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「おいしい ありがとう」で料理上手な主婦が誕生した

今まで生きてきてこんなに家の中にいるのは赤ちゃんの時以来だ。仕事柄、毎日誰かしらに会い、打合せやインタビュー後、お茶をしてたわいない話をしたりと人との接点があった。

それがコロナのせいで、今まで身近にいた人たちが画面越しでしか会えなくなり、みんな芸能人になってしまった(←手が届かない)

世界一周一人旅も平気でしてたくらい、一人は嫌いじゃない。
なんだったらほっといてほしいから一人のほうがいいと思っていた。

が、いざ一人になると、人は一人じゃ生きていけないという言葉が身に染みる。

やっぱり人肌恋しいぞ!

一人だ!寂しい!と騒いでいるが、同居している人はいる。
同居人は、仕事柄、家を空けることが多く、今までは、亭主元気で留守がいい~!たまに会うから仲がいい~!なんて勝手なことを思い、出張がなく、1か月ずっと家に帰ってくる月があったりすると、ごはん作りや、洗濯物が増えてしんどいなんて失礼なことを思っていた。

そんな文句もコロナが変えてくれた。

数週間ならいざしらず、1か月、2か月と引きこもるようになるとさすがに
生身の人間に触れて、しゃべりたくなる。一緒にたわいない話をしながらご飯を食べたくなる。

今までは帰ってくる時間もわからないし、夜遅いから一緒に食べるとデブるという理由でさっさと先に食べていた。

そんな私が、

「何時に帰ってくる?♥」

と新婚女子でもやらないであろう、うっとおしいラインを毎日する始末。
何時に帰ってくるか心配とか、浮気してないよね?というのではなく、一緒に出来立ての温かいものを食べたい、ただそれだけの理由。

毎日うざいな~新婚でもあるまいしと既読スルーするかと思いきやそんな私の普通の女子らしいラインが物珍しいのか、最初は
「6時かな~」

と時間だけのお知らせラインだったのが、最近では料理の準備のためのラインというのを察知したようで

「今、会社出たぞ」「最寄駅到着!」

と2回も送ってくるようになった。

特に冬は、できるだけ温かいもの、出来立てを食べさせたいと絶妙なタイミングで焼き上げるように心掛けた。

すると

「ほぉ~、湯気がいいね~!今日もおいしそう!ありがとうね!」

と目じりを垂らしながら、言ってくれる。

食べているときも、ふぅ~ふぅ~しながら

「今日の麺、おいしいね。いや~実にうまい!うまい!」

と大絶賛。

と書くと、アヒージョとかビーフストロガノフとかおしゃれなの作ってると思うだろう。

野菜や肉はゆでるだけ、あとは、七味唐辛子や柚子胡椒をつけて食べるのが一番!のシンプルイズベスト女の私がそんな手の込んだものを作るはずがない。

ちなみに今晩のメニューはインスタントの汁なし担々麺にたっぷりのひき肉をトッピングしただけのもの。こんな手抜きしまくり料理でこの感嘆の声なのだ。

時を同じくして、帰省ができず、田舎のおいしいごはんが食べられずにしょぼくれている娘に、実家から大量の野菜が定期的に届き、加工せねば腐る!とばかりにスイッチが入った。

昼休みの日課は、クックパッドの検索、NHKの今日の料理の視聴をし、野菜の消費&相方からのお褒めの言葉をもらうために、せっせと毎日違うメニューを作った。

すると、
「わぉ!どこぞの高級フレンチみたいだな!すげ~。いつもありがとう!」
「これは丁寧に出汁をとってるね。時間かかったんじゃない?ありがとね」
「しっかし、うまい!うますぎる!天才!料理の才能あったんじゃ?」
「これは箸が止まらない!おいしい!もう料理研究家になっちゃいなよ」
「うまいね~おいしいね~。レシピ本書いたらベストセラー間違いなし!印税で暮らそ~や」

と毎日、褒められまくったことで、宇宙ステーションに乗っちゃうんじゃないかってくらい調子に乗りまくり、夕飯だけでなく、朝ごはんは鮭まで焼くようになり、前日にお浸しなぞも作るようになった。ちなみに今までの朝ごはんはみそ汁と納豆のみ。

小さいころ、努力をすれば両親からそれなりに褒められはしたが、ムツゴロウさんみたいによ~しよしよしよし!と笑顔で頭をぐしゃぐしゃにされながらめちゃくちゃ褒められた記憶がなく、承認欲求がものすごく強いということもあり、自分が作ったものを手放しで褒められて、心の底から嬉しかった。

作ってくれたものにたいして、たとえ冷凍食品を温めただけであろうとも「ありがとう」。
ちょっとでもおいしいと感じたら「おいしい」。

この2つの言葉だけで、ひとりの料理上手な主婦が誕生したのである。

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