ヨキ、コト、キクと99の秘密
古事記は言葉遊び満載の「なぞなぞ本」に仕立てられている。
そしてそれを支えているのが、莫大な知識である。
その知識を身に付けた理由は「風」にあった。
立春から88日を八十八夜という。
立春、節分は、鬼を追い払う。
立春が起点となって吹く風は春一番。強い南風により海難が発生する。
鬼
鬼はキ、おに、と読む。
鬼は鬼の形の象形で人が跪く姿とされる。
甲骨文字では、示、風、雨などに跪くように見える。
自然に耳を傾けている様子ではなかろうか。
鬼は厶(し)に従い、陰気を示す。
厶は耜(すき)の象形、わたくしとも読む。
自ら営む者を私といい、私に背くこれを公と言うとある。
つまり鬼は公に従わず、自分の力で生きている人といえるだろう。
国家が形成される時には非常に厄介な存在と認識された。それ故、鬼と呼ばれた。
反面この鬼は、自然を熟知した人であった。
長野県戸隠に伝わる鬼女伝説、紅葉伝説ともいう。
近くには鬼無里村があり同様に鬼伝説をもつ。
鬼を出したのには訳がある。
新潟県糸魚川の姫川は翡翠の産地だが、古来より塩の道であり、中でも葛葉峠は最難所であった。
葛の産地である事に由来する峠である。
葛籠(つづら)を背負って、曲がりくねった峠を歩いていたのだろう。
ジグザグの道は九十九(つづら)折りといわれる。
籠目がジグザグだから九十九折と葛籠が引っかけられたというが、もっと深い理由があると思う。
この言葉は九頭龍を隠している。
葛は九頭、籠は龍。
九頭龍。
戸隠山の九頭竜権現、白山権現の化身の九頭竜王(11面観音)。
白山に祀られる菊理比咩。
十は九進法で表せば、11。11面観音の11はこの為。
菊理比咩がククリ(括り)ヒメと呼ばれる由縁である。
さらに観音は、音ー自然の音(風)を観察する事を意味していると思う。
風は自然と人間の生活との媒介者であり、その生活様式を規定するもの、風土となる。
戸隠が隠している九頭龍と鬼。
鬼はさらに紅葉ー秋を隠している。
秋という漢字は会意文字であるが、禾と亀と火に従う。この亀は害虫の形でそれを火で焼く形という。
実りの秋と言われるが、豊凶は生死に関わるため最も重要な時期とされる。
秋という概念が成立した時、恐らく秋の夜空に蠍座アンタレスが輝いていた。
アンタレスは、火星に対抗するものといわれ、その赤い光を火に見立てたのではないだろうか。
亀は天空を象徴している。古くは亀の甲羅は卜占に用いられていた。亀はキ、キュウ、かめと読む。
亀もまた、九の仲間であり、竜宮城の使いである。
禾は、イネの形、軍門の形とされ、元々は別の形象だったが後に同形とされた。
軍門は、標木に袖木をつけた形とされる。
軍門とは何であろうか。
アンタレスが秋を象徴するのは16000年前頃から。
白鳥座に北極星があった時代の話である。
軍門は、白鳥座の十字を指す。
白鳥の首を延長すればアンタレスに導かれる。
この季節が風との戦いの時期にあたった。
海を移動する人々にとって風は移動をスムーズにもし、逆に命取りにもなった。
常に風を読む事が強いられた。
鳥は風の象徴でもある。
この十字に、鳥の姿を当てるのは必然だった。
軍門が稲に同一化していくのは、時代の流れである。
農耕社会へと変化する中で、白鳥座の意味合いが変わった。そして十字の意味も出港から農耕へと変化した。
ヨキ、コト、キクは斧、琴、菊とされ、斧は王の権威の象徴とされる。
菊は秋の花で、開花は日照時間と関係する。
夜の時間が長くなるのが目安となる。
秋の訪れを教えてくれる菊。
風もまた季節を教えてくれる。
琴は、こと座を表す。
今は夏の星座のように思われているが、
こと座ベガは14000年前の北極星。
その頃、蠍座アンタレスは深まる秋を教えてくれていた。
王は森羅万象から秋の訪れを感じ、知らせる存在であった。
戸隠からほど近い長野県安曇野大町。
安曇野は海人(あま、天、阿麻)族と深い関係にある。
海人族の王=鬼女=伊邪那美=ベガ
ベガの歴史は闇に沈み、蠍座アンタレスは農耕の季節を告げる神農として姿を変え、釣り針から耜に象形を変えた。
万という漢字は蠍とも訓される。
海人達のシンボルであった蠍座。
万葉集は、よろずの言の葉ではなく
蠍の、海人(天)族の言の葉であろう
古事記・万葉集の作者は、海人族の王であり、風読みの巫女であったと確信している。
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