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オープンDの音色を追って 56 ~大野真澄の証言・後編~

(約6分で読めます)
 前回の記事を、マガジン「邦楽記事まとめ」に入れていただきました。

 ありがとうございます。

 前編に引き続き『学生街の喫茶店』をめぐる大野真澄(愛称ボーカル)の証言と、この曲のヒットがGAROに与えた影響をまとめます。
 wowowプラス歌謡ポップスチャンネル2018/06/04『永遠のロッカーたち』#11「GARO」より。

ボーカル談
(『学生街の喫茶店』は)別にシングル盤のために作った曲でも何でもないだろうし。
 そりゃ、わかんないですよ? プロデューサーがどういう具合に考えてたか。
 ミッキー(・カーティス)さんは、のちのちこれをシングルにするんだみたいなことをおっしゃってますけど、いや、本当のとこはあの当時の状況見てみると、たまたまB面に入れただけだっていうような感じはしますよね。 
 だって、A面が『美しすぎて』で、B面ですからね。

 あの曲がなければ、方向は変わってたでしょうね。あれのおかげで、あの曲のせいで、縛りがきつくなりましたね、いろんな意味で。

 いつも「難しいな」と思って歌っています。この曲はちゃんと歌わなきゃな。心して歌わないと外れる、みたいなね。
 で、やっぱり、いい曲ですよね。
 よくできてるなと歌うたんびに、ああ、この曲はやっぱりヒットして当然なのかな、って。
 これは全部結果論ですよ、何でも、話としては。

GARO2

『学生街の喫茶店』が収録されたアルバム『GARO2』(1972年 6月25日発売)について。

ボーカル(談)
 二枚目のアルバムを作るときに遡りますよね。プロの作家が入って来ることに関して。
 もう、抵抗しましたよね。
 これはやりたくない。既成の作家でやりたくない。オリジナルでやりたい。ということは言いましたけど、あの当時はだけどもう、ちょっとグループの仲もあんまり良くなかったですから。

 GAROのレコードデビューは1971年10月10日です。
 なんと、それから一年も経たないうちにもう「グループの仲もあんまり良くなかった」とは。
 もちろん自分たちのオリジナル曲を封じられたのが大きいとは思います。
 配信や動画投稿ができる今と違って、その頃はレコードやテレビ、ラジオを通してしか曲を出すことができなかったですから。
 しかし「オリジナルでやりたい」という点が一致しているのだから、三人一丸となって抵抗すべきだったんじゃないか。足並みを乱している場合じゃないんじゃないか。と思います。

『学生街の喫茶店』がヒットしたあと、オリジナルでのシングル盤は三枚だけです。

向かって左から『ロマンス』『ピクニック』『さいごの手紙』

 1973年レコード大賞大衆賞受賞曲『ロマンス』(作詞/山上路夫 作曲/堀内護)
『ピクニック』(作詞/山上路夫 作曲/堀内護)
 ラストシングル『さいごの手紙』(作詞・作曲/堀内護)

『ピクニック』にはボーカルがつけた詞があったそうなのですが、採用されていません。
「映画を観に行く」という内容だったと聞きました。
 そちらの詞のが聴いてみたいですね。

 ボーカルの話はGARO解散へと進みます。

ボーカル(談)
 でも、まぁどっちみちトミーはもうやめたいって宣言しちゃったんですよ。
 じゃ、トミーはぬけて新しいメンバー入れようかってことになったんだけど、マークとしては「ちょっと待って」と。「一人でやりたい」って言うから「じゃあ、しょうがないね。じゃあ解散だね」と。

 解散するって言ったときにレコード会社の人たちも言ったんですよ。村井さんももちろん「解散しなくたっていいじゃん別に」。事務所もおんなじですよ。説得しましたよ半年ぐらい。

 たぶんね、音楽的なことはあまり変わっていないんですよ。要するにメロディアスで、コーラスがあって、それで、ロックっぽくて、っていう趣向はたぶん三人とも一緒なんですよね。ただ、表現の仕方が、要するに、相変わらず特にトミーなんかはエレキを弾きたいわけですね。クラプトンに心酔してたから。

 一緒にやりたかったんですよ僕は。彼らの助けが欲しかったんですよね。
 解散する当時、じゃあ彼らと同じぐらいの度量でできる人がいるかって見たときに、ちょっとまわり見渡したときに、もう、いなかったんですよね。

1986年に日高が、2014年に堀内がこの世を去った。
大野はGAROのすべてを一人で背負うこととなった。

『永遠のロッカーたち』#11「GARO」ナレーション

ボーカル(談) 
 背負うっていうほど僕は彼らと同じようなことはできないし、やっぱり彼らは彼らの才能があって、GAROが成立してたわけですから。

『永遠のロッカーたち』#11「GARO」

 太田美知彦、鈴木雄大と一緒にGAROの曲を歌う活動については、

ボーカル(談)
 GAROの世界ですね。音楽っていうよりも。同じようになれれば面白いなって思ってますね。それがしたいと。再現するの、もういないけど、生でこういうの見れるよって。見に来てくれる人がたくさんいるといいな、と、特に若い人たちとか、何か思ったりはしますね。
 ま、GAROは良かったですよ、そういった意味では。

『永遠のロッカーたち』#11「GARO」

【補遺】
『学生街の喫茶店』のリードボーカルがトミーになっていたかもしれない、という件。
 下の記事にも書いたのですが、いつかラジオで聴いた覚えがあったのです。

 その出所でどころがわかりました。
「ガロ」結成から「なごみーず」まで 大野真澄ロング・インタビュー FM NACK5 WEEKEND PARTY FOREVER YOUNG(2007年6月9日)で話されたことなのでした。

ボーカル(談)
 ミッキー・カーティスさんが『学生街の喫茶店』の曲ができたときに、詞ができる前に「この曲はボーカル、歌ってもらうからね」って言われてましたからね。ミッキーさんもこの曲に関しては僕に、って思ってたみたいですね。
 ただ、すぎやまさんはトミーに歌わせたかったみたいですね。

(つづく)
(文中敬称略)

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