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赤膚焼を通して感じるゆる〜い奈良| #うつたび 奈良編

奈良といえば日本最古の都。伝統工芸が豊富な一方、うつわのイメージはどちらかというと希薄かなと思います。陶芸はやはり土が取れる場所で発展してきた歴史がありますし、木工もやはり山が近くにある地域。盆地の奈良はそうした”素材”という意味で縁が薄いのかしら…。なんて思っていましたが、そんな奈良にも「赤膚焼 (あかはだやき) 」という伝統工芸としてのうつわがあることを知りました!

「香柏窯」さんのギャラリー

奈良では7軒を残すという、そんな赤膚焼の窯元のひとつ「香柏窯」さんのギャラリーを訪問しました。

「香柏窯」さんの作品を眺めるおかもとさん

昨年大日本市でお世話になり、今年本店オープン一周年を迎える中川政七商店のおかもとさんにご紹介いただきお話を伺いました。

赤膚焼 って?

比較的、原料の土や釉薬、絵付けなどそれぞれに何かしら特色があるのが産地の工芸だと思いますが、奈良の赤膚焼は説明が非常に難しい。歴史が古い奈良らしいといえば奈良らしいのですが、由来も諸説あって定まらず。古くは古代まで遡るそうなのでもはや今の赤膚焼とどれだけ共通点があるのか、、、。他の産地に比べて時間の流れが壮大すぎて衝撃です。

「香柏窯」の尾西さんいわく、今に通じる赤膚焼の歴史でエポックメイキングなのは江戸末期の名工奥田木白という存在だそうです。「諸国模物處」といって全国各地の有名な産地のうつわのそっくりさんを作るのに長けていたそうで、想像するに「はやってるアレ全部ここで作れます!」というのがウリだったということでしょうか。

また奈良は土の層が薄いそうで、土の種類も多様だそう。なんともとらえどころがない。。。

なんでも作れるのが赤膚焼だからこそ、赤膚焼の特徴って?と言われるとなかなか難しい。それが赤膚焼。

逆にいうと職人さんはあれもこれも多種多様な技術を会得し、多様な素材に慣れないといけないのでとても大変そうですね。

奈良絵モチーフが素朴でポップ

そんな中でも一際目を引いたのがこの奈良絵をモチーフにしたシリーズです。奈良絵とは、室町末期から江戸初期にかけて絵本・絵巻物の挿絵として描かれた絵柄のこと。なんとも素朴でほんわかしたタッチが心を掴まれます。

柔軟な歴史だからこそ、モチーフに特徴あり

こちらは南都七大寺の瓦をモチーフにした小皿。素材そのものに際立った特性がないことや、地方のうつわをそっくりコピーできるだけの手腕があったという柔軟さが赤膚焼のらしさだとするならば、こうしたモチーフに”らしさ”を詰め込むというのはとても自然なことですね。

これは奈良の伝統工芸奈良漆とコラボの作品。漆は一般的には薄く仕上げるので陶芸との組み合わせでは剥がれやすく難しいそうですが、奈良漆は比較的厚みのある仕上げなのでこのように綺麗に仕上がるそう。豪華で美しいけれどどこかプリミティブで素朴な雰囲気も漂います。

実用品としてのうつわ、茶道具としてのうつわ

実用品としてのうつわはもちろん、茶道具もたくさん作られているそうです。こんなふうに鹿のツノを使ったお道具なんて奈良らしいですね。貴重なものをたくさん見せていただきました。

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作品ひとつひとつも素敵でしたが、お茶の嗜みが当たり前の文化がなんとも奈良らしいなと感じました。東京に住んでてお茶の作法ができることってけして当たり前ではないと思うんですが、奈良は若い人のショップでもお茶の世界で使うようなものを現代的にアップデートして取り入れていたり、ごく自然に和菓子のお店があったり、地域での馴染み方が全然違う。もちろん奈良に住む方でも「お茶なんて全然知らないわ〜」という方もたくさんいる(多数派かもしれない)でしょうけれど、東京や他の産地に比べたら圧倒的に身近な気がしました。今回うつわの個性が云々の前に文化レベルの差が一番カルチャーショックだったかもしれません。

ところで私、お茶の嗜みなんて皆無なものでお茶道具を拝見する際、畳の上での所作がめちゃくちゃで恥ずかしかったです(笑)もういい年なのに。こういうところで恥をかかないように最低限してておかないとと焦りました。

うつわも、例えば美濃のように日用品としてのうつわをたくさん作っている産地と、唐津など茶道具としての歴史が深い産地とでは全く違いますもんね。奈良は後者の匂いを感じます。

実はおいしい奈良の日本酒

「奈良は日本酒も実は有名なんですよ」と使いやすさに定評ありの斬新なとっくりも見せていただきました。注ぎやすく洗いやすくて使いやすそう。格の高い工芸品、茶道具も作りながらデイリー使いのうつわもアイデアマンな「香柏窯」さん素敵です。

それにしても奈良ってこういう「実は」が多くて、その控えめさというか無欲さにキュンときます。関西圏でもブランドな京都や商売っけ満載の大阪に比べてアピールするパワーが控えめというか、どこかぽ〜っとのんびりしてるというか。

鹿時間で動く奈良ののんびり感

赤膚焼を通して奈良のカルチャーを垣間見た #うつたび でした。
次回、奈良のニューカマー『中川政七商店本店』を巡ります。おたのしみに。

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