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ギャンブル夢物語

 ありもしないことを願うのなら、それは夢物語。

◆ ◆ ◆
 前職の上司は競馬好きであった。パチンコも好きだった。
 その上司が発足した競馬会もあり、グループ会社やお客さんも多数加入していて、みんなで競馬を楽しんでいた。
 競馬もパチンコもやったことがなかった僕は、ギャンブルのなにがそんなにおもしろいのだろうかと疑問に思っていた。お金が減るかもしれないというのに。
 ギャンブルの塵芥にまみれていなかった純白の僕は、過去のものとなった。

◆ ◆ ◆
 ベトナムは、カジノが合法である。外国人であれば、いいらしい。
 毎週訪れている。ルーレットだけに興じているが、なるほど、ギャンブルは心を奪う。
 この1回で2倍になって返ってくるかもしれない。はずれた、次こそは。当たった。次は、こっちだ。うわ、さっきと同じ賭け方だったら大金になって返ってきたのに。じゃあ、こっちはどうだ。当たった。調子が
いいかもしれない。
 ぼやきだけが僕の内側を満たして、悩みも、怒りも、喜びもすべての感情がルーレットに根を生やす。過去にあった悩みも未来にたくしたはずの希望もなくなる。
 僕はことばの綾ではないと思っている。「ギャンブルは心を奪う」ということは。

◆ ◆ ◆
 ずいぶんと危ない者の文章になってしまったが、僕は100ドルだけ最初に投じただけで、それ以上は自分のポケットマネーを使っていない。すべては、カジノでもうかったお金だけで遊んでいる。
 これだけ遊んでいる者が言うと説得力はないかもしれないが、ギャンブルには近づかないほうがいいと思う。1回ではまってしまう者だっているから。ただ、できれば何回か興じて、しっかり失敗もするべきだと同じくらいに思っている。
 そして、ありもしない夢物語をいえるのなら、この世界からギャンブルはなくなったほうがいい。

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