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名前に抱かれる子どもたち

 その命に名前をつける心意気。

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「羊を数える子どもたち」という曲をここ最近で知った。くしゃみ。。というアーティストが歌っている曲だ。
 眠る前のふとんの上で聴きたくなるようなゆるやかな曲調が素敵だが、それ以上に僕は曲名に惹かれた。思いつきそうでなかなか思いつかない曲名ではないだろうか。
 小さな体の命の安らぎや温かさがこもったタイトルだと感じた。

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 新卒で入った組合は暇だった。自分で仕事をつくれなくて時間を持てあましていたのだ。
 そんなとき、事務所のパソコンの前に座っていた僕がなにをしていたかというと、ネットで森博嗣さんの小説のタイトルをしょっちゅう調べていた。
 かりにその作家名を知らなくても「すべてがFになる」という小説のタイトルは聞いたことがあるのではないだろうか。森博嗣さんの小説のタイトルは非常に魅力的なのである。
 彼は執筆するスピードが速く、新刊がよく刊行されるので、新しい小説のタイトルを見るとわくわくした。
 じっさいに読んだ小説は非常に少ないのだが、タイトルとあらすじを見るだけで充足感があった。

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 タイトルは凝縮されたセンスだ。
 曲でも小説でも、映画でもタイトルを冠する。どんな内容を、ストーリーを、メッセージをこめたのか、短く鋭いことばであらわす。研ぎ澄まされたセンスは、見た者を射抜く。
 noteになんでもない雑文を投稿するようになってから、タイトルは頭を悩ます種のひとつとなったが、センスがないのだからしょうがないとあきらめも持って雑文に名づけている。

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 そういえば、ひとの名前もタイトルといえるのだろうか。
 この子に歩んでほしいと願ったストーリーが、なくさないでほしいと願ったメッセージが凝縮されて人名となる。
 命名は、親の偉大な所業のひとつだ。

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