さっぱりわけがわからないまま出発した、Haremゴスペルツアー。
それでも私は、ツアーガイドの真後ろにピッタリと付き、理解できない英語を、できないならできないなりに、一生懸命聞いた。
いかにもわかったふうに聞き、いかにも楽しんでいるふうを装いながら、
1つでもいいから聞き取れる単語はないか、必死に聞いた。
どうせ理解できないのだから、もうこの際、内容は二の次だ。
単語が1つわかるだけでも、いいではないか。

少し歩き教会の前で解説され、また歩き次の教会の前で解説、次の教会まで歩き解説を、次々と繰り返しながら、ツアーは進んだ。

けれど、進めど進めど、ツアーガイドの解説は全然わからないし、段々と楽しんでるふうを装う事にも飽きてきた。
そこで、グループの中から出て、風景を楽しむことにした。周りをよく見渡すと、繊細な彫刻が施された、きれいな建物があちこちに建っていた。

道路にはごみ1つ落ちていない、美しい景観だった。
Haremは恐ろしい街、Haremは怖いところ、Haremには1人で行ってはいけない、Haremには住めない（住むところではない）、Haremには近づくな、
など、事前情報がいかに曖昧なものかと思うほどだった。

確かにツアー御一行様以外、ほとんど人は見かけないし、私の勝手な先入観だが、雰囲気や空気感が、どことなく物悲しい感じはした。
ただし、1つ1つの建築物は美しく、夢中でカメラに収めた。
けれども、さすがに1時間半～2時間ほど歩き、何か所めかの教会の前に着いた時、私は完全に飽きていた。このままこの状態が続くようなら、途中でツアーから離れて自由行動をして、1人でHaremツアーをしてやろうかと思い始めていた。