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恋の映画のエッセイ|ナビィの恋

急に空が暗くなって、ゴロゴロと不穏な音が。
慌てて洗濯物を取り込みました。
夏のお天気は気まぐれですね。

今日は、映画のエッセイを。
今はクローズしてしまった某映像配信サービスのWEBサイトに寄稿したものです。2015年12月に書いたもの。

恋の映画、とタイトルには書きましたが、私がセレクトした理由は、沖縄が舞台だから!
ナビィなんて聞くと、よその国の方を思い浮かべてしまいますが、主人公は沖縄のおばあちゃん。
ナビィは方言で、鍋のこと。お鍋ちゃん、というわけ。
当時はナベとかカマドとか、そういうお名前も多かったそうです。

ナビィを演じる平とみさんは、「ちゅらさん」のおばあ役の方ですが、この映画で注目されて「ちゅらさん」に抜擢されたそう。
おじいや、本家の長老や夫婦役は、沖縄民謡の有名な歌い手さんばかり。
本家の嫁を演じた大城美佐子さんが営む民謡スナックに行ったことがありますが、沖縄民謡を聞いてお酒を飲む場所と思い、二軒目で行ったら、お料理がどんどん出てきて、しかも美佐子さんご自身が取り分けてくれたりと、まるでおうちにお邪魔したような(笑)
そういうところも沖縄っぽくて、好きです。

とてもほっこりするけれど、それだけでは終わらないこの映画。
巣ごもりアゲインで、旅に行けない今、恋しい沖縄を思い浮かべて、また観ようかな。

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『ナビィの恋』(なびぃのこい)は1999年12月4日公開の中江裕司監督が製作した日本映画。沖縄民謡の大御所を多数起用し、音楽と笑いを基調にしたミュージカル的作品。地元沖縄県でも公開され(1999年には劇場ではなく那覇市内のリウボウホールで上映)、人気を集めた。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』


最近、お疲れ気味のあなたにおすすめ。気持ちがまあるくなる映画。

 残業続き、締切に追われる毎日……ああ、どこかに行きたい!と思う時、思い浮かぶのはどこですか?
 私の場合、一も二もなく、沖縄です!青い海に青い空、いえ、実は海に入ることはほとんどなくて、実際にはどんより曇りの日も多かったりするのですが、ただただ「沖縄のお父さん、お母さん」と慕う方々に会いたい、お母さんの琉球料理を食べたい、あの空気の中に身を置きたい、それだけで飛んでいってしまうのです。

 そんな沖縄Loversにとってたまらないのが、粟国島を舞台にした「ナビィの恋」。
 80歳を前に、将来を誓い合ったもののまわりの反対で引き裂かれた初恋の相手と再会するナビィおばあ。60年連れ添ったおじいは、ナビィの恋と別れも知った上で「憧れのきれいなお姉さん」のお婿さんになった、という設定。ブラジル帰りの初恋の相手の登場に、さて、ナビィはどうする?おじいはどうなる?というお話です。
 
 白いスーツをぱりっと着こなした初恋の彼も素敵なのですが、それを上回る味わいを醸し出しているのが、おじい。三線が得意という役どころで、有名な三線奏者の登川誠仁さんが演じているのですが、演技を感じません(笑)。
 朴訥なうちなーぐち(沖縄言葉)、でも「大きいおっぱいが」なんて言っちゃったり、ところどころ英語などはさみこむ台詞もお茶目で、なによりも、ナビィのことが大好きで仕方ないというのが伝わってきて、じーんとしちゃうのです。

 沖縄には南国的で自由なイメージを持つ人が多いと思うけれど、実は本土に比べてもまだまだ「イエ」意識が強く、昔ながらのしきたりや行事なども多く残っています。親戚付き合いも密だし、自由気ままという訳にはいかないことが多いのも、地元の人と親しくなるとわかってくる。

 「ユタ」と呼ばれる巫女さんが影響力を持っているのも特徴で、映画の中でもそんなシーンが。私がお世話になっているお宅の庭にも「拝所」と言われる神聖な場所があり「ユタに勧められたので」と言って知らない人が拝みにきたり。それを、ご自由にどうぞ、と招き入れるのも、また沖縄的なのだけれど。

 ナビィを演じているのが、「ちゅらさん」で全国的に有名になった平良とみさん。ちょうどこの原稿を書いている時に、お亡くなりになったと知り、残念でたまりません。87歳、沖縄ではまだまだ「若いお年寄り」ですもの。かわいい沖縄のおばあがはまり役ですが、それだけじゃないの、今回は主役ですから!
 イエやユタのせいで突然終った恋、淡々と築いてきた生活、子や孫もいて幸せな老後、でも……。昔の恋人との逢瀬、ラブレターをしたためる姿……老いらくの恋、だなんて笑ったりできない。とても可憐で、情熱的で。その素直なまっすぐな心に、観ている私たちがどぎまぎしてしまう。

 また忘れちゃいけないのが音楽。名だたる三線の名手が登場していて沖縄民謡を聴かせてくれるし、なんとアイルランド民謡、オペラのカルメンまで飛び出す。まるでミュージカルのようでもあります。

 ナビィおばあの恋の行方、人間模様を見守りつつ、沖縄らしさが色濃く残る離島の暮らしを味わう。観終わった時には、ほら、きっと、ささくれていた気持ちもまあるく、ほっこりしているはず。

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