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【妻目線】地方移住に抵抗がなかった理由

移住に関する本や雑誌をめくっていると「反対する妻を説得するには」、「家族ときちんと話し合おう」などの記述を見かける。

我が家の地方移住のキーパーソンになったのは夫だ。具体的にいうと、夫の転職にわたしが仕事を辞めてついてきた形である。しかし事後承諾ではなく、移住の一年ほど前に夫からあらかじめ「地方の採用試験に応募しようと思っているが、どうか」という相談があった。相談を受けて、わたしはすぐその場で賛成した。なぜ熟考することなく即決できたのか。そこには様々な背景があったと、最近気が付いた。

この記事では、夫の転職に帯同しての地方移住に、妻であるわたしがなぜ全く抵抗感を持たなかったのかについて整理してみたい。

●まだ子供がいなかったから

子供が生まれた今となっては、夫婦ふたりの生活だった頃はいろいろな自由がきいていたな、と思う(その自由を十分活用できていたかについては疑問が残るが)。もし東京で子供が生まれていたら、関東に住んでいる両親のより手厚いサポートを受けていたはずだが、地方に行けばそれがなくなってしまうわけで、もっと抵抗感があったと思う。

●実家に対して複雑な思いがあったから

ほかの記事をお読みになったことがある方はご存じかもしれないが、幼い頃から両親とも多忙だったため、学校でのいじめなど辛いことがあっても我慢して周囲に迷惑をかけないのが良いことだと信じて育ってしまった。また、父はオムツを替えられないなど育児にあまり参加せず、子育ての負担が母に集中していたことから、成人後も母子密着状態が続いており、ずっと辛かった。そのため、地元から離れることによって今までとは全く違う価値観で新しい人生をスタートさせられるのではないかという期待があった。

●「独立後はどこに住んでもいい」と言われて育ったから

前項では実家に対するマイナスの思いを語ってしまったが、小さい頃から「就職したら一人暮らしをするように」、「日本国内でも国外でも、どこで就職しようと構わない、好きなところへ行っていい」と言われて育ったお陰で、自立心が身に付き、実家から遠く離れた生活を想像してもあまり不安にならなかった。このことは両親に感謝しなければならない。だから「地方移住する」と言っても両親が反対しないであろうことは予想できていた。

●単身移住ではなかったから

今では男女問わず単身で移住される方も少なくないようだが、その場合フットワークが軽くなる反面、自分をよく知ってくれている相談相手がいなかったり、体調を崩した時一人で対処しなければならなかったりと、不安も多いのではないだろうか。その点においては、夫婦二人での移住だったので、移住準備のために物を処分したり家を引き払ったりするなどしてもあまり心細くならなかったし、移住先で知人友人ができるまでの心理的支えになった。

●パートナーの夢を応援したかったから

夫は学生時代から夢に向けて勉強していたが、元々正規採用が少なかったため、非正規雇用の仕事をしながらチャンスを待っていた。転職の相談をされた時も、長距離通勤で疲弊して病気がちな夫の姿を見ていたため、移住によってその現状を打破できたら、という思いが強かった。

●旅行好きだったから

以前から旅行好きで、日本全国の地元とは少し違う様々な文化や自然を見て歩くのが好きだったことから、地方移住もその延長上にあるものと捉えることができた。また、実は学生時代の家族旅行で一度移住先に来たことがあり、土地勘があるとまでは言えないが全く未知の世界でなかったのも功を奏した。ちなみに夫の実家もわたしの実家も元々旅行好きで、特にわたしの父方の祖父母は車で四国遍路を2度結願している。

●移住先が地方の都市部だったから

現在住んでいるのは香川県の県庁所在地である高松市だ。高松市といってもその範囲は広く、車がないと不便な地域や離島も含むのでひとくくりにはできないが、引っ越しの時点で東京に暮らしていた頃とはあまり生活スタイルを変えないで暮らせる場所を見つけることができた。もし夫からの相談が「地方の山間部で農業を始めたいのだけど」とか「離島で自給自足の生活をしてみたいのだけど」とかだったら、二つ返事で移住に賛成することはなかったと思う。

●当時の会社に飽き飽きしていたから

前職では、先輩から受けた様々なハラスメントが引き金となってうつ病を発症し、足掛け9か月間休職していた。その後、ほぼ寛解して復職を果たしてはいたものの、ハラスメントをめぐる管理職や人事部、更には会社組織に対する不信感がつのっていた。妊娠中の後輩がハラスメントを受けていたという話しも聞いていたので、この会社では安心して子育てできないとも思うようになっていた。それなりに努力して就いた正社員の仕事ではあったが、休職復職をきっかけに、人間の尊厳を脅かされてまで続けたくはないと思うようになっていた。

以上が、地方移住に抵抗がなかった理由の一覧である。

最後に強調しておきたいのは、現在移住先でまあまあ順調に生活しているわたしのような人間でも、移住の根本的なきっかけを作った本人である夫には一言物申したいことばかりだし、話し合いたいのに話し合えていないことは沢山あるし、将来に向けての課題は山積みだということだ。

だから、もしこの記事を読んでくださった方の中に「パートナーが地方移住に積極的になってくれない」とお嘆きの方がいらして、そしてこの記事を読んで「地方移住に対してこんなに積極的な人もいるのに、なんでうちは…」と思われる方がいらしたら、どうかもっとパートナーと話しをしてみてほしい。そして、もし今後上手くいって地方移住したとしても、パートナーとの新生活をめぐるコミュニケーションは続くということ、いや、万難を排してでも続けなければならないということを、どうか忘れないでほしい。

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