬を乗り越えるのはピンクがちょうど良いと思って、くすんだピンクのペンキをホームセンターで選んだ。

一度壁に色を塗る楽しさを知ってしまったあと、その楽しさにはまってしまって、今度は一面ではなく部分的に色を塗りはじめた。

それまでは白い壁でぼんやりとしていた小さなアパートの空間が、色を加えることで輪郭がはっきりとして、私はもっと自分の部屋を好きになれた。

気づけば、今住んでいるアパートは、子供の頃に過ごした横浜の家以外で、もっとも長い期間住み続けている場所になった。

実をいうと、最初このアパートに引っ越したばかりの頃は、前住人の家具やインテリアを引き継いでいたので、他人の部屋に住んでいるような感覚がしばらく抜けなくて、あまり居心地がよくなかった。

でも、ベルリンでの部屋探しや引っ越しの面倒さを、その時までには嫌というほど味わっていたので、私は当時はまだ居心地がいまいちだった部屋を、徹底的に自分好みの空間にしようと心に決めて、触ったことのなかったドリルの使い方や壁に色を塗る方法を学んで、部屋をどんどんいじっていった。今年の春にはキッチンの床も改造した。今はYouTubeの動画やネットで教材がたくさんあふれているから、それらにとても助けられた。

カフェの壁の色の話からどんどん離れていってしまったけど。

ロックダウンが明けたら、またあのカフェに行こう。それまでは、また自宅で過ごす時間が長くなりそうだ。でも、いっぱい手をかけた、大好きな自分の部屋だから、きっと穏やかな時間を過ごせる気がする。



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