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書評 │ できるだけがんばらないひとりたび

#03 𖤣𖥧𖥣𖡡𖥧𖤣
できるだけがんばらないひとりたび
田村美葉


*内容

一人旅って一体何をどうしたらいいんだろう?友達や家族と行く時と違い、明確な目的も持てずに行くのはなんだかはばかられる。そもそも相談する相手もいない状態で旅に出るのが不安、何をしたらいいか分からないけど一人旅してみたい、という方向けの背中を押してくれる本。

*興味深かったところ

・著者の肩書が「心配性トラベラー」であること。
・そもそも文字数が少なくライトに書かれているので読みやすく、さくっと読めるところが入門書という感じでよかった。頑張らないという主題なのに頑張って読まないといけなかったら心折れそうなので……
・第二部で著者の実際に行ってきたリアルな旅の話を読めること。

*所感

初めのほうは、表紙にある通り51点の気楽にひとりたびをするためのポイントが書かれていて、慌てないための情報、持ち物についての話、行く場所の選び方、旅慣れた人の意見はむしろ聞かなくていいなど、考え方を柔軟にさせてくれるようなトピックスが見開きで1項目ずつ書かれており、どんどん読み進めることができた。

本書はおそらく、この前半がメインだと思うのだが、私は第二部の後半部分にすごく惹かれた。実際に著者がチャレンジした旅行の事例がリアルに書かれている。私がよく見かける旅行記というのは、大抵美しい写真や美味しいい食べ物が取り上げられ、ここは気を付けてね!という注意書きが書かれつつもよかったところを書き連ねているものだが、ここで書かれていたのは見栄や後ろめたいことがあってその旅行先を選んだことや旅行に行った時の悲しみ、しんどかったことだった。一人旅をお勧めしている本でそんなこと書いている点に心動かされた。

そして最高に素敵だなと思ったのが、著者が”エスカレーターマニア”だということである。そのために世界中のエスカレーターの情報を得てはその場所に行くという。横浜にあるスパイラルエレベーターに出会ってからそのワクワクは始まったと読んで、私も知っているエスカレーターだったので、あれか!と親近感がより沸いた。彼女の書いているブログも見つけて、楽しい人だなと思った。

エスカレーターを見に行く目的が旅の1つになった彼女はそこから”自分だけの”楽しみ方を理解して、旅に現地に行ったらとりあえずこれやる、みたいなルーチンも出来、安定して旅が出来るようになったよう。ただ、旅慣れてない人の不安な気持ちを理解しているので、初心者向けの優しい解説サイトも作っている。(私も新幹線の乗り方でICカードの併用の仕方に戸惑っていたのでサイト拝見して理解が深まった)

この本の最後に、私が感じていた旅の苦手感はこれだ……と思うことがあったので引用する。

振り返ってみると、私が「旅」に抱いていた「苦手な感じ」の正体は、自分が「知らない」ことを「恥ずかしい」と考えていたせいなのではないか、と思うことがあります。
~中略~
私がイメージする「旅の達人」は、すごくいろいろなことを知っている人でした。その街で一番美味しい食べ物も、歴史も、挨拶の仕方も、なんでも知っている人。
だから、「知らない」私には、旅をする資格もないと思っていました。

できるだけがんばらないひとりたび p.182

”そんなことも知らないの?”は私の苦手ワードだ。先日も飲み会の席で切符の買い方が分からなかった話をしたら真正面から「それはあなたが世間知らず過ぎる」と言われて傷ついたばかり。でもこの本からは、今から知っていっても遅くないんだよ、出来ることからやっていこう、という温かさが感じられて勇気づけられた。自分だけに響くようなポイントが見つかるまでは、王道なもので試してみて、ハマるか検証するのもいいなと思わせてくれた本だった。

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読んでくださり、ありがとうございました♪

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