あなたの防災対策ダイジョーブ? - 情報収集ツールの観点から調べてみた
防災が大事なんていうのはもはや当たり前の話です。今年は関東大震災から100年、この地震大国ではいずれまた同じような災害がいつ起こるとも分かりません。いざ起こったときを踏まえて、それに対しての備えは不可欠。
この手の話でよく言われるのが「自助、共助、公助」。まずは自分で自分の守れるようにする、次に地域などのコミュニティで助け合うこと、それで対応できない部分を自治体や消防署、自衛隊などカバーするといった考え方です。
自助や共助のためには事前の備えが必要です。「事前の備え」というと何となく水や食料などの物資を準備することをイメージしがちではないでしょうか。もちろんこれらは重要ですが、今回取り上げたいのは情報の入手手段の部分。
今は多くの方がスマホでSNSを利用してますので、何らかの情報は手に入りますが、問題はその正確さ。災害時というのは皆さんが不安な状態であることから、様々な情報が錯綜します。2016年の熊本で起きた地震の際には「動物園からライオンが放たれた」というデマが拡散されて、多くの方の不安を煽ったのは有名な話。
他方で、SNSが災害発生時の安否確認や、最新の災害情報、避難場所の開設状況などに大きな役割を果たすことも事実。そこで重要なのは、自治体などの正確な情報を手に入れられるようにしておくということ。
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当然、自治体としてはこういった必要性を把握して各種サービスを提供しているわけですが、問題はその普及率。せっかく良いものを作っているにもかかわらず、区民に対して導入されている数があんまりにも低い状況。
今回の記事では、中央区が提供しているサービスの概要とその普及率をまず把握した上で、導入すべきものについてお知らせします。
どのようなサービスがある?
中央区LINE公式アカウント
まずは中央区の公式LINEアカウント。防災と関係があることを認識されている方は少ないかもしれませんが、実は地震などの災害情報や緊急警報などを受け取ることができます。
何といっても高齢者も含めて多くの方がすでに使っていて、画面の操作に慣れているというのが何よりの魅力。
ただ、イベントの告知など様々な情報発信にも使われていることから、あなたのほしい情報を選んであげる必要があります。設定画面からのポチポチで変更可能です。
具体的な操作方法は、中央区のWebサイトにあります。
中央区防災マップアプリ
次に、防災マップアプリ。より防災に特化した内容で、インターネット接続ができないオフライン状態でも使える防災マップや災害時の安否連絡、災害情報の通知などの機能があります。
災害発生時にはインターネットが繋がっているとは限りません。そのときにGPSで現在地を地図上に表示させることができるというのはけっこう重要なことです。
ちゅうおう安全・安心メール
3つめは、ちゅうおう安全・安心メール。これは電子メールの形式で災害情報などをお知らせするもの。こちらはLINEすら利用できない携帯電話(いわゆるガラケー)を使っている方でも受信できるというのが強み。
お知らせされる情報はLINEと同じく色々あります。また、災害情報だけでなく防犯情報や行方不明高齢者情報、熱中症情報などさまざま。こちらも受信する内容を選択できます。
緊急告知ラジオ
4つめが緊急告知ラジオ。緊急地震速報や弾道ミサイル情報などの国民保護情報に加えて、中央区が発信する防災情報を受信できます。
区民であれば2,000円の自己負担で購入可能。原価では2万くらいしているらしいです。昨年に新しい機種に切り替わっていて、古い機種を持っている人は負担金1000円で交換してくれます。
それぞれの普及率はどうなってる?
防災に関する情報収集の手段として、主要なものを4つ挙げてきました。これらはどれかがあれば良い、というものではありません。災害が起こったときにどのような傷害が起こるかは分からないためで、だからこそ複数の手段を用意しておくことが望ましいのです。
そこで問題になるのが普及率。冒頭に書いたとおり、明らかに利用されていないのです。この記事をご覧いただいたあなたも、きっと全てが入っているという人は少ないのでしょうか(正直なところ、わたしもこの記事を書くまで、安全・安心メールは知りませんでした)。
ということで、現状把握として現状の普及率をそれぞれ見てみます。
中央区LINE公式アカウント
まずは、LINE公式アカウント。11/2時点での友だち数は14,686。これは11月時点での人口に対する割合は8.3%。10%未満、つまり10人に対して1人以下という状況で、決して高い水準であるとは言えません。
ちなみに少し前に比較した23区での比較ではこんな感じ。
中央区はだいたい真ん中くらい。目黒区がブチ抜いていますが、これは新型コロナウイルスのワクチン接種予約をLINE経由したことにあるようです。
中央区防災マップアプリ
次は防災マップアプリ。これは行政評価に経年でのデータがあることから5年分のダウンロード数の推移が確認できます。その結果をグラフ化したのがこちら。
見ての通り、増えてはいます。増えてはいますが、爆発的に増えているというわけでもなく、むしろ伸びが鈍化しております。
最新データで人口に対する普及率を見てみると、わずか12.1%。
推移はこんな感じです。
ちゅうおう安全・安心メール
3つめはちゅうおう安全・安心メール。こちらの推移はこんな感じ。
2020年から2021年で増えるどころか減っているのはシステムの更新によるもの。元のサービスを引き継ぐことはできないので登録し直しになっているためとのことです。
先ほどと同じく人口に対しての普及率で見ると3.5%。少ないです。
推移はこんな感じです。
緊急告知ラジオ
最後に緊急告知ラジオ。こちらの推移はこんな感じ。
こちらについても問題は普及率。ラジオなので各家庭単位でのものなので世帯数に対しての普及率を見てみると19.9%。
推移はこんな感じです。YOKOBAI。
他の2つが人口に対して、こちらが世帯に対しての普及率であればこそですが、もっとも普及率は高いという結果に。
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これらを見てお分かりかと思いますが、まず言わなければならないことは全体的にメチャクチャ普及率が低い!!ということです。
緊急告知ラジオで20%弱。他は10%以下で、安全・安心メールに至っては3.5%という低さ。区民の皆さんにいざというときの災害関係の情報を伝える手段としては、あまりに心もとない数字。
実際にはSNSなども活用して情報収集されたりするのでしょうが、そのときにやはり気になるのはやはりデマ等が紛れ込む可能性があるということ。
SNSについては災害時に福岡市や熊本市の市長がうまく活用して正確な情報提供や物資提供の依頼などを行ったという好事例がありますが、残念ながら中央区の山本区長はそもそもX(Twitter)やInstagram、facebookなど一切運用されていません。
区民の皆さんに直接情報を伝える手段をしっかり整えること、そのために各種サービスの普及率を上昇させることは早急に取り組むべきと考えます。
何を登録しておけば良い?
ということで、この記事をご覧いただいた方にはぜひページを閉じる前に主要なものは登録していただきたいところ。災害発生時の状況は読めないのでとりあえず全部入れておくのが望ましいということではありますが、担当部署の方から話を伺った上でのわたしの勝手なオススメ度も追記しておきます。
中央区LINE公式アカウント[★★★]
まずはLINEです。「めんどくせえのでどれか1つ」ということであれば、これを選んでください。災害に関する情報が届きますし、ハザードマップなどもこちらから見ることができます。何より、日頃使い慣れているものが一番です。
登録はこちらから。なお、情報を絞らないといっぱい通知が来ます。
中央区防災マップアプリ[★★☆]
次に防災マップアプリ。これは災害発生直後など、インターネットが接続できない状態でも地図を見ることができるというのがウリ。LINEのように日々通知が来るものではないですが、それだけにいざというときに使えるかというところはやや不安ですがお守り代わりとして。
登録はこちらから。
ちゅうおう安全・安心メール[★★☆]
3つめは安全・安心メール。いわゆるガラケーの方はLINEや防災アプリを使えないので、こちらがお知らせを受け取るための手段として重要です。一方でスマホをお使いの方はあまりメール自体をもう使ってないと思われるので優先度はそれほどでもかと。
登録はこちらから。LINEと同じく、配信情報を絞らないといっぱいメールが届きます。
緊急告知ラジオ[★☆☆]
最後は緊急告知ラジオ。こちらは他の手段からするとオススメ度は低めにしました。災害情報として流れる情報は、野外に設置されている防災無線の内容と同じで、それが聞こえない/聞こえにくい方を補完するものという位置付けであるためです。
担当部署の方曰く、防災無線は区内全域に設置済で基本的には聞こえる状態にある。ただし、建物の位置関係や階層、遮音性によって聞こえにくい場合があり、そのような問い合わせがあるときにはラジオの設置を求めているとのこと。
防災無線及び緊急告知ラジオでは、定期的に試験放送を実施しています。わりと最近は在宅勤務から出勤への回帰が起こっているのであまり自宅におられることは少ないかもですが。勝手に電源が入って音が流れだすので最初はびっくりします。
最後に
今回は防災対策の中でも、情報提供の手段のための中央区のサービスと、その普及率についての課題について書いてきました。繰り返しになりますが、メチャクチャ低い!というのが現状でして、この普及率を上げることが
重要です。
この普及率を上げるという目的を考えたときには、「広報・普及啓発」という、効果があるのか分からない不確かなものにコストを費やすよりも、「登録する」という直接的に行動そのものにインセンティブをつけるのもひとつのやり方。マイナンバーカードでやったのと同じく、これらを登録・購入した人に対してたとえばハッピー買物券を進呈するなど。
もちろんこのやり方に抵抗のある方はあるでしょう。予算だってかかります。しかしながら、このやり方が上手くハマれば導入数は劇的に伸びることが期待できます。こちらはマイナンバーカードの交付率の推移。ポイント付与で交付数が増えたのはほぼ明らかでしょう。
速やかに次のステージ、つまり「マイナンバーカードを使って何を実現するか」ということに移るためにまずはなりふり構わず普及率を上げるというのは一つの考え方でしょう。
本題の災害時の情報提供については、LINEなのかメールなのか等どの手段でもって区民に情報を届けるのかという選択があった上ではありますが、区民の安全・安心に対して責任を持つという観点からするとこういったやり方も含め、考えていく必要があるのではないかと思います。
その他のオススメ
今回は中央区で提供しているサービスに閉じた話をしましたが、もちろんそれ以外にも入れておくと便利なアプリ/サービスはあります。この辺りは有名どころで信頼性もあるのでオススメです。
東京都防災アプリ
東京都が提供している防災アプリ。オフラインマップなど中央区の防災アプリと似てますが、東京都だけに全域が対象になっているのが違い。職場と自宅が分かれている場合にはこちらの方がオススメかも知れません。
Yahoo!防災速報アプリ
Yahoo!で提供している防災アプリ。あらかじめ住所を登録しておくと、その住所に沿った様々な災害情報が通知されます。
NHKニュース・防災アプリ
NHKが提供しているアプリ。Yahoo!のものと似てます。通常のニュースや天気の情報も見られるので、より日常使いを意識してそう。
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