#219 帰国翌日からのNew Yorkロス・・・ニューヨーク1人旅・・・帰国翌日 

帰国して一夜が明けた。昨日までの3週間が嘘のように、ドドーンと現実が目の前にあった。
あと1週間で10か月一緒に暮らした長女が引っ越していき、さらに2週間すると次女が、1年間4か国の留学を終えて帰国する。バタバタと落ち着かないな。もっとNew Yorkの余韻に浸りたいのに。

そして、3週間ぶりの学校勤務。
突然、子供たちの前でNew Yorkの話をするように言われ、150人の子どもたちを前に、New Yorkerがどれだけ優しくて親切な人が多いか、語った。通勤途中に転んだ女性の話を引き出して〝自分さえ良ければいい〟という考えは人に優しくない、〝お互いに優しさを持って助け合うことを大切にしてほしい〟と伝えた。

どこまで伝わったかはわからないが、みんな、いつものワイワイガヤガヤは抑えて、静かに真剣に聞いてくれた。子供たちの表情がみるみる変わっていくのを見ながら、それぞれが、優しく親切にできたらいいと思った。New Yorkerのように。

その後、帰国してから1週間後、長女からの強靭パンチが飛んできた。
「お母さん、ニューヨークから帰ってしばらくは凄く穏やかだったのに、段々ギスギスしちゃって、化けの皮剥がれたね」
これには、かなりのショックをくらった。数えきれないほど大勢のNew Yorkerにあんなに親切に優しくしてもらったのに、その恩を忘れて、帰国後わずか1週間で日常に戻ってしまっている自分に、情けなさと苛立ちと、そしてNew Yorkに戻りたい思いが複雑に交差していた。

思い浮かんでくるNew Yorkは、良い思い出ばかりだった。
New Yorkに着いて2、3日後くらいのときのこと。街中を歩いている途中に散々迷子になりながら、それでも嘘つきナビに頼らなければならないことも多かった。
道の真ん中で突っ立ってナビを凝視し、〝あ、間違えた〟と思い、いきなり振り返って前も見ずに歩き出し、後ろから歩いてきていたスレンダーおにいさんにぶつかる寸前、おにいさんは〝ワオー〟とびっくりして言いながら、とっさに私を両手で包み込む仕草をしたのだった。完全に私が悪い。〝わあーごめんなさい!〟と思ったが、優しく包み込まれて、びっくりと申し訳ないのとで、固まってしまい、謝ることも、お礼を言うこともできなかった。New Yorkの男性には、こんな優しいしぐさができる人がいるんだと、感服したのだった。

私は日本にいても、すれ違いざまに道を聞かれることがよくあるのだが、何故かNew Yorkでもよく聞かれた。どうして旅行者の、しかも英語が全く話せない日本人の私に聞くの?と思ったが〝No English〟としか言えなかった。申し訳ないと思いつつ、もしかしたらNew Yorkerに見られたのかもしれないと勝手に解釈して1人で嬉しくなっていた。

次から次に素敵な思い出がふつふつふつふつと浮かんできて、その後しばらくは、New Yorkロスで苦しんだ。

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