【イベントレポート】50歳からウェブ業界へ。吉村智樹さんに聞くライターの仕事術

「仕事は戦略的にやっています」

12月19日に参加した「第10回ライターお悩み相談室」のゲストは、吉村智樹さん。
思わずこちらも顔がほころんじゃう笑顔にはちょっと似合わないような、その力強い言葉が印象に残っている。

ライターお悩み相談室は、京都在住ライターの江角悠子さんが主催している(だいたい)月1の会。
ゲストを呼んで、参加者の悩みを聞いてもらうのだけれど、こじんまりしていて私には居心地がよく、予定が合うときにちょこちょこ参加している。

そして吉村さんといえば、私のなかではやっぱり関西版VOW三部作。
その昔、VOWをかじりつくように読み、ひとりで笑い転げていたあの日の私に、「ねえ、この先あなたライターになってこの本を作った人に会えるって知ってる?」ってドヤ顔で言ってみたい。

人生って予想がつかないもんだなあとしみじみ思いながら参加し、目からウロコをボロボロ落としながらほろ酔いで帰宅。

完全に私目線で感じたことを、忘れないうちに書き留めておこうと思う。

仕事はどうやってつかんでいる?

私は新卒で東京に出て、医学書の出版社に就職した。

なので、出版社時代のコネがあるのではと思われるのだけれど、実はまったくつながりがない。
私がいた出版社で原稿を書くのは医師をはじめとする専門家ばかりだったので、ライターさんと絡む機会もなかったのだ。

出版社の編集者として働いた次に英会話教室に勤め、専業主婦に。
その後、mixiを通して声をかけてもらって、物流系企業の専属ライターになったのがライターのはじまりで。

ライター仲間がいない状態で何年もやっていたので、ほかの人がどんなふうに仕事をつかんでいるのか、常々知りたいと思っていた。

「フリーランスのいいところは、営業ができること」

そう語る吉村さんの仕事は、すべてご自身の企画ありきのものばかり。

まず書きたいものがあって、それを書かせてくれるのはどこなのかが軸。
企画をもとにWordPress上で原稿を8割つくり、書かせてくれそうなメディアに打診してアポをとり、打ち合わせの場で一時的に公開して「こんな感じです」と見せるのだという。

ほぼ完成した原稿だと伝わりやすいし、WordPressが使えるというアピールにもなる。

自分が書いた記事のURLだけ入れたポートフォリオを持って、「私こんなの書けます」「こんなジャンル得意です」「何かあればお声がけを」とアピールするのではなく、もうちょっとで完成しそうな原稿を見せて企画を売り込むのだそう。

「クライアントはポートフォリオがほしいわけじゃない。企画をほしがっている」

このあたりから、私の口はずっとポカーンと開きっぱなしだったと思う。
写真撮られていなくてよかった……。

「自分が座れる椅子はどこにあるかを考えていて。50歳でウェブライターの仕事を始めたいと思ってから4か月間、ウェブの記事にひたすら目を通して誰も書いていないことを探し続けた」

そんなお話を聞きながら、無意識に受け身になっていた自分に気付く。
自分からたいして動いてもないのに、焦ったり、不安になったり、自分探ししたり、何やってんだろう私は。

フリーランスのあいだでは、仕事がないから、声がかからないから営業をする=営業ってちょっとカッコ悪い、そんなイメージがどこかにあるかもしれない。
じゃなくて、実績ができたからこそ営業しやすくなっているのだと。
なぜそのメリットを活かさないのかと。
う~ん、確かに。

私は企業との仕事が好きなので、このメディアで書きたいというより、この企業と仕事したいという思いで動いている。

最初はオウンドメディアでスタートすることが多いのだけれど、仕事に余韻をもたせておくと、「これもできますか?」「いまこんな企画を考えているんですが」といったご相談を受けるようになり、「これってどう思います?」みたいなことも聞かれるようになって、最終的には商品開発チームにも所属しちゃったりしている。

文章を使う仕事は企業のなかにいっぱいあって、文章作りに困っている人は企業のなかにたくさんいて。
運動会の電報作成から記念誌の編集まで、文章を通して関われる仕事の種類は幅広く、大変だけれどまったく飽きない。
ヒーヒーなるけれどワクワクする。

一方の吉村さんは、このメディアで書きたい、この企業と仕事がしたいではなく、「これを書きたい」がとても明確だ。
私にはそれはなくて、むしろ書きたいことがある人をサポートしたい思いが強い。

どちらがいいとかではなく、どれもいい。
いろんなライターがいていいんだと思う。
ただ、自分がどうしたいのかを明確にして発信しなければ、そりゃ仕事にはつながらないよなあと改めて思ったのだった。

ライターとしての強みは何ですか?

「関西という地方に住んでいるのが強み。自分が住んでいる街のことを書くのがライターの始まりであり、終わりだと思う」

これは、関西のライターが強いよっていう話ではない。
地方に住んでいる……それだけでもひとつの強みなのに、活かしきれていないのではという問いかけでもある。

ああ、すごくわかる。

以前は取引先がすべて東京で、打ち合わせに行けなくて断念した案件もあって、「東京にあのまま住んでいれば……」と何度思ったことか。
でも、そうやって東京を向いている限り、私のアンテナは東京だけに張られ、自分が住んでいる大阪にはひとつもアンテナを立てていなかったのだよなあ。
なんともったいない。

そんななか、東京で「ライター交流会」に参加して、東京のクライアントは地方のライターを探している、けれどつながりがないので出張費を出して東京のライターに依頼するという話を聞き、私どこ見てたんだ~大阪にいる強みを活かせてないやん~ってなった。
あれ聞けただけでも東京に行った甲斐があったなあ。

関西には、大阪には、ライターがいっぱいいる。
けれど、「私大阪に住んでいます!」「関西ならどこでも取材行けます!」ってどれだけの人がちゃんとアピールできているだろうか。

吉村さんはTwitterで、取材に行く場所をよくツイートされている。
おお、お忙しそうだなと思って見ていたのだけれど、そうやって発信することで、関西でいろいろ動いて取材しているライターだと印象付けられるのだという。

自分の強みを伝えるとき、「薬機法絡みの案件を多く受けていて」とか「英語のほうも」とか伝えちゃうのだけれど、まず自分が住んでいる場所が大事じゃないか。
どこで取材できるか、めっちゃ大事じゃあないか。

まわりが大阪に住んでいる人だらけなのでつい忘れちゃうけれど、見過ごしている強みまだまだあるような気がしてきたし、アピールが足りんなとここでもまた思ったのだった。

どうすればウェブで稼げる?

ウェブライターのなかには、かなり稼いでいる人もおられる。
吉村さんによると、そういう人の仕事はだいたい3つのパターンに分かれるという。

1.顔出しOK、キャラクターがハッキリした人が書く記事広告
2.B to B案件、読者が専門家(専門性の高い案件)
3.クラウドソーシングを介した、在宅でできる高額な案件

で、吉村さんはどうなのかとお聞きすると、「僕は4つめ。誰も来ないジャンルにいく」とのこと。
なんで4つめなのか(稼いでいる3つのパターンにあてはまらないのか)は、吉村さんの記事の書き方を聞けば納得する。

たとえばひとつの街の記事を書くのに、まず下見に行き、取材相手にインタビューをして写真撮って、次の日に風景を撮って、街の人と話して、また違う日にテープ起こして原稿書いてと、とにかく時間をかけておられる。

「◯時間で◯本書けた!」というのは、読み手には関係のないこと。
むしろ、そんな急ぎ足で書かないでよ、もっとじっくり時間をかけて書いたものを読みたいよって思うのではという話になり、う~ん確かにそうだとみんなうなずく。

「じっくりコトコト煮込んだスープのほうが食べたいですよね」

煮込んだスープ、私も大好きだー!

取材時・執筆時にこだわっていることは?

吉村さんの記事からにじみ出るような味……あれって何なんだろう、インタビューで引き出しているのか、執筆時に入れ込んでいるのか、どうなっているんだろうといつも思っていて。
取材時や執筆時に気を付けていること、こだわっていることについてお聞きしてみた。

吉村さんが取材をするときには、まず取材相手に緊張してもらうのだそう。

え? リラックスしてもらうのではなく、緊張させる??

レコーダーを2つ用意して、「録音させていただいていいですか?」と聞くという。
私はあえて取材相手を緊張させないように、「もし間違いがあるといけないので念のために」という前置きでサラッと伝えるのだけれど、吉村さんは真逆だった。

お店を取材することがないのでなるほど~と思って聞いたのだけれど、少人数で切り盛りしている場合などはとくに、仕事の片手間で取材を受けざるをえないことがある。
こちらの本気度を見せ、取材に集中してもらうために、記録に残すことをあえてハッキリ伝えておくと、オフレコの話も少なくなって取材がスムーズに進むのだという。

そして、写真は絶対に自分で撮る。
記事の文章を読む人もいれば、読まない人もいるので、読まない人でも写真を見れば内容を楽しめるような構成にするため。
構成を考えながら自分で撮った写真があっての記事なのだと。

そんな写真へのこだわりに加え、取材相手の口ぐせや言い回しはそのまま文章にしていることなど、いろんな気遣いについてお聞きして。
そうか、ひとつひとつの記事は吉村さん自身が材料や調理法を吟味し、ていねいに作ったとっておきの一皿みたいなものなんだ、すべて手作りなんだ、だから吉村さんならではの味が出ているんだと、ひとりで勝手にうんうんそうに違いないと納得した。

違っていたらすみません。

私の伝えたいことって、何だろう?

吉村さんはさまざまな記事を通して、人間の多様性を伝えていければと考えておられるという。

みんな同じじゃなくていいじゃない。
いろんな人がいていいじゃない。
一人で好きなことやってたっていいじゃない。

吉村さんの記事を読んでなんだかホッとするのは、そんなメッセージが込められているからかもしれないなと、ふと思う。

私はあれだなあ。
私の記事を通して、仕事を通して、誰かの気持ちがちょっとだけでもラクになったらいいなあと思う。
難しいけれど。できたらいいな。

さて、ライターお悩み相談室の後は、いままで相談室に参加した人やゲスト、お知らせを聞いてはじめて来た人などが集まっての忘年会。
15人くらいいるのに、みんなやっていることがバラバラで。
なんというおもしろい職業を選んだの私、こりゃ話が尽きないじゃないのって、自分で自分を褒めたくなった。

ライターお悩み相談室は、今後
・2月26日 陶芸作家&ライターのユキガオさん
・3月27日 『愛と家事』(創元社)を上梓された太田明日香さん
をゲストに招いて開催する予定とのこと(予定が変更される場合もあり)。

開催情報は、「京都暮らしの編集室」のブログ↓

で紹介されるので、チェックしてみてはいかがでしょうか。


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藤田幸恵

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