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練習中の守備は手を抜かない〜「球際の激しさ」と「ずる賢さ」が必要なワケ

ドイツ、イングランド、アメリカでプレーをしてきて感じた練習中の球際の激しさ。10年前にプレーしていた日本がどうだったかは記憶が定かではありませんが・・・

とにかく練習中でも激しく手を抜かずに守備にいくのは当たり前で、もちろんファウルに近いタックルや、後ろから手で押したり、ウエアを引っ張り合ったりというのは結構普通。ドイツとイングランドでプレーしていたときは、特にそういうのは多かったです。

もちろん、そこに変な意味での悪気というのはなく、そこにあるのはあくまでの「競争」「戦い」であって、「勝ちたい」「上にいきたい」という「ハングリー精神」がそうさせているのは言うまでもありません。

タックルの深さでいったらイングランドが一番えぐかったですし、ずる賢いディフェンダーなんかは、私がボールを受けようと動き出しの駆け引きをしている時に、私を手の届く範囲に置いて「腕」をうまく使って私の動き出しを阻止しようとしてきます。

アメリカのDFでもやはり代表クラスのセンターバックはオフザボールでのポジショニングと駆け引きが非常に上手ですし、味方の協力がないと、相手にとって嫌な位置で受けるのが難しかったりもします。こういうところに、サッカーは「陣地の取り合い」なんだということ学ばされます。

ただ、こういうDFを相手にしたときはやっぱり燃えますし、それは、どうやってこれを回避してボールを受けてゴールまでいけるのかっていう、新しい自身の課題になるからです。

では、なんでそういった守備が必要になるのでしょう?

守備が攻撃を進化させる

私がまだベレーザに在籍していた頃、松田さんがチームを率いていましたが、松田さんが口すっぱく言っていたのは、練習中の守備は絶対に手を抜かないことでした。

”守備で手を抜いたら、攻撃の練習にならない。”
”攻撃で手を抜いたら、守備の練習にならない。”

これは本当にその通りで、攻撃がテーマの練習だったとしてもそれは守備の練習でもあるし、その守備を手を抜いてしまったら本質を逸脱した攻撃の練習になってしまいます。

例えば、本当に半歩や一寄せるか寄せないか、スライドするかしないかの世界だったりもするのですが、それを怠ることにより攻撃側に様々な未来への「可能性」を多く与えてしまうことになります。

海外の選手と日本の選手では、守備の間合いの基準が異なります。特に日本では人に対して寄せる距離が、海外の選手と比べて一歩から半歩は遠いです。少しでも寄せてボールを奪えるのであれば奪いにいく。

相手に寄せにいってコースを限定するだけの守備をすることが必要な場面でも、その寄せる距離というのは、一発でかわされない距離間でありつつも、相手に制限を与えられる距離でなければなりません。

寄せるスピードやタイミングというのも考慮しなければなりませんし、守備というのは非常にロジカルな仕事であり、自分のスピード、相手のスピードや能力を把握した上で対峙していかなくてはなりません。特に海外にでたばっかりで自分よりスピードがある人を相手にする場合は、この守備の「感覚」というのを身体全体で掴んでいくことが必要になるでしょう。

練習だからといって手を抜いていたら相手の練習にもなりませんし、そういった守備というのは、攻撃に新たな発想や精度の高いスキルを身につけさせることにも繋がります。もちろん、監督が練習の強度をどこに設定しているのかもよりますが、そういったハードワークを日頃から繰り返し行なっているチームは、やはり試合でも強いですし、タイトルを取るだけの力が備わっていると感じます。


真剣さの中に楽しさがある

「楽しむ」ということを選手が履き違えると、練習の質は下がるし、監督の求める練習を実現できなくなってしまいます。


今いるブリスベンは、ボールを積極的に保持しながらゴールを目指すチームで、どちらかというとまだアスリートとしての身体がない、ボールを扱うだけの技術力に依存している選手が多く、その大半は10代の選手で、国際リーグレベルのタックルやチャージとは無縁で育った選手が多く在籍しています。

先週オーストラリアリーグでデビューしたのですが、相手チームの当たりやチャージが激しく、チームの練習では全く感じることのできなかった「守備の激しさ」がそこにはありました。

試合は0-1で敗戦。相手との力が拮抗している場合の勝敗の分かれ目は、五分五分のルーズボールのバトルに勝てるか、セカンドボールを拾えるか、といったそういった細かい勝負の勝敗の連続が、流れを自分たちに持ってこれるかという部分に大きく関わってきます。

これはこのチームに圧倒的に不足している部分で、まずはこの課題に取り組まなければ勝てないという「危機感」を感じました。

自分自身もチームの練習に合流して10日弱、そして約2ヶ月ぶりの実践だったので、スタメンでフル出場しましたが、まだまだ周りとのピッチ内でのコミュニケーションが必要だと感じましたし、この試合でようやく実戦感覚(どちらかというとスピリットの部分)を呼び起こされたという感じでした。

なんでもそうですけど、真剣にやるから楽しいし、真剣にやるから夢中になれるし、その中で本当の「スキル」というは磨かれていくし、それくらい全員がマジにやったら本当にマジで楽しいんです。

そういう楽しさってなかなか味わうのが難しい社会になってきているのかもしれないけど、自分自身がまずは真剣に楽しむ姿というのを表現し続け、「Be Better」「Inspire people」「Never give up」の精神を毎日ピッチで見せ続けられるような人になっていければと思います。



みんなが協力しあって生きていける社会へ。愛と共感力で、豊かな世界を創っていきたい。サッカーが私にもたらしてくれた恩恵を、今度は世界に還元していきたいです。