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サマセット・モームの『月と六ペンス』を読んだ

ゴーギャンをモデルに書かれた小説です。だいぶ前に一度読んだことがあったのですが、知り合いに薦められたので、改めて読んでみました。

読もうと思ったきっかけ

スマホやPCが普及しインターネットがない生活など考えられないようになっています。しかしその画面の向こうには常に多数の情報や意見が飛び交っていて、気がつくと自分を誰かと比べて浮かれたり卑下しちゃっていることがあるなぁと思っていたんです。

自分自身も最近インターネットで発言・発信していると嬉しくない評価をもらうことがあって、それを知り合いに相談したら「月と六ペンスを読んでみてください」と言われたので、読んでみることにしたのです。

最近、本もKindleなどで読むようになってしまっていますが、久々の小説なので紙で読みたいなぁと思って吉祥寺のブックファーストで買いました。カバーの青色がすごく綺麗な色だなと思いました。

全く好感を持てないストリックランド

仕事や家族を捨てて絵を描くことを決めたチャールズ・ストリックランドに主人公が会いに行く。家族に対しては「勝手に生きればいい」と吐き捨てるストリックランド。あまり書くとネタバレになるが、自分のことを心配してくれる友人にも酷い態度を貫く。とにかく酷い。読んでいて何度もイライラした。

そんな彼の心情は

描かないじゃいられないんだ。自分でもどうにもならないのだ。水に落ちた人間は、泳ぎが巧(うま)かろうと拙(つたな)かろうと、そんなこと言っておられるか。なんとかして助からなければ、溺れ死ぬばかりだ。

というもの。とにかく「絵を描かなければならない」と思っていた。友人やその大切な人のことなんてどうでも良い。他者からの評価も富も名声も必要ない。

静かな生活の美しさ

そんなストリックランドに主人公は辟易しながらもずっと気にかけて細かく描写している。それがなんとも面白い。好感は持てないのだが、とにかく主人公がどのようにストリックランドを描写していくのかが気になるので、どんどん読み進めてしまう。

僕らは謙虚でなくちゃいけない。静かな生活の美しさを知るべきだよ。「運命」の目にさえも気づかれないで、そっと人知れぬ一生を終えるべきなんだ。

一番、印象に残ったのは👆 有名な文でもあると思いますが、現代で普通に生活していると真逆の人ばっかり目に付くので、色々考えさせられた。1910年くらいに書かれた小説なので、時代錯誤な考えなのかもしれないなぁとも思ったりしたが、すぐに「そんなことない」と思った。

六ペンスに手を出してしまう

タイトルの『月と六ペンス』というのは諸説あるらしいんですが、とにもかくにも仕事やっていると売上数値とかSNSではフォロワーとかそんなことばっかり気にしていて、自分の人生にとって本当に大きな影響を与える何かをスルーしちゃってるんじゃないかと強く思いました。

ストリックランドの絵を描くという芸術行為以外でも、夢や理想といった内発的な動機が楽ではない楽しさも与えてくれると思うので、自分もそういったものに向き合う時間を増やしたいなと思いました。

この小説の中の言葉じゃないんですが、「やりたいことはやってしまっていること」というのがすごく好きで。多くの人は「やりたいこと探し」を行うと思うんですが、それだと遅くて。勝手に身体が動いてしまっているくらいのものにのめり込んでいきたいなと思います。

しかし今のこの時代だと、のめり込んでいく中でインターネットを通じて聞きたくないような意見や評価を目にせざるを得ないタイミングがたくさんくると思います。その時にストリックランドを思い出しながら、「勝手に言ってろよ」と言ってやるべきことに正面から向き合える自分でいたいですね〜。

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