「クラフトビールの定義ってなんですか?」にもううんざり

note始めてみました。

なかなか普段運営しているメディアやブログでは便宜上いいづらいこととか、なんか熱いんじゃないかとか、はずかしいこととかってあるじゃないですか?

いや?ない?

私はあるんですよね。


というわけで、なかなか普段書かないことを書いてみようかと思っています。

「月刊食べごと通信」では、私が仕事柄関わる食べ物のこと、メディアのことを中心に、まとまりなきことを綴ってます。読んでみようかなと思う物好きな方、お付き合いくださいませ。


さて、今回のテーマ「クラフトビールの定義」について。

仕事柄、「クラフトビールの定義」について、聞かれることが結構あるんですよね。まあ、最近一人歩きかってくらいに「クラフトビール、クラフトビール、クラフトビール・・・」って言われているし、取り上げるし。

でもね、ぶっちゃけ日本でクラフトビールの定義なんてまだまだ決まっていないのです。

それに気づいていながらにして聞いてくる人たち。

ぶっちゃけもううんざり・・・と私のまわりでも「クラフトビールの定義ってなんですか?」て聞かれる仕事をしている何人かの人たちがいるのですが、すでに辟易してきている。

ちなみに「クラフトビールの定義」について、一般的に言われているのはアメリカのクラフトビール醸造家の協会、ブリュワーズアソシエーションで定義されている

・小規模であること

・独立していること

・伝統的であること

の3つを日本でもよく言われていたりするんですが、実際、アメリカ的小規模って(2015年11月現在では年間の生産量が600万バレル以下、これは現状、日本の大手メーカーの年間生産量をはるかに上回る)・・・という話もあったりして、日本での実情に合っていないんですよね。それだけが理由ではないですが、きちんと定義している機関はとくにないのです。

それなのに言葉だけが一人歩きしている。

だからこそみんな聞きたくなるし、それがコンテンツになるんでしょうね。

特に、アメリカの上記のクラフトビールの定義に日本を当てはめた時、前述の理由からこれまで違和感を覚えることの一つめが「小規模であること」だったのですが、ここにきて「独立していること」というのにも違和感を感じるようになりました。

それには、日本でのクラフトビール人気の高まりで日本の最大手クラフトビールメーカー ヤッホーブルーイングでの製造量が限界に達したこともありキリンビールとの資本・業務契約を結び、キリンの工場での委託生産を始めたことや、また、キリンビールを筆頭に、”クラフト”と名のつくビールを大手各社が出し始めたことなどが起因しています。

そこで一部の日本のクラフトビールメーカーは「ちょっと待てよ」と思う人たちもいたでしょう。

でも、日本での定義的には全然オッケー。文句をいう人たちはいるけれど、罰せられるわけではありません。

一方で、

だって大手が広告費をかけて”クラフトビール”を宣伝してくれる。

大手の知の結集でクラフトビールをつくる、業界全体が活性化される、みんながビールを飲む。

これを歓迎すべきと捉える人もいるようですね。


美味しいクラフトビールが飲めるお店が増える。そんな世の中がやってくるのです。バンザーイ!



ん? ちょっと待てよ。

確かにこれまでの大量生産のビールたちをクラフトビールと呼ぶのは違和感があるのだけれど、これまでの日本が誇るべき美味しい「ピルスナー」たちにクラフトマンシップはないのか?

いや、そんなことはないと思うのです。

少なくとも私がこれまで取材してきた大手メーカーの開発畑の人たちは、とてつもないクラフトマンたちだった。彼らは彼らの誇りを胸に、これまでなかなか挑戦してこれなかったピルスナー以外のビールの領域に歩みを進め出した、均一化や安定化を第一に考えたゆえにコモディティ化した日本のビール文化を多様なものにすべく一歩踏み出した、そういうこと。

そこまで行ったのなら、別に”クラフト”なんて取ってしまえばいいのに。ビールにおいて、多様性が第一に考えられる時代が日本にもやってきた、ただそれだけのことではないかと。

そんな時代において、もはや「クラフトビールの定義ってなんですか?」なんて愚問だと思うのです。

むしろそんなことよりも、みなさんの心の中にある「ビール」を再定義しましょうよ。

おっとその前に、”美味しい”が大前提ですけれどね。

美味しいことは正義です。

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