夫、「手エコー」をしだす【妊娠10週4日】
妊娠10週、登録している妊婦向けアプリでは、「早いと、つわりのピークが落ち着くかも」と書いてある。
毎日期待しているけれど、一向に終わる気配がない。ネットを見ると、同じように期待を裏切られた妊婦がたくさんいる。
どうしようもないので、今日も気持ち悪いことを夫に報告する。報告されても、夫にできることはない(幸いなことに、私は仕事や家事で忙しいわけでもないので、減らすべき負担もない)。
でも、このやり場のない気持ち悪さを発散したくて、夫に話す。
夫は「はいはい、かわいそうだね。もう寝るしかないよ」というかんじで、深刻になりすぎない調子で聞く。
この日、夫はそんな相槌をしたあとに、黙ってしばらくお腹に手をあてた。
なんだろう、お腹を温めてくれているのかなと思ったら、しばく経ったあと「寒いって」と言う。
手を通して、胎児の要望を聞いていたのだという。手エコー、というところか。
我が家は怪しい宗教などを信じるほうではないのだけど、まったくなにをすればいいかわからないなかで、お腹から対処法を聞けるというのは、なんだか救われる。
この日はいつもより、ちゃんとお腹を温めて眠った。本当に要望しているかわからないけれど、温めて悪いことはないだろうし。
私はこの「手エコー」にはまって、その後しばら、毎日やってもらうようになった。
「喉が渇いた」「お腹が空いた」「特になし」「寝てる」「ぼーとしてる」「うようよ動いてる」
要望だけではないのが、妙にリアルだ。
夫のほうも、一応毎回、真面目に手から感じ取ろうとしている。
普段から妙に直感的なところがあるし、子供や動物に好かれやすいし、子どもの頃は毎日家の裏の森を走っていたというから、案外当たっているのかもしれないなどと思ってしまう。
なにより胎動がない今、健診で機械のエコーで見てもらわないと、赤ちゃんが元気にしているかわからない。その不安が解消できるのがとてもいい。
真偽はどうあれ、次の健診までは、お腹で元気にやっていることを信じるしかないのだ。
こうやってシャーマンをはじめとする、民間信仰は生まれていくのだろうなと思った。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?