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【日記】祝・初救急車

いや、祝ってことないですけどね。生まれて初めて救急車で運ばれましたよ。
昨日は岩手の里山に登ってきて、帰りに閉店間際のスーパー「肉のびっくり市」滑り込み、最終値引きの肉やら魚を、興奮した奥様方に跳ね飛ばされながら、国産牛バラ100g128円とかを手に入れ、満足して自宅へと車を走らせてる最中、どうも腰が痛い。いや、腹か?でも便意はない。吐き気もない。
自宅に戻り、お腹が空いたからかと思って少し食事をして、腹痛の薬を飲んだものの、一向に痛みは治らないどころか酷くなっていく。
録画した女芸人ナンバーワン決定戦の番組を見ながら、笑えないのはなぜかを真面目に考えても痛みから気を逸らせられない。
トイレに行っても上からも下からも出る様子がない。
ついに立っても座っても横になっても耐えられない痛みになり、119番に電話。
「火事でしょうか、救急でしょうか」
「きゅ、救急車お願いします」
声を出すのも辛く、喋ると息が上がる。
住所や名前、年齢、症状などをハァハァ、ウウッという声が混じりながらも絞り出すように答える。
「ではですね、症状があるのはご家族のどなたですか?」
その質問に「俺だよ!」と叫びたくなるのを抑え「わ、私です」と応え、待つこと5分で救急車が到着。
家の前まで車が入れないので、下の道路までの階段を自力で降りようと思ったら、痛くて動けない。
結局、4人の隊員に担架で運ばれて、初の救急車にパイルダーオン。
飛ばせ〜鉄拳〜ロケットパンチーと歌う余裕もなく、
「今日は何月何日ですかー?」
などと質問責めに会い、救急の診察台に移される頃には、じっとしてもいられず、ぐう〜、うぅ〜という声も抑えられない。
そういえばもう20年くらい前、嫁さんが耐えられない腹痛に襲われ、救急車を呼んでほしいと言われて119番にダイアルした。
救急車を待っている間、うずくまる嫁さんに大丈夫か?と声をかけると、
「大丈夫じゃないから救急車を呼んだんでしょ!」
と言われたのを思い出し、なぜかちょっと反省する。
看護師さんに痛み止めの坐薬を突っ込まれても、
「あふ〜ん」
などと冗談を飛ばす余裕もなく、血圧や心電図を測られながら、早く痛みが和らぐのをひたすら祈る。
少しして、看護師さんが冷静に質問する。
「さっきまでの痛みを10としたら、今はいくつですかー?」
「じゅ、10です」
痛みは全く治らず、相変わらずもんどり打つ。その様子を見ながら、看護師同士が話しだす。
「どうする?CTいけるかな?」
「まだ10分だからね、早いんじゃない?痛み止め効いてくるのは25分だから」
どうも痛みが治って動きが止まらないとCTがとれないらしい。
「じゃ、これ、もう入れちゃおうか。相乗効果あるし」
「そうだね」
いやいや、ちょっと待って、何を入れるの?なんて質問することなどできるわけもなく、ブスリと左腕に刺した針から何かを注入されていく。
痛みが治るのを待つ間も、看護師2人が何やら話をしている。
「旦那さん、帰るって」
「えー?なんで?」
「やることないからって」
「じゃ、奥さんひとりで?」
「そう」
「なにそれ」
先に運ばれた患者の話のようで、どういう状況か分からないけど、詳しく聞きたい。
何か夫婦間のただならぬ問題を感じるぞ。
「宿直の⚪︎⚪︎先生さ、降りて来ないのよ」
「なんで?」
「⚪︎⚪︎してるからって」
「そんなの理由になんないじゃない」
「あの人、いつもそうだよね」
え?もしかしてその人がボクの診察するの?大丈夫?っていうか、そういったこと、詳しく聞きたい。医師と看護師の軋轢的な?
そんなことを考えてたら痛みが治ってきて、CT、レントゲンで恥ずかしい写真を撮られた。さらに尿を取るように命じられトイレへ。全てのSMは病院に通ずって、漫画家の中川いさみが言ってたなぁとか考えながら、再びベッドに横になって待っていると、宿直らしい若い医師が入ってきて、
「左の腎臓からの尿管結石ですね」
と告げる。
お前か?すぐに降りて来なかったのは。なんて聞ける訳もなく、近くの泌尿器科に紹介状を書くと退出する後ろ姿に追い縋るように質問する。
「ずっとこの痛みが続くんですか?」
「まぁ、今回が一番痛いと思いますけど、痛みは出ると思います。痛み止め出しておきますから」
そう言って医師は退出して行った。
代わりに入ってきた看護師に、薬の件やら説明を受ける。
「今日は紹介状と薬を待ってもらって、あとは帰っていただいて大丈夫です」
帰るって、救急車で来ましたけど?
「そうですね、まぁ、お迎えに来ていただけるご家族がいらっしゃらないなら、タクシーですかね」
ですよね。
死に至る重病じゃないことにホッとしながら、紹介状と薬を待っていると、看護師が話し出す。
「しばらく痛いですよ」
え?
「私も去年、尿管結石になったんですけど、石が出る前も、出た後もしばらく痛かったですよ」
なに、その深刻な顔。脅してる?
「イクラとか魚卵系好きじゃないですか?」
確かに好きだけど、最近は年齢的なことを気にしてあまり食べないように、
「私ねー、白子が好きなんですよねー。美味しいじゃないですかー?」
ボクの話、聞いてる?
「そういうの食べるとテキメンなので気をつけてください」
そう送り出され、夜間窓口で会計を待つ。
出された金額は17,000円。びっくり。救急ってそんなに高いのね。
靴を持ってきてもらえなかったので、病院でもらった不織布のスリッパにヨレヨレのパジャマ用スウェットでタクシーに乗る。
でっぷりと太った運転手は愛想が悪く、髪が薄い割に、残った部分だけを伸ばしていて、それが整髪剤でテカテカと光り、余計に地肌が目立つ。
ああ、こういうのをハゲ散らかすというのか、と思っているうちに自宅下の道路に到着。
階段をゆっくり登って自宅の鍵を開け、真っ暗な玄関に入る。
ひとり暮らしの心細さを初めて感じる夜だった。

そういえば、尿管結石になりやすい食べ物って、魚卵以外になんだろうと思って調べたら、これが入ってました。

レバー。大好きなのに〜。
要はプリン体が悪いらしく、ということはビールもなんだろうなぁ。
プリン体ってこういうイメージがあったんだけど、

結構、ひどいことするじゃないの。

そして今日、紹介された泌尿器科に行くと、やはり尿管結石ということで薬をもらってきた。
しっかり水分を取って出しましょうとのこと。
出しましょうって、出る時痛くないんですか?
「尿管を通る時はそれほどじゃないですが、その前が痛いかもしれませんね。ちなみに、こういうのが出ます」
そう言って、小さなプラスチックケースに入った結石をカラカラと鳴らす医師が、どこか笑ってるように見えた。

そういうわけで、しばらくは爆弾を抱えたような生活。
痛いのヤダよー。

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