南方朱雀考

南方を司る霊獣は朱雀だが、鳳で表され、ト文では辛形の冠飾をつけた字形である。

辛形の冠飾は霊力を象徴するが、鳳の霊力とは何であろう。

鳳はト辞に風神とするその鳥の形が用いられる。
鳥は風を象徴していた。
だが、風を司るのは西方白虎、朱雀は火である。
これは東西南北の位置が全体に北上した為であろう。

緯度30度以下の地帯で吹く風を貿易風(偏東風)
緯度35から65度地帯で吹く風は偏西風。
北緯30度は長江付近になるが、概念成立時には北に相当。
つまり、北緯0から30度において、風は貿易風の支配下にある。だとすれば風は龍の支配下になる。

風の字が作られた時、竜形の神に従っていた為、虫という字が入った。
そして更に時代が降り、中緯度帯に文化の中心が移動し、風は虎(西)に従い、雲は龍(東)に従うと言われるようになった。

とすれば鳳の意味する風は何か。
鳳は「おおとり」と訓されるが、大風を起こすとされる。台風の発生と無関係ではないだろう。
台風は熱帯地方の北緯5から20度の海上で発生する。
これを踏まえると鳳は、ベトナム〜フィリピン付近に位置付けられる。
この自然事象と結びつけた鳳とは何か。
巨大な舟だと考える。大きな舟を作る技術を持ち航海していた人々がいた。
船底は赤く塗られ、カキやフジツボなどの水生生物の付着を防いだ。
船の底に水生生物が付着すると重量が増し、また水流の抵抗も増加するため航行に大きなエネルギーロスをもたらしスピードが落ちるためである。

概念成立時の南はベトナム〜フィリピンそこには大型の船を操る人々がいた。

時代と共に南とされたのが中国湖南省、辰砂(水銀)の産出地である。辰砂は朱色の原料。ここで鳳は朱雀に変化した。そして火である。

水銀と火に関連するのが朱雀の本質と考える。冶金技術だろうか。

このように、元々風を司った鳳が時代と共に火を司る朱雀となったのではないだろうか。

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