まだ五線使ってるの?新しいノーテーション

同時代の作曲家の多くが使っている楽譜の形体を、以下に分類してみましょう。

五線譜
最もコンベンショナルなノーテーションではありますが、ピッチを指定したり細かいリズムを書くのにとても優れています。
図形楽譜
グラフィックノーテーション。1950年代後半から多くの作曲家によって使用されてきました(John Cage、Sylvano Bussotti、Krzysztof Penderecki、日本だと一柳慧、武満徹等など)。今現在も、図形楽譜を愛する作曲家が多くいます。次項で細かく説明していきます。美しい図形楽譜のリンクはこちら

スペースノーテーション
拍子や持続や休符の明確な長さに対する指示がなく、楽譜上の、見た目のスペースによって持続や長さを表現するもの。書かれた音を弾くタイミングは、その音が書かれた場所を全体のスペースから推し量って決めます。明確なタイミングを指示したくない場合や、奏者同士の間合いなどを重視する場合、スペースノーテーションで書くことがあります。(「スペースノーテーション」や「スペーシャル・ノーテーション(spatial notation)」と呼ばれる)

タブラチュア譜
ギターではお馴染みですね。結果として鳴る音ではなく、それを鳴らすための身体動作を記したものです。。

その他、多種多様な様式、ノーテーションへの理念や信念があります。独自に記号を発明する作曲家、写真を入れたり、長い説明文が入ったり、カラーだったり、楽譜じゃなくてプロジェクションだったり。もう分類すること自体に意味がないくらい、沢山の可能性がありますよね。さて、ここからは講師わたなべの個人的なノーテーションへの考えを書いていきます。
そもそも私たちが慣れ親しんでいる所謂五線譜は、どういった経緯で発展してきたのでしょうか。

中世では、ご存じの通りネウマ譜を用いた楽譜が使われていました。ネウマ譜の横に美しい絵が挿入されていたりしますよね。あれ、今現在の作曲家がやっている楽譜の扱いに結構似てたりしませんか、楽譜に画像や写真入れたりする、あれ。

脱線しました。

実は私たちがよく見る五線譜は、活版技術の発展によって段々と形を変えながら、今の形に定着しました。活版っていうのは、今はなじみがないんですが、文字をハンコのように押す方法です。それまでは手書きだった訳ですから、割と色んな形の楽譜があったわけですけど、ハンコの形が決まっているので、それ以外のものは出来ない。上下反対にしても使えるっていう意味で、符頭の形や大きさ、棒の位置なんかも定まっていったんじゃないかと思います。要は活版技術によって、大量印刷の方向に向かっていった。大量印刷に伴って、情報速度が上がり、それによって産業革命が進行したことを考えると、その背景には資本主義社会の流れが大きく関係しているんじゃないかと思うんです。何も線は5じゃなくても良かった、13の時代もあったんですから。ただ利便性が良かったのは、この五線なんですよね、素早く読めて、システム化しやすい=大量生産。まさに資本主義!

今はFinaleやSibeliusなんていうノーテーションソフトがありますから、更に楽譜は画一化しています。世界中で誰でもわかる、誰でも読める!

要は、この五線は画期的で使い勝手は良いけれど、非常に凡庸なノーテーションの方法だということが言えると思います。黒や白い丸に棒を上につけたり、下につけたりすることや、私たちが散々悩んで使っているこの形には、実は音楽的な理由より先に印刷上の理由があったと。

ということに立ち返って、もう一度楽譜の書き方について考えていきたいと思います。本当にそこに音楽的理由があるのかどうか、私たちは、1つ1つの音に対して、どうそれを表すべきか、疑問を持って自問自答していく必要があります。

ここまでが私のノーテーションに関するベーシックなステートメントです。

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