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熊から読み解く古代史

熊(ユウ、くま)と言う漢字は、能と火から構成される。
しかし字の構造の意味はわかっていない。
説文には
「獣なり。豕(し、ブタ)に似て山居し、冬は蟄す。能に従い、炎の省声」とある。

熊の初形は嬴(ヤドカリのような水虫)に似ている。
秦の姓の嬴姓は熊に作ることもある。
両者の関係を思わせる説話がある。
「昔、鯀は帝の命に違う。之を羽山に殺す。化して黄熊となり、もって羽淵に入る」とあり、魚が熊になった。
鯀の子である禹も塗山氏と婚したが、化して熊となった姿を見て、塗山氏は恐れて石となったと言う。

禹は魚に描かれる事が多いが、熊の側面もあるようだ。
鯀の子孫は東夷となったと言う。
また、鯀を殺したのは南の炎の神祝融とされる。

能の金文の字形は、水虫の形のように思われる。
能、熊、贏、嬴の諸字の関連は明らかでない。

だがヤドカリが海の水虫を指し、能は陸の水虫を指すと考えられないだろうか。陸の水虫は、湖やオアシスを移動する人々。つまり遊牧民である。

熊は炎と結びつけられるが、鯀を殺した祝融は南の炎の神。つまり、熊の炎は南ではないようだ。
ここで説文を思い出して欲しい。

熊は豕(ブタ)に似て山居する獣。冬はこもっている。能に従う。
ブタに似て、が猪と関わる部族ー中国東北部に住む少数民族の挹婁(古くは粛慎ーウラジオストク辺り)を想起させる。

だいぶん後の記録であるが、晋書四夷伝によれば、
人々は奥深い山や谷に住んでいる。その路は険阻であり、車馬は通わない。夏の間は樹の上に住み、冬の間は地下の穴の中で生活する。多くの豬(ブタ)を飼っており、その肉を食べ、その皮を衣とする。毛を紡いで布とする。
とある。さらに、
その国の東北には石を産出する山があり、その石の鋭利さは鉄をも凌ぐほどである。
この石は恐らく黒曜石であろう。
しかし黒曜石は粛慎付近で産出されない。
粛慎の東北は北海道。
北海道の十勝は黒曜石の産地として非常に有名である。
つまり、粛慎は北海道と深く結び付いていた。

それが炎と結びつくのは何故か。

挹婁の生活習慣に、尿で顔や手を洗う事がある。
医学的にも尿素は皮膚乾燥予防として理にはかなっている。この尿を溜める場所は家の中心にある。
ここから得られる資源がある。
硝石ー火薬の材料である。

北西ヨーロッパでは糞尿が浸透した家畜小屋の土壁から硝石を得ていたそうだ。

中国で火薬が発明されたのは紀元6世紀頃ではあるが、極秘裏に製造されていてもおかしくはない。

火薬に必要なのは硝石と硫黄と炭粉。この硫黄は火山列島日本に多い。

火薬が日本に伝来したのは1543年、鉄砲と共にと言われるが、忍者はそれ以前から火薬の調合を行っていたと伝えられている。忍者は「焙烙玉」と呼ばれている火薬を仕込んだ手りゅう弾を、武器として用いていたという。
忍者の火薬は植物の「ヨモギ」を用いたそうだ。
発酵の原理である。

中国地方の口伝では本願寺門徒の間で蓬(ヨモギ)の根に尿をかけたものを一定の温度で保存することにより、ヨモギ特有の根球細菌のはたらきで硝酸が生成されることを発見したという。馬の尿とヨモギでそれは量産(当時にしては)された。これらは当時の軍事機密であったので厳重に守秘されて一般に広まることはなかったが、本願寺派に供給された火薬の主体であったようである。

この話は1500年代の話ではあるが、秘境の山奥は情報漏洩を防ぎ、軍事機密を扱うのに最適な場所。
もう一つ同じ条件の場所は離島である。
島は出入りの管理がしやすい。
離島の山奥は最強の場所となる。
日本のこのような条件が、大陸側にとって魅力になる。

遥か古代に作られた火薬は、武器ではなく、鉱山で使用された。雷神は、火薬の爆発音とも関わると思う。

日本の黒曜石の鉱山跡は二万年前に遡る事ができる。
また、その黒曜石は日本中で流通していた。さらにウラジオストクにまで行っていた。

黒曜石の採掘に火薬が必要だった訳では無いと思う。鉱山掘削技術と流通経路が二万年前から存在していた、と言う事が重要。

その後、作られた火薬で山奥から鉱物資源を採掘し、世界中に流通させていた。

火薬ー鉱山ー流通この一連のルートを考えだし、巨万の富を得た人々がいた。
それは、誰か。

火薬の原料の硝石は西アジアや中国内陸部など乾燥地帯では地表に存在する。
一方、日本のような湿潤多雨な地域では天然では得がたく、おもに人畜の糞尿を原料にして、バクテリアによる酸化による生成を人工的に導く生産方法が工夫された。

硝石が簡単に手に入る場所は、砂漠地帯か家畜小屋なのである。

鯀に話を戻す。中国伝説の夏王朝。
鯀は治水に失敗し殺され、子供の禹が治水を成功させる。
国家の治水工事にどれだけの予算が必要になるか。
インフラ整備には莫大な費用がかかる。
稲作により、食糧の確保、人口増が可能になった。だが、それだけで巨大な河の整備が可能になるのか。

熊と魚、砂漠の遊牧民と海の民が手を組む。火薬、鉱山、流通販売経路は確保できる。
だがもう一つ足りないモノがある。
禹が象徴する龍。
数学(それから発生する土木技術、天文学)
川の治水は農業のためだけでなく、鉱山資源を流通させる為にも必要な事業であったのだ。

砂漠と火薬。炎の不動明王。密教。
密教は錬金術そのものと言う仮説もあるようだ。
だがシルクロード誕生より古くから流通経路は存在していた。

熊の起源は、火薬技術を持った遊牧民なのではないだろうか。

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