征龍 Yuki-Kami

監督、殺陣師、物書き 。「退化による進化」をモットーに新たな企画、表現に挑戦しています…

征龍 Yuki-Kami

監督、殺陣師、物書き 。「退化による進化」をモットーに新たな企画、表現に挑戦しています。 【制作作品】 MV「Balloon flower」(作詞:YuRiKa 作曲:赤星勇二郎) 「護身術講座」(演:北村夏未) 【youtube】senidokuro1728

最近の記事

「救い」

 「神は善と悪を判別し、裁かれる。 善なる人間を救い、悪なる人間を裁く。」  最期の時。  神は跪く男の前に立ち、男の生前の罪を裁かれようとしていた。 「汝は自身の命の輝ける日々の中で、あまりに多くの人々の命を奪ってきた。よって、汝の魂を地の獄門へ送り、その罪を雪ぎ清めることとする。」  男は生前、戦争に従事していた。男は狙撃手としてたくさんの敵兵を殺した。  戦争に行く前、男は靴屋を営んでいた。仕事ぶりは

    • 情けは人の為ならず

       とあるおじいさんのお話。  おじいさんは、人には親切にするものだと信じていました。  それに、おじいさんは友達が欲しいと思っていました。  おじいさんは、いつも近所の人に明るい笑顔で話しかけていました。  近所の人達も、明るい笑顔で挨拶を返し、おじいさんと楽しく会話をしていました。  ある日、おじいさんは少年と出会いました。  その少年は、町一番の不良で、既に自分自身を見限っており、将来に何の望みも持っていませんでした。  しかし、おじいさんはその少年の吐き出す不安など

      • Dimension -ジン- 終

        「姫様!!」  刹那、奴ら三人の内の一人からそんな言葉が発せられたのは耳にしたが、俺がその言葉をちゃんと認識した時には既に、俺は姫様に抱き締められていた。一瞬何が起こったのかはわからなかった。華奢な体にも関わらず、俺の胴回りにしがみ付いた姫様はとても強い力で、俺は動きを止められていた。姫様は戦場で、しかも今まさに刀を振り降ろそうとしている俺の所に、危険も顧みず飛び込んできていた。その思わぬ出来事と温かさに思考が止まる。  「姫・・様・・・?」  俺の体から力が抜けるなり

        • Dimension -姫(弐)-

           三人がここに来てからのジンの様子は、どれも初めて見るものだ。今まで日常的にジンの腰に備わっていた刀は、ジンが醸し出す柔らかい雰囲気によって、どこかコスプレの小道具のようでいた。ジンの体躯に対してサイズに違和感はないものの、その用途に反して、存在感は薄かった。だけど、今はその鋭利さが存在感をしっかりと放ち、本来の威厳を取り戻している。そして、速さと力強さによって、今度は今までの、誰にでも敬意を払って優しかったジンの姿が影を潜めている。ジンは刀を巧みに使いこなし、圧倒的な強さで

          Dimension -セイ-

          「言ってくれるじゃん!偉そうに!」  奴の言葉を聞くやぼそりと一言つぶやくと、ショウが再び駆け出す。そして、奴も再び向かってくる。互いに打ち込み、鍔迫り合いになる。全力を込めて打ち込んでる状態のショウに対して、奴にはまだ余裕があるように見える。 「あんまり調子に乗ってんなよ、この野郎!!」  力づくで奴を撥ね退けると、連撃を打ち込むショウ。奴はショウの目をしっかりと見ながらすべての攻撃を捌いていく。徐々に奴はショウの動きを上回っていき、ショウが打ち込んだ左袈裟斬りを柳で

          Dimension -セイ-

          Dimension -リュウ-

           初めて見る光景だった。あのショウが防戦一方だなんて。それもギリギリ対処出来てる様子で表情にも余裕が全くない。相手の方はただ我武者羅に打っているわけじゃない。確実に狙って、的確な攻撃を仕掛けている。洗練された動きで、ショウに形勢を変えさせる暇を与えない。  驚いてるのも束の間、セイが二人の方へ駆け出す背を見て、俺もすぐに我に返ってセイの後を追った。俺達が割って入るも、奴はわずかな動揺もせず、すぐに俺とセイの対処に転じる。二人がかりの攻撃にもかかわらず、奴は互角に渡り合うだけで

          Dimension -リュウ-

          Dimension -ショウ-

           飽きもせずに次から次へと、奴らはゾロゾロと現れた。別にさして大変だったわけじゃないけど、ここまでくるとさすがにうんざりしてくる。そろそろ諦めて姫を差し出してくれないかなぁ。そんなことがぼんやり頭に浮かんでいた。  「たった三人でよくここまで攻め入って来れたな。敵ながらあっぱれ、褒めてやろう。しかし、ここからはそうはいかんぞ。」  大将かな?相手の一団の中で、先頭にいる奴が不敵に笑いながらそう言った。防衛線を二段も突破されて、本丸の手前まで進攻されておいて、どこからそんな

          Dimension -ショウ-

          Dimension -姫(壱)-

           窓から見える青い空。その真下の広い広い庭園の木々や、そこで囀り合う小鳥達を眺めている。風が柔らかい。おいしい果物と、香りのよいお茶を口にして、「こんなに穏やかで癒される時間を過ごすのは何年ぶりだろう?」なんてことをぼんやりと考えている。  まるで夢のような空間だけど、皮膚感覚を初めとする五感は全てがリアル。ふと目の前に上げた手を見ると、子供の頃から見慣れた自分の手がそこにある。だけど、その腕が纏っている衣は全く見慣れない。東洋の物とも西洋の物ともつかないが、それでいてどちら

          Dimension -姫(壱)-

          Dimension -序章-

          風の音しかしないだだっ広い荒野に、たった三人の戦士が歩いている。 スラリとした長身に、端正な顔立ち、色鮮やかな衣を纏い、各々刀一本を携えて進んでいく。  徐々に風の音に、重く深い地響きの音が混ざっていく。その音はどんどんと大きくなって、実態も明らかになっていく。地平線の向こうから、三人に向かってくるおよそ四万五千の軍勢。それを前にしても、三人の足取りは変わることはなく、落ち着いた様子で進んでいく。    「止まれぇ!!ここより先は我が国の領土である!入国に関わる手形、証   

          Dimension -序章-

          ポージング・動作ポイント講習会

          写真や動画を撮る際に姿勢や角度は重要ポイントではないでしょうか? アクション系のキャラクターの際には、特に構え方や振る舞い方で見映えが変わりますよね。 実は、未経験の方であっても動きの基礎やポイントを押さえれば、誰でもカッコいい姿を演じることが可能です! この度、写真を撮る際の所作のポイントや動き方のコツをお伝えする講習会を開催しようと思っております。 御興味のある方は御気軽に御連絡ください。 御参加の方は、やってみたいポーズの画像や動画をお持ち頂いても構いません!

          ポージング・動作ポイント講習会

          因縁

           灯台下暗し。繁華街からほんのちょっと離れた所が一番暗い。  そんな人気の少ない雑居ビル群の脇に一人で黙って座っている男。一見静かな佇まいではあるが、その実、一点を見つめ、試合前のファイターの様に自身の気を練り上げている。ふと腕時計に目をやって時間を確認すると、より一層気合の入った瞳を以って立ち上がり、男は人混みの中へ歩き出す。  人気のない高架下に到着する男。夜の闇が包む中、男は練り上げた気を充填させたまま、「ある人」を待つ。ほどなくして、男の待つ所へ、凛とした雰囲気を纏っ

          ボクサー

          幕が開く。スポットライトが俺に当たり、一瞬目の前が真っ白になる。たくさんの観客が俺の方を見て、拍手をし、応援の言葉を歓声を、浴びせてくれる。いつもはここで俺のボルテージは一気に上がり、ハイになる。  でも、今日は違う。  リングに繋がる一本道。こんなにも歩きたくないと思った日はなかった。 「もっと自分を上げていけ、龍二!負けちまうぞ!」  トレーナーが後ろから俺に声をかける。俺はミドル級チャンピオン。三度の防衛を果たしている。その俺が簡単に負けるわけにはいかない。

          目覚めると、タモツの目の前には椅子に縛り付けられた今日子がいた。  「今日子!」  駈け出そうとするが体が言うことを聞かない。ふと自分の体に視線を向けると、タモツ自身も椅子に縛り付けられている。  向かい合って座らされている二人。  今日子は怯え切った目でタモツを見る。  「タモツ・・・」  「今日子、大丈夫か!?なんでこんな事に?」  「わからない・・。仕事が終わって、職場を出たら突然意識が無くなって・・・」  すると突然、今日子の後ろの扉が開く。  「フ

          KY

          昼飯終わり。 アキラが戻るといつものようにオフィスは盛り上がっていた。 盛り上がりの中心には、これもいつものように今井先輩がいた。 とてもおしゃべりが大好きで、ひょうきんな今井先輩。 いつも今井先輩のトークが始まると、空気はすべて先輩のものになっている感じだった。 今井先輩がいるおかげで、オフィスの雰囲気は和やかな雰囲気になっているのかもしれない。 しかし、アキラはどうしても今井先輩の作り出す空気感、冗談のノリが苦手だった。 みんなは先輩のオンステージには笑って

          ヒーロー

          【二月三日未明、岐阜県美濃市の山奥に突如不明物が出現。】 【翌四日、日本政府は自衛隊を使って不明物の調査を開始するも、同日午後三時不明物からの謎の光線により、調査団は撤退を余儀なくされる。】 【同日午後四時、不明物から半径百㎞圏内に結界が発生。結界内の防衛システムが麻痺。】 【同刻、日本政府に不明電波を用いて件の不明物より入電。「テネブリス」と名乗る。】 【同日午後八時、日本政府は「テネブリス」を第一級警戒対象と認定。】 【同刻、内閣総理大臣「テネブリス」への防衛行

          おとぎ話

          超古典的な昔々の、これまた超古典的なある所。 とても綺麗で優しく、少しお転婆なお姫様がおりました。お姫様は、臣に愛され、民に愛され、その国はとても理想的で平和な国でした。 しかし、ある日その国は魔女の仕業により、とても大変な苦難に見舞われました。 苦しむ民の為に、お姫様は自ら立ち上がり、軍隊と共に城を飛び出し、大冒険の果てに魔女を倒し、国に再び平穏をもたらしました。 また、その大冒険の最中に素敵な男性に出会い、協力して魔女を倒したことから、城に戻った後は、その男性を一