シニア小説家志望の雪ん子おばさん

シニア小説家志望の雪ん子おばさん

最近の記事

毒親からの解放ストーリー (13)

四        高校生になると、私への母の監視は以前より緩くなったような気がする。小さい頃、私が母に対していつも怯えていたのは、母の機嫌ひとつで、理由もなく罵倒されたり、頭をぶたれたりしていたからだ。  中学二年の夏休みから私の身長は急速に伸び出した。高校生になると、母よりも背が高くなったので、以前のようには頭を小突かれたり、叩かれたりされなくなった。理由は単純だ。母より背が伸びたし身体も大きくなったからだ。母より大きくなった私に対して暴力を振るいにくくなったのだろう。

    • 母の後悔 (36)

       プラレタリュームでの一件以来、私は中野さんを避けるようにして、時間をずらしながらも以前のように運動は続けていた。 特段中野さんと何かがあったわけでもないが、たったあれだけのことで彼を避けるのは彼としても何か釈然としないものを感じているかもしれないけれど、私が生理的に嫌悪を感じてしまったことに理屈なんてはないのだ。  ただ自分だって老人であることを棚に上げただけなのだ。つまり中野さんの手の感触が私に老いを生々しく再認識させてしまったのだ。老いていながらも恋に溺れるなんてあり

      • 母の後悔 (36)

         いつもそうなのだ。私がもたもたしているうちに、こうなるのだ。夫の時もそうだった。二,三日もすれば帰って来ると思って、帰りを想定してどうやって怒ってやろうかと考えているうちに、一週間がたち、一ヶ月が過ぎていって、今に至っているのだ。    自分の考えは思いがけない方へと転がって行ってしまう。自分の仕事などはほどほどにうまくいくのに、自分に近しい人や動物が絡むと自分の思っている方に進まないのは何故なのだろう。自分ではわからない欠陥があるのだろうか?神様に聞いてみたいものだ。

        • 毒親からの解放ストーリー (12)

           ユリが成長するに従い子育ての負担は楽になったけど、ユリに対しては、可愛いと言う気持ちにはなれなかった。時々ユリは夫と婚約者との間の子ではないのかと思ってしまったりしたこともあった。私のお腹から生まれたのだから、私の子だと分かりきっているのに。多分あの頃は精神的にもおかしかったのかもしれない。  兎に角、ユリには、私に対して絶対に逆らえないようにしなくては、と考えたけれど、どう育てれば良いのか全くわからなかった。だから、ユリの育児に興味が無くなってしまった。子供なんて放って

        毒親からの解放ストーリー (13)

          母の後悔 (35)

           黒白猫のおかげでストレスがかかってしまった先住猫達は、私が朝起きて猫小屋がある方の引戸を開けて御飯を出す前に、どこかに行ってしまっていることが増えた。以前はこの家の小さな庭を根城にして、冬は日が当たるので、気持ち良さそうに横になって日向ぼっこをしながら、私の姿を見つけるとガラス越しだけれど、傍まで来てニャーと鳴いては、食べ物を要求した。  それなのに黒白猫がうろうろするようになってからは、夕方のご飯の時間までここに来ようとしない。きっと黒白猫のせいだろう。猫というのは自分

          母の後悔 (35)

           もうすぐ春になろうとしていた三月上旬の夕方、いつもの時間に二匹の猫は来なかった。心配しながらも猫のご飯の用意をしながら待っていた。そして夕飯の時間はとっくに過ぎて、二階建ての猫小屋を見てみると、八猫の方は、御飯を食べた形跡があって、すでに丸くなって寝ていた。三月の夜は急に気温が下がって、まだまだ寒い。  髭猫は何処へ行ってしまったのか一向に帰って来ない。どうしたのか心配はしても、猫たちの行動範囲を把握していないので、とりあえず待つことしか出来ないのだ。私は寝る前にもう一度

          毒親からの解放ストーリー (11)

           最近ユリの態度が変だ。 ユリは元々気が小さくて、臆病だったのに、大きくなるにつれて、何かわからないけれど変わった。だいたいユリは、赤ちゃんの時から夜泣きがひどくて大変だった。あの頃は何度も首を絞めて静かにさせてしまおうか思った。それでも夫の正男がユリのことを、ことの他可愛がるものだから、私も夫の前では一応可愛がるふりをした。  結婚してわかったのだけど、夫には、私が妊娠した時、婚約者が居たらしい。つまり夫は二股を掛けていたと言うことだ。でも私の妊娠を知って私との結婚を決め

          毒親からの解放ストーリー (11)

          毒親からの解放ストーリー (10)

           私は今まで、勉強より読書優先の生活をしていたが、自分の目標がハッキリと見えてきたので、今までのような勉強に対する態度を改めて、勉強中心の毎日へとシフトする事に決めたしかしこういう私の心の変化は母には見つからないようにしなくてはならない。だから、いつも通りの時間に帰って、母の手伝いをしなければならないのだ。  夕飯の支度をするためには遅くとも六時には帰らなければならないので授業中は今まで以上に集中して、先生の言葉は一つも聞き漏らすまいという態度で授業を受けた。 そのために、

          毒親からの解放ストーリー (10)

          母の後悔 (34) 

           帰宅するともうすぐ四時になるところだった。リビングから庭を見ると、(髭と八)の二匹の猫が私の帰りを待ちわびて、両手両足をお行儀よく揃えて、ご飯を下さいと催促している。すぐにキャットフードを用意する。 そして美味しそうに食べている猫達を見ているうちにやっと心が和んできた。この子達をいつ頃家に入れようかと考えてはいるのだが、その反面、二匹の猫を家に入れて飼猫のする自信がない。  もうすぐ春になろうとしていた三月上旬の夕方、いつもの時間に二匹の猫は来なかった。心配しながらも猫の

          毒親からの解放ストーリー (8)

           私は本を読むことによって徐々に、母親の愛情について知るようになった。そして母が私に対してしたことを思い出すたびに、不信感から憎悪へと変わっていくことを認識した。  私の母は、母性の機能不全の為に、私が小さい時から今まで母から理不尽な扱いを受けつづけていたのかと思い出すたび、今でも怒りが込み上げて来る。いつかこの家を出ると決めたのは中学生の頃だったと思う。  母を騙して今まで通り何もわからない臆病な私を演じ続けなければならない。そして家族を納得させながら、どういうやり方でこ

          毒親からの解放ストーリー (8)

          毒親からの解放ストーリー (7)

           以前は何も考えずに『私のお母さんはこわいお母さん』と思っていただけで、どうしてなのかとは考えてもいなかった。それが普通のお母さんの姿だと思っていたからだ。  友人とそのお母さんとのやり取りを見て以来、学校の図書を借りるときは、母と娘が出てくる物語に自然に手が伸びて、借りるようになった。特に私のお気に入りは、モンゴメリーの若草物語だった。母親と四人の娘の物語を読んでいるうちに、自分と母親の関係はどこか変だと感じ始めた。  若草物語の母が一人、一人の娘を思い、娘たちも母親を

          毒親からの解放ストーリー (7)

          母の後悔 (34)

           帰宅するともうすぐ四時になるところだった。リビングから庭を見ると、(髭と八)の二匹の猫が私の帰りを待ちわびて、両手両足をお行儀よく揃えて、ご飯を下さいと催促している。すぐにキャットフードを用意する。 そして美味しそうに食べている猫達を見ると心が和んでくる。この子達をいつ頃家に入れようかと考えるが、その反面二匹の猫を家に入れる自信がない。  ある日の夕方いつもの時間に二匹の猫は帰ってこなかった。もう夕飯の時間は過ぎているというのに来ない。どうしたのか心配はしても、猫たちの行

          毒親からの解放ストーリー (7)

           以前は何も考えずに『私のお母さんはこわいお母さん』と思っていただけで、どうしてなのかとは考えてもいなかった。それが普通と思っていたからだ。  以来学校の図書を借りるときは、母と娘が出てくる物語を選んでは借りるようにした。特にお気に入りは、モンゴメリーの若草物語だった。母親と四人の娘の物語を読んでいるうちに、自分と母親の関係はどこか変だと感じるようになった。若草物語の母が娘思い、娘たちも母を思いやっている物語を読んでいるうちに涙が出るのはどうしてだろう?母が弟を見る時と私を見

          毒親からの解放ストーリー (7)

          毒親からの解放ストーリー (6)

           お菓子とお茶をご馳走になっていた時、おばさまは少しの間私達と雑談した。その間、隣に座っていた娘の髪の毛をなでて、いい子いい子をしていた。しかも幼い子供にするように! きっとその子は、いつもそうしてもらっているのだろうが、私には想像すら出来ない光景だった。    母親というものは息子のことを可愛がるけれど、娘は母親のお手伝いと、母親の鬱憤ばらしの対照でしか無いものだと思っていたからだ。私は母から頭を撫でてもらったという記憶も褒めてもらったことも無い。私の記憶の中の母は常に私を

          毒親からの解放ストーリー (6)

          母の後悔 (33)

           私のように若くして夫と別れて、そのまま男の人と親密な関係を長期間持たないでいると相手の年相応の肉体の衰えだけが目についてしまう。当然時間は万人に平等に流れているので、自分だって老化しているのに、自分の顔は自分で見ることが出来ない分肉体の衰えを棚上げできる。だから相手の白髪や皺を見ていて頭で理解していても、それに触れたりした時には、改めて昔の夫に触れた時の感触との違いに、改めて気づいた瞬間、嫌悪の感情がこみ上げたのだろう。  以前八月の終戦記念日の特集のテレビ番組を見た。そ

          毒親からの解放ストーリー (5)

           私が五年生になった時に初めて図書係に選ばれた。図書係の主な仕事は、掃除と本を決まった場所に戻すことだ。おかげで、本を読む楽しみをおぼえた。図書係になった初めの頃は、母はいい顔をしなかったし、借りた本を家に持ち帰ることも許さなかった。しかし私は本を読む楽しみを覚えてしまったのだ。母に隠れて、少年少女世界文学全集を一冊ずつ読破していった。    そのお陰かどうかはわからないが、国語の成績が徐々に良くなっていった。国語の成績が良くなると、他の教科の成績も良くなったのは自分ながら不

          毒親からの解放ストーリー (5)