見出し画像

伝えたいんだ。 #あなたへの手紙コンテスト

顔も知らないお祖父ちゃんへ


折角なのでもう手紙を出せない人へ、
メッセージを書こう、と思いました。

宛先は、母方のお祖父ちゃんです。

こんな事から書き始めると怒られてしまいそうですが、
お祖父ちゃんの名前は、なんだったかな?

お祖父ちゃんは私が産まれた数日後に亡くなった、
と後から聞きました。
実家から離れた土地で私を産んだ母は、到底動けず、
貴方の最期を看取れなかった、とも聞きました。

当時私は目も見えない赤子だったので、
その時の母の表情や周りの雰囲気も、
感じ取ることが出来ていません。

そして、まだ聞けずにいます。

あなた方は、それらの事についてどう思っていますか。


お仏壇やお墓の前に座る度、
生前どんな人だったのか、と想うことがあります。

けれど、私には、
貴方の腕に抱かれたこともなく、
年長者の語る貴方の像をぼんやりとなぞるばかりです。



あれから30年、私は(立派にとは言えませんが)
お陰様で自分の意見をはっきり言える子に育ちました。

結婚もしたんですよ。


「コロナ禍が収束したら何をしたいか」
と旦那さんに聞かれたとき、
私は「お墓参りに行きたい」とはっきりと答えました。


20代の最後の最後に経験した病気で、
(誰かに守られて生きている)ということを、
嫌というほど実感したからです。

それは私の中で今存在している人だけを意味しません。
そして、決して、宗教的なものでもありません。

これまでは、正直なところ「多忙」という言葉を使って
お墓参りや親戚付き合いから逃げていました。


(別に誰かが行ってくれるからいいやね)
と思っていたからです。

でも、今は違います。
【私自身】が墓に参りたいのです。


近頃、顔や人となりを知っている人たちが
夢の中に出てきてくれることが増えました。
夢のなかでお祖母ちゃんや叔父ちゃんと会えた後は
とても嬉しい気持ちになります。

もう会えない人たち。

そのなかでも、
じいちゃん、貴方は、
「私にとって顔も分からない人」なのです。


三十年経ったね。
私も、成長したんだよ。

絶対にお墓参りに行くから、
墓石磨いて草を取って、花を替えながら、
いろいろ伝えるから。

だから、待っててね。

いつもありがとう。

水野 うたさんの素敵な企画に参加させていただきました。
実は私、【応募要項】に弱いんです。

だって、
参加自由で具体的で応募資格があるのであれば、
いつだって挑戦したいと思ってしまう性分だから。

折角参加するなら、
今後きっと手紙を書かない故人へ宛てて書きたいと、
この内容にしました。

うたさん、いい機会を下さりありがとうございます。


#あなたへの手紙コンテスト


とい。