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あの人は今

約10年前南仏のニースで出会った、忘れられない女の人がいる。

その人はロシア人の美人。しかも、当時私が憧れていた某モード誌のエディターという職業についていた。

その人がニースにいた理由、

それは、恋人がニースに住むアーティストだったから。

彼女は恋人のアトリエの近くに1週間アパートを借り、バカンスをとっていた。

たびたびそうやって彼女はバカンスを取ってはニースに通っているようだけど

私の眼には2人はいわゆるライトな恋人の関係に見え

シリアスではないんだろうな、と思っていた。

まだ20歳だった私は、こんな自由な大人の関係もあるんだな、と感嘆さえしていた。


私はその彼(ニース在住のアーティスト)のほうと旅の最中親しくしており、彼の紹介で彼女に出会った。

彼が、私がニースを去る際にくれた1枚の絵は、今でも大切に私の部屋に飾ってある。


数年後、そのアーティストの彼のFacebookページを何気なく見ていると

見覚えのある顔が笑顔で写真に納まっていた。

そう、あのロシア人の彼女!

タグ付けされた彼女のページへ飛ぶと、

なんと彼と結婚しニースに移住しているらしい!

そのとき、一度きりしか会ったことがない彼女のことなのに、

やけに興奮してしまった。

皆がうらやむ職業を捨て、異国へ移住。

彼のほうも、まるで結婚なんてする人には見えなかったから、

彼女とともに歩むことを決めたことに驚いた。


人生って何があるか分からないし

それまで積み上げてきたものを一瞬で手放す時がくるのかもしれない。

自分が幸せと思える決断をいつでもできるよう

柔軟で強い自分でいたいな、と彼女を思い出す度思う。





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