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「子連れ出勤」を実際に経験した私が、思うことを書く。

政府が子連れ出勤を後押しするというニュース。この件でちょっと世間がざわついている。

ざわつきの内容はおもにワーママから発せられたもの(だと思う)で、ざっくり内容をまとめると、

・子連れで満員電車乗って通勤なんてたまったもんじゃない
・子どもと一緒だと仕事に集中できない
・子どもを連れて行ったら会社の人に迷惑がかかる
・昼休みもゆっくり休めない
・在宅勤務を推進してくれたほうがよっぽどいい

こんな感じ。

うんうん、わかる。私も、やってみるまでそう思ってたし、やってみた後でもこれらの意見には同意する部分も多い。
以前、実際に子連れ出勤をやってみての感想もnoteに書いた。

体験した立場として、私の意見を綴ってみようと思う。

条件が揃わないとメリットを感じづらい

私が子連れ出勤をやってみて思ったこと、それは…条件が揃っていないとメリットを感じづらい、ということ。

実際に子連れ出勤をやったときの環境要因は…

1. 職住近接、家から職場まで自転車で10分弱
母娘で満員電車やバスに乗って移動する必要がない。

2. 娘は6歳、翌年には小学生
分別がついていて、やること(お絵描き、工作、塗り絵、動画を見るなど)があればある程度おとなしくできる。もちろん二足歩行もできるし、走り回るなどして机や椅子に激突する心配もない。

3. 職員が少なくかつ全員が子どもに寛容
経営者には小学生の息子さんがいる。また、会社では以前学童保育を運営しており、子どもに慣れている/子どもや共働き家庭に理解のある人が集まっている。以前学童の指導員をしていたスタッフもおり、娘は大変懐いていた。

4. フルで出勤しなくても良い
まだ6歳だとさすがにフルタイム(休憩含めて約9時間)じっとしているのは厳しいので、午前中オフィスで仕事してお昼休みに帰宅してその後リモート、など、ある程度柔軟に滞在時間を決められた。

5. あくまで緊急時の補助的な対応
1〜4までこれだけ条件が揃っていても、私は1日子連れ出勤をするだけでどっと疲れてしまった。あくまで一時的な対処法として「子連れ出勤」の制度を利用したから、メリットを実感することができたのだと思う。
今後も、何らかの理由で娘が登園できない(かつ本人が病原菌を持っていない)ときのみに利用するだけで、連日は厳しいだろう。
「毎日子どもを連れて出勤する」のは、社内託児所がある、別室で1日中シッターさんがお世話をしてくれる、などの恵まれた環境でない限り、多くの人にとって非現実的な話だ。

思いつくだけで、5つ。正直この5つのうち1つでも欠けていたら、私はきっと子連れ出勤を「やって良かった」なんて言えなかった

移動がなく、オフィスの人に会う必要もない在宅勤務ですら、子どもと同じ空間で仕事をするのは「超大変」。
それに移動が伴ううえ、仕事仲間に少なからず迷惑をかけてしまうのが子連れ出勤。
迷惑と思っていない人もいるのかもしれないが、子どもを連れて行く親の立場としては、そう懸念してしまうことも多いだろう。

子連れ出勤はあくまで「ひとつの選択肢」であるべき

以前、ワーママとして転職活動をしていたとき、面接を受けた企業でこう聞かれたことがあった。

「弊社では今後子連れ出勤を推進しようと思っています。お子さんを連れて出勤したいですか?」

答えは、Noだった。当時は娘が3歳ぐらいでまだじっとおとなしくしていることが難しかったし、そのオフィスまでは電車を使ってドアtoドアで30分以上はかかる。都度タクシーを使うことは現実的ではない距離だ。

しかも「うちは子連れ出勤OKです」と言われてしまうことにより、「学級閉鎖などで預け先がなくなってしまった」「保育園に入れない」などの理由で「出勤できない」と言いづらくなってしまう気がした。

前にも同じ違和感を覚えたことがあった。以前勤めていた会社で、経営陣が、延長保育料金を会社で補助するという福利厚生を考えていた。でも、その会社のイケイケドンドンな体質上(当時私は時短で17時退社を許可されていたが、帰宅後や土日に残務処理をしなければならなかった)「制度がある」ことにより「残業をせざるを得なくなる」のではないか、と思ってしまい、この案には賛同できなかった。

ちょっと話が長くなってしまったが、要は、制度があること自体は良い。それ自体は否定はしない。
だが、その場合、「子連れ出勤」だけを良しとするのではなく、「在宅勤務」「休暇を取る」「ベビーシッターに任せる」「フレックスで働く」など多様な選択肢の中から、当事者がそれぞれの家庭環境や価値観、仕事観にマッチするものを選べるようにすべきなのではないか、と思う。

***

たしかに、「子連れ出勤」は、斬新な制度であるうえ絵的にもキャッチーだ。
しかし、今回のニュースやそれに対する世間の反応は、どうしても「子連れ出勤」という言葉だけが独り歩きしているように思える。

課題の本質は「子連れ出勤」の是非ではない。
今政府が取り組むべきことは、子どもがいてもいなくても、仕事をしたければ仕事をし、家庭やプライベートを大事にしたければそうできるように、社会の仕組みを変えていくことなのではないだろうか。

今回の制度が「子どもがいる共働き家庭」にあてたものなのだとしたら、もう少し子育て世帯の気持ちや実態に寄り添ったものであるべきだったのではないかなと。

でも、きっとこれは通過点だと私は信じている。娘の育児休暇から復帰した6年前に比べたら、少しずつだけど確実に、ワーママでも働きやすく、転職もしやすい世の中になってきている。
今回の件があまり当事者に寄り添った内容でないのは残念なところだが、「子連れ出勤」というワードに噛み付くのではなく、「こういう制度も欲しい」「こうした方が働きやすい」という声をあげるきっかけになれば良いと思う。

社会の仕組みがみんなにとってより働きやすい方に転換していくことを、切に願っている。

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文章に加えて写真もブラッシュアップして、より素敵なコンテンツを届けられればと思っています。 新しいレンズを買いたいです^^